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肺がん検診を生かしたCOPDの早期診断

グラクソ・スミスクライン株式会社
2012/07/06 09:52


 2012年5月30日(水)、日本喘息・COPD フォーラム(JASCOM)とグラクソ・スミスクライン株式会社の共催により、メディアセミナー「肺がん検診を生かしたCOPDの早期診断」が開催されました。JASCOM会員医師による2つの講演が行われ、まずJASCOM代表である東京女子医科大学統括病院長の永井厚志先生から、COPDの現状や今後の課題などが説明された後、同大学八千代医療センター呼吸器外科教授の関根康雄先生より、千葉市で導入されている全国初の体系的なCOPD患者抽出・フォローアップシステムの取り組みや成果が紹介されました。

■日本におけるCOPDの現状
東京女子医科大学 統括病院長 JASCOM代表 永井厚志先生

 COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの煙などを吸引したために起こる気管支や肺胞の慢性炎症で、ゆっくりと呼吸機能が低下し、進行すると呼吸不全に陥り、死に至る疾患です。患者さんの気管支は炎症によってむくみ、痰などの分泌物が気管支内に大量に出て空気の通り道がふさがれ、呼吸しにくくなりますが、これはまさに「慢性気管支炎」です。一方、肺胞は炎症によって壊され、酸素を取り込みにくくなり、「肺気腫」になります。持続する咳や痰、労作時の息切れ、風邪が長引くなどがCOPDの特徴的な症状ですが、高齢の患者さんが多いため、「年のせい」と見過ごされやすく、また医師も見逃しやすいという問題があります。

 COPDによる死亡者数は年々増加しており、2010年には16,000人を超えています。喫煙社会に住んでいた団塊の世代が高齢化するため、COPDはこれから急速に増えることが予想されます。しかし、未診断患者が極めて多く、2008年には推定患者数約530 万人に対して、治療患者数はわずか17.3万人であるとの数字が出ています。現在の人口動態に合わせると、推定患者数は700万人を超えると思われますが、診断・治療を受けている患者さんの数は多く見積もっても20万人程度であるのが現状です。

 国のCOPD対策も始まっており、厚生労働省の第2次「健康日本21」にもCOPDの啓発事業が盛り込まれ、「COPD の認知率を現状の25%から2022年度に80%まで引き上げる」という目標が掲げられました。COPDだけに着目して認知度を高めるのは難しいかもしれませんが、よく知られている慢性気管支炎、肺気腫とからめて啓発していけば、そう長い時間をかけなくても、COPDの正しい知識を広めていくことは可能であると思います。

 COPDは進行性の疾患で、呼吸機能が健康な人より早く低下し、元に戻ることがないので、早期に診断・治療することが重要です。早期診断のカギとなるのは咳・痰の症状です。プライマリ・ケアの医師を対象に調査したところ、気流閉塞のある患者さんの56%が咳・痰症状を有していました。さらに、咳もしくは痰(息切れなし)と息切れ(咳、痰なし)の症状別に年齢分布を見ると、年齢の若い患者さんで息切れより咳・痰、つまり慢性気管支炎の症状が多く、早い人では40歳代から現れ、50~60歳代で増えていました。息切れは60歳代後半から増えてくるので、5年から10年早く慢性気管支炎の症状が前面に出てくると考えてよいでしょう。

 この段階でCOPDを見つけ進行を食い止めれば、QOLを維持し、致死的な状態に陥るのを防ぐことができます。これまでCOPDという言葉だけが一人歩きしてしまい、医師でも慢性気管支炎、肺気腫とCOPDがつながらない人が少なくありませんでした。今後は、COPDは慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた呼吸器の病気の総称であること、そしてCOPDの早期の症状として慢性気管支炎を見逃さないことを広めることが肝要になるでしょう。

■肺がん検診を生かしたCOPDの早期診断 ~千葉モデルの試み~
東京女子医科大学八千代医療センター 呼吸器外科 教授 関根康雄先生

 我々は千葉市において、肺がん検診票を有効活用したCOPD早期発見モデル「千葉モデル」の確立に取り組んでいます。COPDは肺がんの重要な危険因子です。私の専門は呼吸器外科で、毎週のように肺がんの手術を行っていますが、実際、肺がんとCOPDの合併率は高く、またその多くは進行例で、COPDのために肺機能などに制限があり標準治療ができないようなケースも少なくありません。肺がんの長期予後は、より早期に発見できているかどうかで決まるため、COPDを早期発見しフォローすることにより肺がんを早期発見・治療できないかとの考えから、肺がん検診を利用してCOPDを見つけ出そうというアイデアが生まれました。

