ACCJ、健康維持に関する意識調査を基に疾病による経済的損失額を試算

Tokyo, Nov 25, 2011 - ( JCN Newswire ) -
■病気・ケガによる経済的損失額は約3.3兆円、慢性的疼痛および精神疾患が経済的損失の2大要因
■予防医療、早期発見の推進による経済的負担の軽減に向け、日本の医療福祉政策に関する政策提言を発表

在日米国商工会議所(ACCJ)では、この度実施した大規模な「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査」に基づき、疾病が日本人の労働生産性に与える影響を分析し、日本にもたらす経済的損失額が年間3.3兆円であるとの試算を発表しました。病気やケガによって労働生産性が低下することで、日本の競争力や経済成長にマイナスの影響をもたらします。

また同時に、ACCJでは日本のヘルスケアの現状に関する総合的な分析を白書として取りまとめ、日本の医療福祉政策に関する提言を発表しました。この中で、日本政府、医療関係者、企業が連携することで予防医療および病気の早期発見を推進し、病気やケガによる経済的損失を軽減するための政策を導入することを提案しています。これにより、費用対効果の高い方法で感染症や慢性疾患の多くを予防、早期発見することが可能となります。日本の医療制度と政策は従来、病気の予防より治療に重点が置かれてきましたが、ACCJでは、予防と早期発見を主眼とする取り組みを行うことで、生産性が高まり、医療コストの過度な上昇を抑えることにつながると考えています。

疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査

ACCJでは、日本における疾病の予防、早期発見に関する実態を分析するため、疼痛(とうつう)、精神疾患、けがまたは身体障害、慢性疾患、感染症またはウイルス感染の5つの分野に焦点を当て、大規模な意識調査を実施しました。さらに今回は、身体的および精神的な不調が業務にどのような影響を与えるかを明らかにするために、アブセンティーズム(病気欠勤)、プレゼンティーズム(体調が悪くても出勤すること=疾病就業)、病気による転職、病気による退職という分類別に実態を分析しました。さらに、これらに伴う経済的損失額の合計をベースに、日本全体の経済的損失額を試算しました。

<経済的損失額の内訳>
※詳細は下記URLをご参照ください。

また、調査結果によると、疼痛(背中、首、肩などの慢性的な痛み、偏頭痛、関節炎等)と、うつ病などの精神疾患が、病気欠勤および疾病就労を引き起こす2大要因となっていることが明らかになりました。また、うつ病をはじめとした精神疾患は、疾病に伴う退職または病気による収入減を引き起こす主要因となっています。

<労働生産性の低下や経済的損失を引き起こす要因 (疾病別)>
※詳細は下記URLをご参照ください。

また、調査では多くの日本人は検診、病気予防、早期発見によるメリットについて理解が不足しており、その結果、毎日の運動や健康診断の定期的な受診といった、病気の予防および早期発見につながる日常的な対策も行っていないことを示唆しています。また、脳卒中や肝炎、骨粗しょう症をはじめ、疾病予防、早期発見に関する情報を入手し、適切な対策を取りたいと多くの人が考えていることもわかりました。

ACCJが発表した白書「競争力強化策としての健康への投資-予防医療、早期発見を通じた疾病の経済的負担軽減のための政策提言」は、肝炎、乳がん、慢性的疼痛、医療関連感染に至るまで、27の幅広い分野をカバーし、日本人の健康の増進を図り、検診、予防、早期発見を通じて、病気・ケガによる経済的負担を軽減するための具体的な提言が盛り込まれています。白書では、労働生産性を向上させることは、日本経済の活性化に非常に重要だと指摘しています。また、社員の健康維持・増進を図ることが生産性の向上につながり、ひいては日本経済の成長と国際競争力を高めるために重要とも述べています。

ACCJヘルスケア委員会委員長のウィリアム・ビショップは、次のように述べています。「ACCJは今回、日本における疾病に起因する経済的損失額を初めて総合的に算出しました。また、慢性的疼痛と精神疾患が日本人の労働生産性に大きなマイナスの影響をおよぼしていることも明らかとなりました。このような慢性疾患がもたらす経済的影響は死亡率といった統計にはあらわれていませんが、特に注目して対策を取るべき問題だと考えます」。

さらにACCJヘルスケア委員会副委員長のブルース・エルズワースは、次のようにコメントしました。「高齢化が進む日本において、病気やケガによる経済的負担は今後もさらに増加すると考えられます。しかしながら、健康への投資を行うことで、日本は生産性をさらに向上させ、在宅看護が必要となる年齢を引き上げ、さらに経済成長も実現させることができるのです。ACCJの調査および政策提言が、日本の医療福祉政策および経済政策に関する議論の一助となることを願っています」。

