透明にして追いかける -- 腸内細菌の定着機序の解明に向けた新たな解析手法の確立 -- 北里大学

北里大学 2019年03月27日 08時05分
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北里大学薬学部の西山啓太助教、獣医学部の杉山真言助教らによる共同研究チームは、蛍光ビーズに乳酸菌由来のタンパク質をコーティングした“擬似細菌”を用いて、マウス消化管における蛍光ビーズの挙動を組織透明化により可視化する手法を確立しました。本手法により、特定のタンパク質が細菌の腸内での局在にどのように寄与するか、視覚的に評価することが可能となりました。本件に関する論文は、2019年3月18日付(日本時間19時)、英国の科学雑誌『Scientific Reports』(電子版)に掲載されました。




【研究結果のポイント】
●マウスの消化管全長を迅速に透明化する技術を確立した。
●マイクロビーズ上に細菌由来の表層タンパク質をコートした擬似細菌を作製した。
●マウスに経口投与したビーズの局在を組織透明化によりマクロ・ミクロから同時に評価した。

【研究成果の概要】
 ''乳酸菌など運動能力を持たない腸内細菌が、なぜお腹のなかに定着できるのか?''我々はこの疑問を紐解くアプローチとして、細菌の宿主消化管への接着過程について着目してきました。ムーンライティングタンパク質(*)は、乳酸菌をはじめとする多くの腸内細菌において付着因子としての機能が推察されてきました。しかし、消化管での役割は不明な点が多く、解析方法の確立が望まれていました。その問題点として、(1)細菌と腸上皮間という微小環境で生じる「細菌の付着」と、消化管というマクロ環境における「細菌の定着」を、いかに同時に評価するのか、(2)ムーンライティングタンパク質は、細菌の生存に関わることが多いため遺伝子破壊は困難であり、細菌の定着への関与をどのように証明するのか、という2点がありました。
 これらの問題を克服するため、本研究では、細菌に見立てた蛍光ビーズにムーンライティングタンパク質のひとつである翻訳伸長因子(EF-Tu)を固定し、付着因子としての機能を評価する手法を考案しました。さらに、マウス全消化管の透明化により、消化管内の蛍光ビーズの局在を可視化することに成功しました。
 本研究は、北里大学3学部(獣医学部、薬学部、理学部)ならびに昭和大学構成員による共同研究チームにより行われました。細菌学と解剖・組織学との技術を融合させた本評価法は、今後、腸内細菌の定着過程の解明のための新たなアプローチとなることが期待されます。
 
 本研究成果は、英国の科学雑誌『Scientific Reports』(電子版)2019年3月18日付(日本時間19時)に掲載されました。

【用語解説】
(*)ムーンライティングタンパク質(moonlighting protein):二つ以上の役割をもつ多機能なタンパク質の総称。細菌の付着因子として注目されている。

【論文情報】
・著者:西山 啓太(北里大学薬学部)、杉山 真言(北里大学獣医学部)、山田 大揮(北里大学薬学部)、牧野 杏子(北里大学薬学部)、石原 沙耶花(北里大学理学部)、高木 孝士(昭和大学電子顕微鏡室)、向井 孝夫(北里大学獣医学部)、岡田 信彦(北里大学薬学部)
・論文タイトル:A new approach for analyzing an adhesive bacterial protein in the mouse gastrointestinal tract using optical tissue clearing
・雑誌名:Scientific Reports
・掲載ページ:9, 4731 (2019)
・doi: 10.1038/s41598-019-41151-y

・筆頭著者:西山 啓太、杉山 真言
・論文責任者:西山 啓太、杉山 真言

【問い合わせ先】
≪研究に関すること≫
 北里大学薬学部 微生物学教室
 助教 西山 啓太(ニシヤマ ケイタ)
 〒108-8641 東京都港区白金 5-9-1
 TEL: 03-5791-6256
 FAX: 03-3411-4831
 e-mail: nishiyamkt@gmail.com

 北里大学獣医学部 獣医解剖学
 助教 杉山 真言(スギヤマ マコト)
 〒034-8628 青森県十和田市東23番町35-1
 TEL: 0176-23-4371
 FAX: 0176-23-8703
 e-mail: masugi@vmas.kitasato-u.ac.jp

≪報道に関すること≫
 学校法人北里研究所 総務部広報課
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【リリース発信元】 大学プレスセンター リンク

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