◎高齢肝がん患者にも重要な意味 微小球放射線塞栓(そくせん)療法

ENRY Trialists 2013年06月21日 14時57分
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◎高齢肝がん患者にも重要な意味 微小球放射線塞栓(そくせん)療法

AsiaNet 53463
共同JBN 0738 (2013.6.21)

【ボローニャ(イタリア)2013年6月21日】同業者の審査を受ける欧州肝臓学会の公式刊行物である「Journal of Hepatology(肝臓学ジャーナル)」(注1)オンライン版で発表されたマルチセンターのイットリウム90微小球による放射線塞栓(そくせん)療法欧州ネットワーク(ENRY)メンバーによる新たな分析の結果、手術不可能な原発肝がん(肝細胞がん、HCC)の高齢患者の治療に重要な意味を持つ可能性があることが分かった。

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この分析では、SIR-スフィアを使った放射線塞栓療法後の長期的治療結果を128人の高齢患者(70歳以上)と年齢以外は人口統計的に同質のより若い197人の患者(70歳未満)で比較すると、基本的に同一であることが判明した。この論文の主任執筆者であるボローニャ大学消化器疾患放射線科兼内科教授のリタ・ゴルフィエリ博士は「この所見はHCC患者の管理で年齢だけを区別要因とすべきでないことを示唆している。HCCだと診断される患者の年齢が特に先進国で上昇する傾向があるので、これは重要である」と語っている。

ゴルフィエリ教授はまた「年齢は高齢のHCC患者管理の障壁であってはならないが、医師は使用する治療法の決定にあたっては患者の年齢と弱さを明確に考慮に入れるべきである」とも述べている。

同教授はさらに「例えば、SIRスフィアによる放射線塞栓療法後の処置に伴う事象が肝動脈化学塞栓(TACE)に比べ相対的に穏やかであることは、効果的な単一化学塞栓処置が高齢患者にとってTACEで必要な複数コースの治療より受け入れやすいということを示唆している。さらに、チロシンキナーゼ阻害剤のソラフェニブは多くの高齢のHCC患者にとってよい治療選択肢の代表であり、75歳以上の患者への使用に伴う悪性事象頻度の増大に対しては投与量の調節が必要かもしれない」と語っている。

新たな研究は、ドイツ、イタリア、スペインの肝臓専門医、腫瘍専門医、インターベンション放射線医、核医療医師のチームがスペイン・パンプローナのナバラ大学病院肝臓科主任でENRYグループの議長であるブルーノ・サングロ博士と協調して治療を行った325人のHCC患者についての徹底的な評価に基づく最新のリポートである。

▽肝細胞がん(HCC)について
肝細胞がんは肝臓が肝炎やアルコール依存症などの病気のためにひどく損傷したり、肝硬変になった人に起こる。世界で最も多い10種のがんの1つであり、毎年約75万人がこの病気と診断され、がんのなかでは3番目に多い死因である(注2)。罹患率が最も高いのはアジア・太平洋、南欧など肝炎と診断される人が最も多い地域である。

肝細胞がんが治癒するには手術以外の手段はなく、肝臓の病変部を切除するか、健康なドナーの肝臓を移植するしかない。しかし、これらの手段は大多数の患者にとって不適切であり、こうした患者の生存期間は主としてがんと診断された時点での肝臓の状態と腫瘍の進行程度によって数カ月から2年余りまでである。

▽年齢別ENRY(放射性イットリウム90ラベルの樹脂ミクロスフィアに関する放射線塞栓療法欧州ネットワーク)評価の重要所見

この新しい分析は70歳以上(平均74歳)の128人の患者とそれより若い197人患者(平均58歳)との間の肝細胞がん(HCC)治療を比較した。報告書執筆者はまた、75-87歳(平均78歳)の非常に高齢者の患者49人について副次的な分析を行った。

高齢者と若い年齢の治験グループは、同じようなベースライン特性を示し、多くが肝葉に存在し原因となっている肝硬変をある程度相殺(肝障害程度を示すChild-Pugh分類でクラスA)した多くの多結節、進行期のHCCだった。高齢者の患者は双方とも全体としてかなり低位の腫瘍負荷、より低い腫瘍量、放射線塞栓療法で標的となる量であり、B型肝炎ウイルス感染する可能性は低くなりそうだった。

