ダウン症の胎内治療の実現化に向けた新たな知見

学校法人京都薬科大学 2019年07月16日 13時03分
From 共同通信PRワイヤー

2019年7月16日

学校法人京都薬科大学

ダウン症の胎内治療の実現化に向けた新たな知見
―胎児脳の発達不全における脳炎症亢進の関与の可能性と原因遺伝子を特定―

 京都薬科大学の国際共同研究グループは、ダウン症の胎児の脳の発達不全においてErg遺伝子*が関与すること、また余剰なERGによって脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常が引き起こされ、脳内環境の炎症が進むことが関与している可能性を示す新たな知見を得ました。
 本研究は、ダウン症の胎内治療法の開発と実現化に大きく貢献することが期待できます。
 同グループは、病態生化学分野の講師・石原慶一、大学院生・清水涼平、教授・秋葉 聡、同大学統合薬科学系の教授・高田和幸、理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経遺伝研究チームのチームリーダー・山川和弘らで構成。本研究の成果は、2019年7月4日(米国東部時間)に国際神経病理学会(International Society of Neuropathology)誌Brain PathologyにEarly ViewとしてOnline掲載されました。
*Erg遺伝子: ヒト21番染色体に存在する遺伝子。様々な遺伝子の発現調節を行いますが、ダウン症の脳発達不全で重要なことを今回はじめて発見しました。

<研究概要>
 ダウン症は最も頻度の高い染色体異常で、700~1000人に1人の割合で生まれるとされています。通常2本の21番染色体が3本(トリソミー)になることで、精神発達の遅れや記憶学習の障害といった様々な症状が現れます。これまで同国際共同研究グループは、ダウン症モデルマウス胎児の大脳皮質で神経細胞数が低下し、脳の発達不全になる報告をしましたが注1)、神経細胞数低下の原因は不明でした。
 今回の研究では、ダウン症モデルマウス胎児の脳にあらわれる遺伝子群を網羅的に調べ、炎症関連遺伝子の増加を発見。実際に脳内の炎症性細胞は増加し、免疫細胞が減少する均衡異常が認められました。また、トリソミー領域内のErg遺伝子を正常に戻すことで、炎症関連遺伝子群の増加や、脳免疫細胞と炎症性細胞の均衡異常と神経細胞数の低下が改善することを発見しました。

<概要図>

【画像: リンク

<備考>
 本研究は、文科省科学研究費補助金・基盤研究(C)(18K06940)、公益財団法人 武田科学振興財団の薬学系研究助成、公益財団法人 車両競技公益記念財団の医療の基礎的、先駆的研究に対する助成、京都薬科大学科学振興基金などの支援を受けて行われました。

注1)Ishihara et al., “Enlarged brain ventricles and impaired neurogenesis in the Ts1Cje and Ts2Cje mouse models of Down syndrome.” Cerebral Cortex 20:1131-43. (2010).

<発表雑誌>
雑誌名:Brain Pathology

発表タイトル:Perturbation of the immune cells and prenatal neurogenesis by the triplication of the Erg gene in mouse models of Down syndrome

著者:Keiichi Ishihara*, Ryohei Shimizu, Kazuyuki Takata, Eri Kawashita, Kenji Amano, Atsushi Shimohata, Donovan Low, Takeshi Nabe, Haruhiko Sago, Warren S. Alexander, Florent Ginhoux, Kazuhiro Yamakawa, Satoshi Akiba
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著者所属:
京都薬科大学 病態生化学分野/ 講師 石原 慶一、大学院生 清水 涼平、助教 河下 映里、教授 秋葉 聡

京都薬科大学 統合薬科学系/ 教授 高田 和幸

理化学研究所 脳神経科学研究センター 神経遺伝研究チーム/
チームリーダー 山川 和弘、研究員(研究当時)天野 賢治、研究員(現 日本医科大学)下畑 充志

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター/センター長 左合 治彦

摂南大学 薬学部/ 教授 奈邉 健

Agency for Science, Technology and Research(シンガポール)/
主任研究員 Florent Ginhoux、研究員 Donovan Low

Walter Eliza Hall医学研究所(オーストラリア)/ 教授 Warren S. Alexander

[研究に関するお問い合わせ先]
京都薬科大学 病態生化学分野 
講師 石原 慶一                                 
〒607-8414 京都市山科区御陵中内町5
TEL: 075-595-4656  FAX:075-595-4759
E-mail: ishihara@mb.kyoto-phu.ac.jp




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