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2011年中堅・中小企業におけるIT関連市場の展望

株式会社ノークリサーチは、2011年の中堅・中小企業におけるIT市場の展望に関する年頭コメントを発表した。

1.2011年は2010年比プラス0.9%の横ばいだが、2012年以降に向けた下地作りが重要
2.クラウドの訴求は「基本インフラ維持負担軽減」と「業種別業務改善」の二つが有効
3.スマートフォンやタブレット端末が中堅・中小企業で普及するまでには時間を要する
4.「オンデマンドなアドホック分析」と「現場レベルでの可視化」がBIの潜在需要を喚起
5.クライアント環境の仮想化では業務アプリケーションも含めたサービス提供が必要
6.クラウドによる構造変化だけでなく、海外展開に伴う委託先の変更にも注意すべき

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2011年1月11日

2011年中堅・中小企業におけるIT関連市場の展望

分析および執筆: 岩上由高

株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691 URL:http//www.norkresearch.co.jp)は、2011年の中堅・中小企業におけるIT市場の展望に関する年頭コメントを発表した。
※図表につきましては下記URLをご参照ください
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1.2011年は2010年比プラス0.9%の横ばいだが、2012年以降に向けた下地作りが重要
2.クラウドの訴求は「基本インフラ維持負担軽減」と「業種別業務改善」の二つが有効
3.スマートフォンやタブレット端末が中堅・中小企業で普及するまでには時間を要する
4.「オンデマンドなアドホック分析」と「現場レベルでの可視化」がBIの潜在需要を喚起
5.クライアント環境の仮想化では業務アプリケーションも含めたサービス提供が必要
6.クラウドによる構造変化だけでなく、海外展開に伴う委託先の変更にも注意すべき


1. 2011年は2010年比プラス0.9%の横ばいだが、2012年以降に向けた下地作りが重要

以下のグラフは年商5億円以上~500億円未満の国内中堅・中小企業におけるIT投資規模推移をカテゴリ別に算出した結果である。2011年のIT投資規模は4兆4425億円となり、2010年比プラス0.9%のほぼ横ばい状態となる。中国など海外展開に活路を見出そうとする製造業、さらに進んだ少量多品種化に対応しようとする卸売業/小売業、積算見積の精緻化によって利益率を少しでも改善しようと努める建設業など、業種別に細かく見ると2011年も「生き残りをかけた投資」に取り組む中堅・中小企業は少なくない。しかし、年商5億円以上~500億円未満で約20万社に達する中堅・中小企業全体で見ると、2011年はIT投資を極力抑えて様子を見ようとする傾向が強い。TPPを始めとする経済構造の変化やIFRSなどの法制度改定といったまだ具体像が完全に見えていない要素が多いことも、ユーザ企業が「様子見」の姿勢を示す一つの要因となっている。
IT活用に積極的なユーザ企業はサービス形態への移行や業務システムの刷新といった取り組みを進めるものの、中堅・中小企業全体では更新需要が多くを占める形となる。そのため、カテゴリ別に見た2011年の2010年比のIT投資規模伸び率ではハードウェアがプラス1.9%であるのに対し、ソフトウェアがプラス0.39%、サービスがプラス0.38%と低い値となっている。
しかし、2012年以降は中堅・中小企業がサービス形態でITを活用するためのソリューションが徐々に洗練され、ユーザ企業側の認知や意識にも変化が表れてくる。2011年は導入実績を急速に伸ばすことが難しい時期ではあるが、この段階で自社のソリューションを訴求できる企業セグメントを見つけ出し、初期導入事例を通じてノウハウを蓄積することによって、2012年以降の本格展開に備えることが極めて重要である。