研究での患者の全生存は、高齢者(平均14.5カ月)と若年層(12.8カ月)の患者の間で統計的な有意はなかった。また非常に高齢の患者(75歳以上)とそれ以下の患者の間の生存も平均14.9カ月対12.8カ月と有意の差はなかった。

SIR-Spheresマイクロロスファイアによる放射線塞栓療法は、忍容性は両年齢層で等しく良好だった。疲労、吐き気・おう吐、腹痛、発熱、高ビリルビン値など共通する施術関連事象は、大部分の患者について重症度で軽度から中程度、持続時間は短かった。これら事象がグレード3かそれ以上に格付けされたのはほとんどゼロで、例外はグレード3の疲労感が1例、グレード4の動悸亢進2例だった。消化管(GI)潰瘍(GI管内での不注意によるマイクロスフェア析出に起因する)は、2つの年齢グループで同程度にまれで、程度も軽度から中程度だった。重度のGI潰瘍(グレード3以上)は、高齢患者の間では実際のところ発症例は(若年層より)3倍も少なかった(0.8% vs. 2.7%)。

総合整理されたENRYデータが2011年に初めて公表された時(注3)、サングロ教授は「ENRYは期待された研究ではなかったので、われわれは発見したことは控えめに解釈される必要があった。広くルーチンの臨床行為で治療されるHCC患者の評価に基づき、われわれが言えることは、SIR-Spheresを用いる放射線閉塞療法が腫瘍を直接標的にして、生存可能な肝細胞を傷つけないことであり、疾患の重荷を減らし、患者の生存と生活の質を高めうることである。生存の最大のメリットは、がんの状態を表す指標が改善し、腫瘍結節が減り、門脈の閉塞がなくなる患者が期待されることである」と語った。

サングロ教授はさらに「ゴルフィエリ教授の分析に基づき言えることはまた、われわれが観察したメリットは、この非常に深刻な病気に対するほかの治療法と比べて、比較的軽度の副作用プロファイルに基づく放射線閉塞療法に対していくつか可能性のある付加的価値を付けて、若年層より高齢者の患者により多く当てはまることである。これら患者はほかの治療選択肢がより少ない人たちである」と語った。

手術不可能なHCC患者の生存を延ばすため試されたほかの治療選択肢は肝動脈化学塞栓術(TACE)が含まれる。TACEは繰り返しインターベンショナル処置と入院加療が必要となるが、それは塞栓後症候群および1日2度投与される経口治療薬で、患者の3分の2以上(38%)で投薬中断につながる副作用を起こしうるからである(注4)。

サングロ教授は「放射線塞栓療法はまた、ソラフェニブなど新しい医薬治療と結びつける双助作用選択肢になりうる」と語った。

SIR-Spheresを利用する放射線閉塞療法で3つの進行中の無作為、対照臨床試験にいずれかに登録することに関心のある医師および患者は、以下のサイトで詳細を知ることができる。

SORAMIC試験はHCC患者についてソラフェニブ単独投与との比較対照で、ソラフェニブとSIR-Spheresとを結びつける療法が欧州で実施中。
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SIRveNIB試験はアジア太平洋地域で実施中であり、HCC患者に対するソラフェニブ投与に対するSIR-Spheres療法の比較対照試験。
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SARAH試験はフランスで実施中であり、HCC患者に対するソラフェニブ投与とSIR-Spheres療法の比較対象試験。
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参考文献:
(1)Golfieri R, Bilbao JI, Carpanese L, et al on behalf of European Network on Radioembolization with Yttrium-90 resin microspheres (ENRY).
Comparison of the survival and tolerability of radioembolization in elderly versus younger patients with unresectable hepatocellular carcinoma.  
Journal of Hepatology 2013; ePub doi: http//dx.doi.org/10.1016/j.jhep.2013.05.025.
(2)GLOBOCAN. Liver Cancer Incidence and Mortality Worldwide in 2008.  リンク accessed 28 June 2011.
(3)Sangro B, Carpanese L, Cianni R et al on behalf of European Network on Radioembolization with yttrium-90 resin microspheres (ENRY).  
Survival after 90Y resin microsphere radioembolization of hepatocellular carcinoma across BCLC stages: A European evaluation.  Hepatology 2011;54:868-878.
(4)Llovet J, Ricci S, Mazzaferro V et al for the SHARP Investigators Study Group.  
Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma.  New England Journal of Medicine 2008;359:378-390

ソース:ENRY Trialists

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