 本日は我々の活動とその成果をご紹介するとともに、COPDおよび肺がんの医療経済や両疾患の関連、肺がん検診の現状などについて考えてみたいと思います。

●COPDおよび肺がんの疫学・医療経済
- COPDの早期発見は肺がんの予防・早期発見、医療コストの削減につながる -

 世界の10大死亡原因を見ると、1990年においても2020年代の予測においても、COPD、肺がん、結核、下部呼吸器感染症の4つの呼吸器疾患が入っており、呼吸器疾患は将来的にも死因の上位を占めるであろうことが予想されます。

 我が国におけるCOPDの最大の原因はタバコです。タバコによる経済的効果と損失を試算した1998年の数字を見ると、医療費や損失国民所得などの損失が5兆6,000億円、タバコ税やタバコ産業賃金などのメリットが2兆8,000億円で、差し引き3兆円の損害が出ています。タバコのために人々の健康だけでなくお金も犠牲になっていることが、統計学的にも示されているのです。

 どんな病気もそうですが、COPDも重くなればなるほど医療費がかかります。また、急性増悪も起きやすくなります。重症の患者さんは在宅酸素療法であることが多いですが、安定期に比べ、急性増悪時の医療費は非在宅酸素の場合で29.3倍、在宅酸素の場合で6.5倍になるとの報告もあります。

 一方、肺がん患者さん1人当たりの医療費を年代別に見ると(図1)、若年者ほど医療費がかかっています。『生産性÷医療費』を「費用便益比」と言いますが、若い人ほど生産性が高いため、若年者ほど早期発見・治療をして医療費を下げることで費用便益比は上昇する、つまり肺がん医療の経済効果が高くなります。また、早期発見・治療で手術をして治った群と進行がんで見つかり「化学療法→緩和医療→死亡」という経過をたどった群を比較すると、生存期間はもちろん、生存期間にQOLを加味した数値QALYs(Quality Adjusted Life Years)にも大きな差が生じます。したがって、肺がんの早期発見・治療は患者さんの予後やQOL、そして医療経済の面でも非常に重要であると言えます。

 COPDは肺の慢性炎症ですが、炎症は全身に及んでいきます。動脈硬化や糖尿病などの合併が多く、またCOPDが基礎疾患としてあることは、合併疾患の治療や予後に大きな影響を与えます。肺炎、肺がんなどの呼吸器疾患のみならず、虚血性心疾患や糖尿病においても、COPD合併のほうが死亡例が多いことがわかっています。COPDは単に「喫煙しているとなる肺の病気」と思われがちですが、COPDの先には死に至る疾患があること、COPDの早期発見・治療が肺がんだけではなく心疾患系などの病気のリスクも下げることをもっと広く周知する必要があるでしょう。

●COPDと肺がんの関連
- COPDは喫煙とは独立した肺がんの重大な危険因子である -

 肺がんに占めるCOPDの割合は10~60%と報告によりさまざまですが、私の印象では、外科で手術をする症例の3~4割はCOPDを合併しており、手術できない症例ではもっと多いと思います。逆に、COPDに占める肺がんの割合は約5%、多くても10%といわれています。

 COPDが重くなればなるほど、肺がん発症率は高くなります。COPDでない人と比較して、肺がん発症リスクは中等症で1.4~2.7倍、重症で2.8~4.9倍になるといわれます。10年以内の発症確率は軽症~中等症で3倍、重症では10倍にもなります。

 喫煙期間が長いほどCOPDは重症化し、肺がん発症リスクも高くなります。ただし喫煙者のすべてがCOPDになるわけではなく、喫煙者における肺がん発生率をCOPDの有無で比較すると、COPDのある人は1%/年、ない人は0.2%/年で、COPDになることは喫煙以上に大きな問題であることがわかります。同等の喫煙量でCOPDになった人とならない人の肺がん死亡率を比較すると、なった人のほうが7倍も死亡率が高くなります(図2)。非喫煙者でもCOPDの人は肺がん発症リスクが高いとする海外の報告があります。また、肺がんの長期予後もCOPDが重いほど悪くなります。ステージIaの早期の肺がんでも、長期予後はCOPDを合併している人のほうが有意に悪いことを見出しました。

 したがって、COPDは喫煙とは独立した、肺がんの重大な危険因子であり、COPDを早期発見・治療することで、肺がんを予防したり、早期発見したりすることが可能であると言えます。

●千葉モデルの取り組みと成果
- 肺がん検診票を利用したスクリーニングにより、高率にCOPD患者を発見することが可能 -

 肺がん検診は受診率が20~40%と高めですが、がん発見率は0.05%程度で、他のがんに比べて良くありません。低線量CT検査がハイリスク群に対する検診として有効ですが、どのような人を対象にするかが問題です。重喫煙者を対象とした海外の研究が見られますが、我々はCOPDを対象にすれば、もっと高率に肺がんを発見できるのではないかと考えました。