2.クラウドの訴求は「基本インフラ維持負担軽減」と「業種別業務改善」の二つが有効

大企業ではプライベートクラウド活用の取り組みが進んでいる。ITリソースが単に仮想化された状態から、標準化や自動化が実現される段階へと進みつつある。運用コスト削減とガバナンス維持の両面から、クラウド環境と既存環境を統合し、セキュアに統制されたデスクトップ環境をユーザへ配信する形態へと注目が集まると予想される。VMwareの「Project Horizon」やCitrix Systemsの「Citrix Dazzle」などはそうした動きを受けたソリューションといえる。
中堅・中小企業においてもサーバ仮想化に対する関心は急速に高まっている。ただし、中堅・中小企業がサーバ仮想化に期待しているのは、むしろハードウェアとソフトウェアの分離によるシステム安定性強化やレガシー資産継承である。そのため、上記のような大企業向けプライベートクラウド活用の規模を縮小して中堅・中小企業向けに提供することは得策とはいえない。現在、中堅・中小企業の多くは「既存の業務システムを外出しすることでコスト削減を実現する」ことをクラウドに期待している。
だが、個別カスタマイズや他システム連携が施されたERPなどの基幹系業務システムをクラウド移行することは容易ではなく、逆にクラウド移行が容易なグループウェアなどの情報系業務システムでは社外に出すことでのコスト削減効果が低い。こうした期待と現実とのギャップによって、中堅・中小企業はクラウド活用に慎重な姿勢を見せている。こうした膠着状態を打開するためにはクラウド訴求のアプローチを変える必要がある。一つ目は「基本インフラ維持負担軽減」を訴求することだ。多くの中堅・中小企業が想定しているのはユーザの目に見えるシステムのSaaSへの移行という観点でのクラウド移行だ。だが、この手法には上記に述べたような障壁が存在する。一方、ハードウェア環境をサービス形態で提供し、ユーザ企業側とVPNで接続すれば、ユーザ企業は自社専用のサーバルームをクラウド上に実現できることになる。つまり、IaaS視点でのクラウド移行ということになる。これはSaaS視点でのクラウド移行に比べると、個別カスタマイズや他システム連携の課題を克服しやすい。IaaSというと、リソースを動的に拡張できるメリットを踏まえ、ソーシャルゲームなどでの活用に注目が集まりがちだ。だが、「ユーザ企業が手軽に管理/運用できる専用サーバルームをクラウド上に実現する」という観点のIaaS訴求は、中堅・中小企業が求める「既存の業務システムを外出しすることでコスト削減を実現する」というニーズに適したものといえる。また、中堅・中小企業が抱えるシステムには「ユーザの目に見えない」ものも存在する。マルウェア対策、スパム対策、情報漏洩防止などといったセキュリティ関連やPCの運用管理/資産管理などだ。こうした運用管理系のシステムは個別カスタマイズやシステム連携が少なく、SaaSへの移行が比較的容易だ。だが、ユーザ企業はSaaS形態の運用管理システムを十分に認知していない。このように「手軽な専用サーバルームとしてのIaaSへの既存業務システム移行」や「ユーザの目に見えないシステムのSaaSへの移行」によって、ハードウェア/ネットワーク/運用管理といったIT活用における基本インフラの維持負担を軽減し、ITを業績改善に活かすための原資を生み出すことがまず重要である。
二つ目は「業種別業務改善」の訴求だ。「ITリソースを必要な時に必要なだけ、従量課金で利用できる」といった技術的な観点で説明しても、中堅・中小企業は「自社の本業には役立たない」と捉えてしまうだろう。クラウドが持つメリットを業種固有の事情を踏まえた表現に言い換えることが必要だ。例えば、ホテル業界を考えてみる。インターネットによる宿泊予約が普及した結果、ホテル業界では「競合他社が提示する宿泊料金や過去の利用状況を踏まえ、日単位で適正料金を算出する」といったリアルタイムな処理が求められるようになってきている。そのために必要なITリソースを自社で保持するのは負担が大きい。そこで、「クラウドを活用すれば、コストを抑えつつ競合他社よりも迅速かつ緻密に適正料金算出が行えます」と説明すれば、自社の本業に直結したメリットをもたらすソリューションであると理解してもらえるはずだ。このように「基本インフラ維持負担軽減」によって原資を捻出し、「業種別業務改善」によって業績改善に役立つソリューションとしての認知に努めるといったステップを踏むことが、中堅・中小企業におけるクラウド訴求においては有効であると考えられる。


