GARFIELD-AFレジストリの登録患者数が5万7000人を突破

血栓症研究所 2016年08月30日 10時19分
From 共同通信PRワイヤー

GARFIELD-AFレジストリの登録患者数が5万7000人を突破

AsiaNet 65491

GARFIELD-AFレジストリの登録患者数が目標5万7000人を突破、
新しい研究結果では低リスク患者を対象に虚血性脳卒中発生を予測する新しい学習機能ツールGARFIELD-AFスコアが優れたパフォーマンスを示すことを確認

・欧州心臓病学会(ESC)2016で発表されたGARFIELD-AFに関する新しいグローバルデータにおいて、日々の臨床活動における心房細動(AF)管理に関するリアル・ワールドの知見が得られました。   
・GARFIELD-AFは、現在進行中の前向き観察登録研究の中で最大規模であり、患者登録は5つのコホートから募集した5万7262人にて完了しました。

イタリア・ローマ発、2016年8月29日 - Global Anticoagulant Registry in the FIELD - Atrial Fibrillation(GARFIELD-AF)のデータを新たに解析した結果、低リスク患者の大量出血、虚血性脳卒中/全身性塞栓症(SE)、および全死亡率の予測において、新しいコンピューター学習機能に基づくリスクモデルであるGARFIELD-AFスコアは、CHA2DS2-VAScよりも優れていることが示されました。ウェブアプリケーションに適していると考えられる簡易版GARFIELD-AFスコアが開発され、同時期に米国で独立して行われたレジストリであるORBIT-AFのデータを用いてそのパフォーマンスが評価されました。

GARFIELD-AFスコアは、GARFIELD-AFレジストリの最新データにおいて低リスク患者の約半数が抗凝固療法を受けていることが示された後に開発されました(1)。エディンバラ大学(英国)の心臓病学エディンバラ公教授であるキース・AA・フォックス教授は次のように述べています。「これらのデータから、現行のリスク・スコアには含まれない因子が抗凝固療法の処方決定に影響を及ぼしているように思われます。また、真に低リスクのAF患者をより確実に識別するには、より優れたリスクの層別化ツールが必要になります。より包括的なGARFIELD-AFスコアにはCHA2DS2-VAScよりも多くの変数が含まれ、精度が向上されたことで、低リスク患者の管理を最適化する上で役に立つでしょう。GARFIELD-AFスコアは、ウェブ経由またはモバイル機器アプリケーションを経由させて、日常的な電子記録システムに組み込むことができる可能性があります。また、ユーザーにとっては、より高精度に目的にあった治療を決定する際の根拠とすることができ、多くの結果に基づきリスクをさらに完全に評価することもできるようになります。」

GARFIELD-AFスコアは、2010年3月から2015年7月の間にGARFIELD-AFに登録した38,984名の患者のデータを分析した結果に基づいたものです。低リスク患者を対象にC統計量*で全死亡率、虚血性脳卒中/SEまたは出血性脳卒中/大量出血を予測したところ、GARFIELD-AFスコアはそれぞれ0.72、0.62、0.72となり、CHA2DS2-VAScの0.56、0.56、0.57に比べて優れた判別値を示しました。

* C統計量は、高値であるほど結果を予測する精度が高いことを示します。

AF管理に関するグローバルな変化
さらに、GARFIELD-AFから得られた知見として、AFの管理方法が世界的に変化していることが示されました。脳卒中予防を目的として抗凝固療法を受けている患者の割合が、2010年3月から2015年8月の間に57%から71%へと大きく増加しました。AFを有する患者の抗凝固管理に関するこの変化は、抗血小板薬処方の有無に関わらず非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOACs)の処方が4.1%から37.0%に著しく増加し、それに対応してビタミンK拮抗薬(VKAs)および抗血小板薬(併用または単剤)の使用が83.4%から50.6%に減少したことに大きく影響を受けたものです1。

ロンドン大学の外科教授および血栓症研究所(TRI:Thrombosis Research Institute)のディレクターであるであるアジャイ・カッカー教授は次のように述べています。「過去5年間の治療法の変化は、脳卒中予防が臨床的により重視されるようになったことを示唆しています。ただし、最良の臨床的成果を確保するために、適切な患者が最も効果的かつ安全な介入を確実に受けることができるようにするという課題が残されています。」