 しかし、COPDは9割が未診断であるのが現状です。そこでCOPD早期発見の試みのため、千葉市医師会、千葉市、ちば県民保健予防財団の三者が協力し、「千葉COPD肺がんスクリーニング研究会」を2008年に設立。健康診断を活用してCOPD疑いの患者さんを抽出し、二次精検を行って早期診断をつけ、禁煙指導や薬物療法を行うだけでなく、定期的なフォローアップにより、肺がんの早期発見・治療につなげるという新しいペイシェントフローの確立を考えました。肺がん検診票(図3)に、1.年齢60歳以上、2.喫煙歴あり(過去の喫煙も含む)、3.呼吸器症状あり(慢性的な咳、痰)、4.前年度CT撮影を行っていない(毎年CT撮影をするなら検診ではなく医療として受けるべきと考えるため)の項目を設け、4つすべてに該当する場合をCOPDスクリーニング(COPD疑い)とし、一次検診施設の判断で要精検と判断されれば、二次検診施設で二次精検の肺機能検査、CT検査を受けてもらうという流れです。

 活動は平成20年度にスタートしました。COPDスクリーニングの数はなぜか減っていますが、要精検者の数も精検受診者の数も増えており、このシステムが普及しつつあることがうかがえます。平成22年度の検診受診者は89,100人で、1,170人がCOPD疑い患者として抽出され、そのうち551例が二次精検を受け、356例に肺機能検査が行われました(図4)。551例のうち約4分の1がCOPD/肺気腫の診断で、その約4割が要治療のレベルでした。かなり高率にCOPDを見つけることができたと言えます。

 一方、従来のX線検査で異常が見つかり二次精検を受けたとき、呼吸器症状がなくても肺機能検査を受けた人が144人と以前に比べ増えてきました。胸部X線異常例からもCOPDを発見するルートができてきたことも、一つの成果だと考えています。二次精検で肺機能検査を受けたのは合わせて500例で、うち135例がCOPD/肺気腫の診断となり、63例が要治療とされています。

 COPDの診断がついた人には、年1回の低線量CT検査や肺機能検査によるCOPDの進行度評価・肺がんスクリーニング、禁煙指導などを行います。中等症のCOPDについては、専門医である呼吸器内科で薬物療法を受けることも重要です。

 レントゲンで全く異常がなかったが、検診票からCOPD疑いとなり、肺機能検査とCT検査を受け、肺がんが見つかった例も出てきています。レントゲンでは見えにくい病変でステージはIIIa、放っておけば半年ぐらいでIV期に進行していたのではないかと思われる症例もありました。また、長期的にCTフォローをしている症例もあります。肺機能検査の結果、COPDの診断はつかなかったが、CTで「すりガラス陰影(腺がんの前がん病変あるいは早期病変)」の多発が見つかった症例で、多発病変のどれかが大きくなるといった変化を見逃さないよう慎重に経過観察を続けています。

 COPDの早期発見・治療は、患者さんのQOLの向上、肺がんの予防ならびに早期発見・治療、さらには医療コストの削減にもつながります。「千葉モデル」は一定の成果を挙げており、さらに実績を重ねることで、他の自治体へと広めることも可能だと考えています。

■column
肺がん検診は精度に課題あり。慢性的な呼吸器症状があれば呼吸器科の専門医へ

 肺がんは他のがんに比べ性質が悪く、長期予後が良くないが、関根医師は「検診の精度にも問題があり、検診体制の見直しが必要」と話す。胸部X線検査は簡単で、肺がん検診は受診率は比較的良いが、がん発見率は良いとは言いがたい。平成20年度の数字を見ても、胃がん0.17 %、大腸がん0.21 %、乳がん0.32 %であるのに対して、肺がんは0.07 %にとどまっている。

 「X線検査で見つけられる肺がんは2割程度と言われている」と関根医師。見逃しが多いというわけではなく、心臓や骨に重なって見えにくい肺の病変を1枚のレントゲン写真だけで見つけ出すのには限界があるという。

 検診を受け「異常なし」と言われれば誰しも安心するものだが、喫煙習慣が長い人や慢性的な咳、痰、息苦しさなどの症状がある人は、検診で「異常なし」と言われていても、呼吸器の専門医を受診して肺機能検査などを受ける必要があるだろう。

■JASCOMの理念&活動内容
日本喘息・COPDフォーラム(Japan Asthma and COPD Management Forum;JASCOM)は呼吸器疾患、特に気管支喘息とCOPDに関して治療の発展、患者さんのQOL向上、正しい理解と普及を図るため、2003年に呼吸器専門医を中心として設立された団体です。2012年現在、会員数は呼吸器専門医約480名。情報発信や患者会との連携活動、調査・研究など、さまざまなプロジェクトを展開していますが、COPDに関しては現在、特に啓発プロジェクトに力を注いでおり、認知度の改善や早期受診の推進をめざしてワークショップや実態調査を行っています。

発行:
日本喘息・COPDフォーラム(Japan Asthma and COPD Management Forum=通称JASCOM)
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