情報システム学会 社会への提言第5弾「岐路に立つ組込みソフトウェア開発現場」公表

~企業経営者や事業責任者への警鐘として~

人間中心の情報システムを志向し,ビジネス・研究領域の融合や情報システム人材の育成を目的とした一般社団法人 情報システム学会(会長:杉野 隆 国士舘大学教授)は、このほど「岐路に立つ組込みソフトウェア開発現場~企業経営者や事業責任者への警鐘~」を公表。これは同学会 企画委員会「提言検討チーム」がまとめたもので、前回の「アレキシサイミア(失感情症)への対応についての提言」に続く、社会への提言第5弾です。

組込みソフトウェアは、製品・サービス機能の多様化に伴い多くの分野に導入され社会で何気なく便利に重要な分野にも利用されています。今後、益々、社会の多様化に伴い「産業の知恵」として利用分野が増大することが見込まれています。
組込みソフトウェア開発現場は、社会のニーズに応えるために努力を重ねて来ていますが、今後も継続する市場競争、社会変化を考えると開発現場として今時点で再考する必要があると考え、今回の提言に至りました。
なお提言の全文はリンクで公表しています。ここでは各章の見出しのみをご紹介します。是非全文をご一読ください。

1.提言の主旨
 言うまでもなく組込みソフトウェアはこれからの産業社会のいたるところに利用され、「産業の知恵」として製品やサービスの競争力の源泉になりうるものと期待されています。これから蓋然性が高いと予想される大きな課題・問題に対して、早めに対策を講じると言う意味で、本提言は有益であると考えます。速やかに将来の展望を踏まえたうえで、組込みソフトウェア開発現場の改革・改善に着手すべきと考え提言します。

2.組込みソフトウェアの「開発とメンテナンス」現場の声
 以下に提示する問題は事業的、技術的にトップレベルにある企業では克服されつつあるが、大半の組込みソフトウェア関連企業ではこれからの問題と考え、敢えて提言します。
2.1 プログラムのスパゲティ化が進み始めている
2.2 大規模化にともない、プロジェクト運営が難しくなりトラブルを招く
2.3 組込みソフト開発現場の上位職や経営者層は機械設計技術者が多く現場理解不十分
2.4 3K職場と噂され、学生に敬遠されている
2.5 組込みソフトウェアのセキュリティ脆弱性が顕在化しつつある

3.業務ソフトウェアが辿った道(失敗の教訓を生かす)
 業務ソフトウェア開発者達が辿った試行錯誤の過程の中から、組込みソフトウェアの世界でも今後同じような問題が発生すると考えられるものを列挙します。
3.1 ソフト産業強化を狙ったソフトウェアの部品化を目指した国家プロジェクトが失敗
3.2 大規模プロジェクトでトラブル続出
3.3 ERPパッケージ以前の基幹システムはスパゲッティ化が進展
3.4 ソフト・ハードの技術進化が早く技術者の世代間断絶が発生

4.対応策の提言
 組込みソフトウェアの開発・メンテナンスの問題は、業務ソフトウェアの開発やメンテナンスの問題と本質のところでは根を同じくすると考えられます。従って業務ソフトウェアで得た経験や知見から、組込みソフトウェアでも有効と考えられる対応策を、下記提言します。
4.1 政府や業界が指針を示し、それに基づいて整斉と部品化を推進する
4.2 品質管理は工程全体を通して複合的に実施する
4.3 大規模プロジェクトのマネジメントと人材確保を強化する
4.4 ソフトウェアの知財化を急ぐ
4.5 コンテクスト・アウェアとデータ処理に留意する
4.6 セキュリティ対策を徹底する
  
5.組込みソフトは日本の社会や製造業企業の浮揚の鍵を握る
 組込みソフトウェアは製品競争力の源泉です。(中略)日本人の国民性、中でも協調性はチーム活動の必要なソフトウェア開発やメンテナンスに向いています。かつて半導体が「産業の米」と言われたように、組込みソフトウェアは日本にとどまって「産業の知恵」となるべきです。日本社会の発展の為にもそうすべきです。是非ともこれから遭遇する高いハードルを越えて世界に先駆け大きく成長し、再び日本の製造業を大躍進させてほしいものです。日本製造業浮沈のカギを握っているといっても過言ではありません。

【情報システム学会(Information Systems Society of Japan)について】
設立は2005年。2011年4月1日より一般社団法人として活動を開始。
学会の主要なテーマとして、情報システム人材の育成、実務家と研究者の交流、これからの情報システムのあり方、人間中心の情報システムの追究が挙げられます。
事務局所在地:〒102-0081東京都千代田区四番町4-13 I・S四番町ビル4F 
会長:杉野 隆(国士舘大学教授)
電話:03-6380-9514(事務局員不在時は留守番電話、FAX兼用)
URL:リンク

関連情報
http://www.issj.net/
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