ウシオ電機子会社のプロトセラ、岡山大学と発見したバイオマーカーで認知症リスク検査サービスを展開へ

ウシオ電機株式会社 2020年02月26日 15時00分
From 共同通信PRワイヤー

2020年2月26日
ウシオ電機株式会社

 
 ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 内藤 宏治)の連結子会社である株式会社プロトセラ(本社:大阪府、代表取締役社長田中憲次、以下プロトセラ)は、国立大学法人岡山大学(学長 槇野 博史)と共同で発見した、認知症の罹患リスクを血液中のバイオマーカーで判定する方法を事業化し、今春より「認知症リスク検査サービス」を開始いたします。


■認知症リスク検査に有効な四種の血中ペプチドマーカーを新たに確認

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学(阿部康二教授)とプロトセラは、健常者血清100例、軽度認知障害(MCI)血清60例、アルツハイマー病(AD)血清99例を対象にペプチドーム解析を行った結果、MCIとADに特異的な四種類のペプチドを確認しました1)。
これまで認知症診断には脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーや脳内に沈着した放射性物質の測定が有用とされてきましたが、検体採取の侵襲性が高いことなどから汎用的に用いられるまでには至っておりません。
そこで、プロトセラが特許を保有する新しいペプチドーム解析技術(BLOTCHIPⓇ-MS法*1)を用いて血清中のバイオマーカーを探索した結果、従来から指標とされてきたアミロイドβタンパク質やタウタンパク質とは異なる四種類の新しいペプチドバイオマーカーセットが認知症のリスクを発見するのに有用であることを確認しました。その結果、少量の血清(30μℓ)から認知症をリスク判定することができるようになりました。

■認知症リスク検査サービス事業を開始
 
 プロトセラは、このペプチドバイオマーカーセットを指標に、軽度認知障害(MIC)の発見と疾患リスクを判定する『ProtoKeyⓇ認知症リスク検査法』を開発し、自由診療の検査サービスとして今春より医療機関へ提供を開始する予定です。
なお、検査結果はプロトセラが検体を受理後、約1週間で医療機関にお伝えします。

■認知症リスク検査による早期発見の可能性

 『ProtoKeyⓇ認知症リスク検査法』では健常者とMCIとADを識別し、健常者とADの間で感度が87%、特異度が65%(***p<0.001)でした。また、AD患者のミニメンタルステート検査(MMSE)スコアとこのバイオマーカーセットから得られたスコアには良好な相関が認められました。AD患者脳内でこれら四種類のペプチドの由来するタンパク質濃度は、凝固活性、補体活性、神経可塑性*2を示す三種類(フィブリノーゲンα・β鎖、血漿プロテアーゼインヒビター)で有意に増加し、抗炎症能を持つ一種類(α2-HS糖タンパク質)で有意に減少し、血清中に遊離し定量された四種類のペプチド濃度の増減に一致しました1)。
以上の結果から、今回発見された新しい血中ペプチド性バイオマーカーセットは、迅速で、侵襲性が低く、定量性の高い認知症リスク検査を低価格で提供することができ、さらにAD患者脳内での神経炎症*3や脳血管と神経組織の双方向性機能単位(NeurovascularUnit;NVU)の損傷に対するADの代替性病理反応の存在を示唆するものであることから、認知症治療薬開発に対して新しい創薬アプローチを提供する可能性があります。

■認知症の現状と予防について

 日本における認知症患者は年々増加しており、厚生労働省によれば2025年には750万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症となると予測されています。認知症はある日突然発症するものではなく、徐々に認知機能が低下し、軽度認知障害(MCI)を経て認知症に至ります。 現在のところ、認知症を原因から治療する薬はなく、認知症の罹患を早期に認識し、症状が軽いうちに認知症の進行にブレーキをかけるための様々な予防療法が試みられています。認知症リスク検査は客観的な分子指標によるこれらの予防療法の効果の検証にも役立つ可能性があります。

【引用文献】
Koji Abe, et al , A new serum biomarker set to detect mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease by peptidome technology ,J Alzheimer's Disease [ 2019年11月18日オンライン掲載 ]

 
【用語説明】
*1 BLOTCHIPⓇ-MS法:従来の血液からあらかじめタンパク質を除去する解析方法では、タンパク質に結合したペプチドも除去されるため、ペプチドの全量を正確に測定することができませんでした。一切の前処理を必要としないBLOTCHIPⓇ-MS法によって初めて生体試料中のペプチドの全量を定量できるようになりました。また、BLOTCHIPⓇ-MS法は解析中の煩雑で長時間かかる操作を不要にした結果、多量の試料を短時間で測定できるようになり、従来のペプチドーム解析技術のボトルネックが解消されました。
【画像:リンク

*2 神経可塑性:脳細胞は可塑性に富んでおり、さまざまな環境変化への対応や記憶の固定において重要な機能です。アルツハイマー病のような脳疾患においては、酸化ストレスや脳内炎症、神経伝達障害等の脳細胞ダメージに対して、防御的な可塑性を発揮して、低下した脳機能の維持回復に努める作用があります。

*3 神経炎症:アルツハイマー病の脳では、酸化ストレスが脳内アミロイド産生を増強させ、一方産生された脳内アミロイドが次の酸化ストレスを惹起するという悪循環が起きています。この悪循環の中心的病態が神経炎症(脳内炎症)です。この神経炎症には血液凝固系も深く関与していることが知られています。従ってアルツハイマー病の病態に即した診断と治療を考える場合、このような神経炎症に関連したバイオマーカーの開発、また神経炎症をターゲットとした治療法開発が求められます。

 
【岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学教室】
神経内科は生活習慣病やメタボリックシンドロームを基盤として発症する脳卒中や認知症、頭痛、パーキンソン病などの今後ますます患者数が増加する疾患をはじめ、神経変性疾患や神経免疫疾患、リハビリテーション医学などを対象としており、救急医療においても神経内科的知識は重要とされています。岡山大学神経内科教室は内科の専門分野の一つとして、「実力ある臨床医を育てる、熱意ある教育を行う、最先端の研究を推進する」をモットーに多くの人材を育てて来ました。臨床医学面における面白さや臨床研究における脳機能の解明など幅広い分野の研究を推進しています。

【株式会社プロトセラ】
ウシオ電機株式会社の連結子会社。生体に存在するタンパク質が疾患特異的に分解されて産生するタンパク質断片(ペプチド)のバイオマーカーとしての意義に着目し、独自開発のペプチドーム解析技術(BLOTCHIPⓇ-MS)を用いて、ペプチドバイオマーカーセットを指標に疾患リスクを判定する『ProtoKeyⓇ疾患リスク検査法』を開発し、これまでに『ProtoKeyⓇ大腸がんリスク検査法』、『ProtoKeyⓇ酸化ストレス検査法』を上市してきました。
また膜タンパク質ライブラリ(MembraneProteinLibraryⓇ:MPL)法とBLOTCHIPⓇ-MS法を組み合わせたペプチドリガンド/受容体結合解析法で探索された新規ペプチドリガンドと新規受容体を『受容体関連医薬品』として提供し、安全性と効力の双方に優れる治療に貢献します。

【ウシオ電機株式会社】
1964年設立。紫外から可視、赤外域にわたるランプやレーザー、LEDなどの各種光源および、それらを組み込んだ光学・映像装置を製造販売しています。半導体、フラットパネルディスプレー、電子部品製造などのエレクトロニクス分野や、デジタルプロジェクターや照明などのビジュアルイメージング分野で高シェア製品を数多く有しており、近年は医療や環境などのライフサイエンス分野にも事業展開しています。
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