<経済的損失と生産性損失の算出方法について>

生産性損失推定 = 病気による欠勤損失 + 疾病就業による損失 + 病気転職による損失 + 病気退職による損失

■病気欠勤による損失:病欠および短期の就業不能休暇の経済的価値 = [病欠日数] × [日給(年収÷240日)] × [人口乗数(実際の全国人口に近い数字を得るための乗数)]
■疾病就業による損失: 健康問題による就業中の生産性低下(例え集中力が低下し、通常の生産性を発揮できない)の経済的価値 = [前月の正常に機能しなかった時間数] × [時給(年収÷48週÷前月実稼働時間数] × [人口乗数(実際の全国人口に近い数字を得るための乗数)]
■病気転職による損失:就労中だが、健康問題のせいで過去に転職したことがあり、それが原因で減少した給与所得に相当する経済的価値 = [給与減収があった人数] X [減収の年間評価額] × [人口乗数(実際の全国人口に近い数字を得るための乗数)]
■病気退職による損失:健康問題や身体障害のせいで長期に労働不能の状態が継続している、または以前に仕事をやめ、働いてないため給与所得減収の経済的価値 = [給与減収があった人数] X [減収の年間評価額] × [人口乗数(実際の全国人口に近い数字を得るための乗数)]

前提条件

平均的な就労日数を年48週、週5日とし、合計年平均240日稼働するものとする
医療費にかかる経済的損失はこの調査の対象ではない

<調査の詳細>
調査方法: インターネットによる調査
調査対象者: 全国5,000人(居住地、年齢、性別は人口に比例して配分)
調査実施期間:2011年10月30日~11月2日

なお、ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査」とACCJのヘルスケア白書「競争力強化策としての健康への投資」は以下のサイトより、全文がご覧になれます。

調査報告書: リンク
ヘルスケア白書: リンク

<参考資料>

疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査の結果(抜粋)

<全般>
●過去1カ月間に、就労者本人の病気、ケガにより、集中力の低下、欠勤、休職、転職など、業務への影響があったとする回答者は15.4%。
●過去1カ月間に、家族の病気、ケガにより、集中力の低下、欠勤、休職、転職など、業務への影響があったとする回答者は10.0%。
●今後10年間に懸念する病気のトップ5は、がん(36.7%)、背中、首、肩の痛み(27.8%)、脳卒中・脳疾患(23.6%)、インフルエンザ(22.7%)、糖尿病(18.0%)

<疾病予防>
●61.7% の回答者がたばこ税の引き上げを支持している一方、17.5%が反対しています。反対している回答者のうち67%が喫煙は健康を害するものであるが、たばこ税の増税は喫煙者にとって公平でないとしています。
●勤務先や加入している健康保険提供機関が提供する健康増進プログラムが有意義だと感じている回答者は34%にとどまっています。
●84%の回答者がワクチンは疾病予防に重要だと回答しており、87%が地方自治体や政府は、ワクチン接種/予防接種に対して助成金/補助金を支払うべきだと考えています。
●76.6%の女性回答者が骨密度検査に関心があり、59.1%がカルシウムの摂取を増やすなど、何らかの予防措置を行っています。
●80.3%の回答者が脳卒中とその予防法についてより多くの情報を得たいと考えています。
●52.6% の回答者が医療関連感染に不安を感じており、75.7%が日本政府が医療関連感染のリスク軽減に向けて国家的な対策を取るべきだと考えています。*
* WHOの定義によると、医療関連感染(HAI)とは、病棟や外来にかかわらず、在宅ケアや老人保健施設など、医療を行うすべての場所において、それまでに罹患していない病気に感染する事を指しています。

<早期発見>
●40% の回答者が、過去1年間に総合的な健康診断を受けたことがないことがわかりましたが、大多数の人が健康に不安を感じた場合は健康診断を受けると回答しました。
●50~79歳のハイリスクグループの日本人のうち、30%しか肝炎ウイルス検査を受けていませんが、大多数の人が無料で検査が受けられるか、毎年の健康診断に含まれていれば検査を受けると回答しました。
●40-69歳の女性の52%が過去2年に乳がん(マンモグラフィーX線)検診を受けたと回答しました。乳がん検診を受けていない回答者はしこりを感じる、あるいは毎年の健康診断で無料で検査が受けられるのであれば、乳がん検診を受けたいと回答しました。
●30-69歳の女性で、半数以上が過去2年以内に子宮頸がん検診を受けていないと回答しました。子宮頸がん検診を受けていない回答者は、健康に問題がある場合あるいは毎年の健康診断で無料で検査が受けられるのであれば、検診を受けると回答しました。

本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
リンク

概要:在日米国商工会議所

在日米国商工会議所(ACCJ)は、米国企業40社により1948年に設立された日本で最大の外資系経済団体です。米国企業の日本における経営者を中心に、現在は約1000社を代表する会員で構成され、東京、名古屋、大阪に事務所を置いています。日米両国政府や経済団体等との協力関係の下、「日米の経済関係の更なる進展、米国企業および会員活動の支援、そして、日本における国際的なビジネス環境の強化」というミッションの実現に向けた活動を展開しています。また、60以上の業界・分野別委員会を中心に活動を行い、意見書やパブリック・コメント、白書等を通じた政策提言や、政策や経済の動向等について年間500以上のイベントやセミナーを開催するとともに、各種チャリティー等の企業の社会的責任(CSR)活動にも積極的に取り組んでいます。 www.accj.or.jp

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