共存症および統合医療
欧州心臓病学会(ESC)2016のGARFIELD-AFサテライトシンポジウムにおいて示された新しいデータにおいて、AF診断後の最初の月の死亡率は、その後2年間の追跡期間のどの時点と比較しても高いということが示されました。早期死亡のリスクは、心筋梗塞/不安定狭心症、中等度から重度の慢性腎臓病、または脳卒中の既往を有する患者においては、これらの共存症の既往がない患者よりも高くなります。

ハーバード大学医学部および米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のサミュエル・ゴールドハバー教授は次のように述べています。「GARFIELD-AFレジストリから得られたこれらのデータは、AF患者の早期死亡のリスクを予測する上で共存症が重要であることを示しています。このような患者を管理するには総合的な治療アプローチが重要であることが、これらの結果から示唆されます。」

欧州心臓病学会(ESC)2016にてGARFIELD-AFのさらなる知見を紹介
8月29日(月)15:35~16:25(CEST:中央ヨーロッパ時間)に、キース・ AA・フォックス教授はポスター発表にて、非弁膜性AFと新規に診断された患者における全死亡率、脳卒中/SE、および大量出血の発生率の地域的なばらつきについて広範囲に解析した結果を報告します。また、8月30日(火)10:05~10:55(CEST)に東海大学の後藤信哉教授はポスター発表にて、東アジアおよび東南アジアの患者を対象として、脳卒中/SEおよび大量出血の発生率ならびに全死亡率、そして抗凝固療法の程度を測定するために用いた国際標準比の間の関連性について解析した結果を報告します。

ドイツ、イタリア、日本、米国の国別データについても、欧州心臓病学会(ESC)2016の開催期間中に、TRIの展示ブース(E2~F675)にて報告される予定となっています。

GARFIELD-AFレジストリについて
GARFIELD-AFの患者登録は5万7262人にて、2016年に完了しました。GARFIELD-AFは、現在進行中のAF患者を対象とした前向き登録研究の中で最大規模のレジストリです。GARFIELD-AFレジストリから今後も得られる実際的な知見は、医療コミュニティにおいて患者の予後改善を継続できる分野を特定し情報を提供する上で役立つ、リアルワールド・エビデンスに変換されることになります。

GARFIELD-AFは、英国ロンドンにあるThrombosis Research Institute( 血栓症研究所, TRI )の援助を受けて国際的な運営委員会が主導している先駆的な独立系の学術研究活動です。

これは、新規にAFと診断された患者を対象とした、脳卒中予防に関する国際的、観察的、多施設共同試験です。米国、欧州、アフリカ、アジア-パシフィックなど、世界35カ国、1000を超える施設において患者を登録しました。

現在のAFに関する理解は、比較臨床試験で集められたデータに基づいています。新しい治療の効果と安全性を評価することは重要ですが、これらの臨床試験は日常の診療行為ではないため、この疾患に対する実生活上の負荷や管理について不確定要素が存在します。GARFIELD-AFは、これらの患者群に見られる血栓塞栓性、出血性の合併症における抗凝固療法の影響について知見の提供を試みます。代表的で多様な患者グループ、さらには特徴的な患者集団の治療と臨床的な転帰を改善する可能性についてより良い理解をもたらします。さらには、医師や医療システムが、患者および患者集団に最善の転帰をもたらすべく適切にイノベーションを選択することに寄与することが期待されます。

患者登録は2009年12月に開始されました。GARFIELD-AFプロトコルが包括的かつ代表的に心房細動を捉えるための、試験デザインの4つの主な特徴は以下の通りです。
・新たに診断された患者の5つのプロスペクティブ(前向き)連続コホートの観察は、個別の時間周期による比較研究を容易にし、治療と転帰の変化を類型化します
・各国での実際の臨床に即した参加施設を無作為にかつ慎重に選定することで、登録患者は各国のAF診療の実態を代表する集団となっています
・患者登録の選択の偏りを排除するため、治療法に関わらず持続的に適格な患者を登録します
・フォローアップ・データは、診断後最短2年間、最長で8年間収集され、毎日の実際の臨床における治療決定と転帰に関する包括的なデータベースを作成します

研究対象の患者は過去6週間以内に非弁膜性AFと診断され、脳卒中につながる血塊を予防する抗凝固療法の候補者になる可能性があるなど、脳卒中に対する少なくとも1つのリスク要因がなければなりません。研究担当医が患者の脳卒中リスク要因を特定し、リスク要因は確立されたリスク・スコアに含まれるものに限定する必要はありません。患者のなかには抗凝固療法を受けるものも受けないものも含まれ、従って現在および将来の治療戦略のメリットは患者個人のリスク特性との関連で適切に理解され得ることになります。
GARFIELD-AF RegistryはBayer Pharma AG(ドイツ、ベルリン)から無制限の研究資金供与を受けています。

詳細は www.garfieldregistry.orgをご覧ください。

AFの負担
ヨーロッパで約880万人(2)、米国では5~610万人(3)を含む、世界人口の最大2%にAFが見られます(4)。世界人口の高齢化に伴い、2050年までには患者数が最低2倍になると推定されます(3)。AF患者では脳卒中のリスクは5倍になり、脳卒中の5分の1はこの不整脈が原因です(4)。AFに関連した虚血性脳卒中は命にかかわることが多く、生き延びてもより重い障害が残ることが多く、他の原因による脳卒中の患者よりも再発の危険性が高くなっています(4)。したがってAF関連の脳卒中の死亡リスクは2倍になり、治療費は50%増加します(4)。AFは心房の一部が不規則な電気信号を発するときに起こります。この電気信号によって心室のポンプ運動は異常な早さで不規則な動きになるので、血液を完全に送り出すことができなくなります(5)。その結果、血液は滞って血栓となり、世界の心血管性死因の第1位である血栓症を引き起こします(6)。血栓が左心房を出ると、脳など体内の他の部分の動脈にとどまる可能性があります。脳の動脈内の血栓は脳卒中の原因となります。致命的な脳卒中の92%は血栓症によって引き起こされます(6)。脳卒中は世界中で死亡および長期障害の主な原因であり、毎年670万人が死亡(7)、500万人に回復不能の障害が残ります(8)。AF患者は、心不全、慢性疲労、およびその他の心律動に関する問題についても高リスクです(9)。

血栓症研究所(TRI)について
TRIは慈善財団であり、血栓症と関連疾患の研究を行う学際的な研究所です。TRIの使命は優れた血栓症研究、教育を提供し、血栓症の予防と治療のための新戦略を開発し、それによってケアの質の向上や、臨床転帰を前進、健康管理コストの削減を実現することです。TRIはユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)のパートナーズ・アカデミック・ヘルス・サイエンス・ネットワークのメンバーです。詳細はwww.tri-london.ac.uk.をご覧ください。

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(1) Camm A J, Accetta G, Ambrosio G, et al. Evolving antithrombotic treatment patterns for patients with newly diagnosed atrial fibrillation. Heart 2016; doi: 10.1136/heartjnl-2016-309832.
(2) Krijthe B P, Kunst A, et al. Projections on the number of individuals with atrial fibrillation in the European Union, from 2000 to 2060. Eur Heart J 2013; 34: 2746-51.
(3) Colilla S, Crow A, Petkun W, et al. Estimates of current and future incidence and prevalence of atrial fibrillation in the U.S. adult population. Am J Cardiol 2013; 112(8):1142-47.
(4) Camm A J, Kirchhof P, et al. Guidelines for the management of atrial fibrillation: The Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the ESC Congress 2016. Eur Heart J 2010; 31(19):2369-2429.
(5 )米国立心肺血液研究所. 心房細動とは? リンクでご覧になれます。 [最終更新日: 2016年8月4日].
(6) 国際血栓止血学会. 世界血栓症デーについて. リンクでご覧になれます。 [最終更新日: 2016年8月4日].
(7) 世界保健機関. The top 10 causes of death. Fact sheet N°310. リンクでご覧になれます . [最終更新日: 2016年8月4日].
(8) 世界心臓連合. The global burden of stroke. リンクでご覧になれます . [最終更新日: 2016年8月4日].
(9) 米国心臓協会。心房細動(AFまたはAFib)はなぜ問題となるのか。リンクでご覧になれます。[最終更新日:2016年8月4日].

Thrombosis Research Institute London
Emmanuel Kaye Building
Manresa Road

Media Contact
Rae Hobbs
RHobbs@tri-london.ac.uk
+44 (0) 7753 825 217

(日本語リリース:クライアント提供)


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