3.スマートフォンやタブレット端末が中堅・中小企業で普及するまでには時間を要する

一般消費者向け市場においてはスマートフォンやタブレット端末が普及の兆しをみせている。大企業においてもこうしたモバイル端末を業務システムに取り入れる動きが出てきており、一般消費者向けに普及した商材が企業向け用途へと拡大へとする「コンシューマライゼーション」の具体例として挙げられることも少なくない。スマートフォンやタブレット端末は保険業や旅行業の営業担当者が顧客にサービス内容を説明する際などにも利用され、コスト削減だけのIT活用からの脱却を担うソリューションの一つとして期待できる。だが、IT投資余力の少ない中堅・中小企業にとっては端末の導入/維持コストを考えると、積極的な導入には踏み切れないのが実情だ。また、こうしたモバイル端末経由で業務システムにアクセスするためにはシステム側がWeb対応しているか、あるいはモバイル端末向けに専用のクライアントアプリケーションを開発する必要がある。中堅・中小企業においてはWeb対応されていない業務システムも少なからず存在する。そのため、モバイル端末活用に要する初期コスト負担が期待される効果を上回ってしまうという課題もある。
その一方で、中堅・中小企業においても「自宅や外出先で社内と同じデスクトップ環境を実現したい」と考えるユーザ企業は少なくない。その背景にあるのは、ガバナンス強化やパンデミック対策といった大企業にみられる事由ではなく、個々の社員の生産性を向上させたいというニーズである。中堅・中小企業では、自ら現場に出向いて実業務をこなしつつ、部下の管理も担うプレイングマネージャが多く存在する。プレイングマネージャが帰社するまで各種申請の承認が下りないとなると、その分会社全体の効率が下がってしまう。こうした課題を抱えるユーザ企業の多くは安価になったノートPCにハードディスク暗号化などの情報漏洩対策を施した上で社外に持ち出すという選択をとっている。新たなモバイル端末の導入/管理や業務システムの変更が不要なため、中堅・中小企業にとってはノートPCが「業務を社外でこなすためのモバイル端末」の現実解なのである。
こうした状況を踏まえると、中堅・中小企業におけるスマートフォンやタブレット端末の活用は「社内に居ることの少ない経営層や管理職(特にITリテラシの低い場合)に対して、業績データなどを送って迅速な判断を仰ぐ」などの利用者を限定した用途や、「大量に持ち歩いていたカタログや契約書類を電子化して顧客に見せる」といったモバイル端末だけで完結できる用途が主体となり、全社員が通常業務で広く利用するといった状況にはなりにくいと予想される。
中堅・中小企業においてスマートフォンやタブレット端末の活用を広く普及させるためには、社員が個人で所有するモバイル端末を安全に業務用途で利用できる仕組みが必要となる。従来型の携帯電話においても、「届いたメールを自分が個人で所有する携帯電話に転送し、とりあえずメールの閲覧だけはできるようにしておく」といった運用をしていることが少なくない。これと同様に一般消費者向けに普及したスマートフォンやタブレット端末を企業用途に生かすことが、端末導入コストが負担となる中堅・中小企業にとっては有効な施策となる。
そのためには個人が利用する場合と企業用途で利用する場合とでシステム環境を完全に分離する必要がある。これを実現する手段として期待されるのがモバイル端末への仮想化技術の適用だ。VMwareの「Mobile Virtualization Platform」やCitrix Systemsが出資するOpen Kernel Labsを始め、Samsungもモバイル端末に広く採用されているARMアーキテクチャ上でXenを稼働させる取り組みを発表している。これらによって、個人が所有するスマートフォンやタブレット端末を安全に企業用途でも活用できるようになる可能性がある。だが、これが仮に可能になったとしても、実現までにはまだ年単位の時間が必要となる。まず、上記の取り組みはいずれもまだ初期段階である。また、モバイル端末にユーザが自力で仮想化ハイパバイザを組み込むことは難しいため、端末メーカや通信キャリアとの密接な協調が不可欠となる。そのため技術面とビジネス面の双方で時間をかけた調整が必要となってくるだろう。
ただし、モバイル端末が日常生活において存在感を増していくであろうことは間違いない。当面は上記に述べたように利用者や業務場面がある程度限られる形とはなるが、スマートフォンやタブレット端末の普及を見据えた新たなITソリューションの種を探しておくことが重要と考えられる。


4.「オンデマンドなアドホック分析」と「現場レベルでの可視化」がBIの潜在需要を喚起

大企業におけるBI市場ではデータの抽出/選別をストレージ側で行うOracleの「Oracle Exadata」や、インメモリで処理を行うSAPの「HANA」のように、キューブ作成が不要なリアルタイム分析を可能とするソリューションが注目を集めている。中堅・中小企業においては、DWHの構築やKPIの設定を行い、集計や分析の結果を経営判断に生かすといった取り組みそのものを必要と考えてこなかった経緯がある。ERPパッケージのオプションとして、比較的安価なBIツールを導入するというケースは多いが、これらはBIというよりは帳票の延長線としての色合いが濃いものとなっている。
だが厳しい経済環境の影響などもあり、中堅・中小企業にとっては売上拡大が難しい状況が今後も続くと予想される。そうした状況下では自社のパフォーマンスを緻密に把握し、細かな改善を積み上げることで収益を確保する取り組みが必要となる。実際、厳しい状況下においても業績改善を見込むユーザ企業はBIの重要性を認知している。導入率が1桁台であることも踏まえると、中堅・中小企業向けにBIの訴求を検討する価値は十分あると考えられる。その際に有効と考えられるソリューションが「オンデマンドなアドホック分析」と「現場レベルでの可視化」である。中堅・中小企業においてはDWHの構築はもちろん、KPIの設定を行うことが困難であることが少なくない。つまり、どんなデータを必要とし、何を指標として評価を行うべきかを事前に判断することができない状態といえる。そこで求められるのは「とりあえず全てのデータを対象とした分析を行い、色々な角度で眺めてみる」といったアドホックな分析アプローチである。冒頭で述べたように、大企業ではアプライアンスを主体としたリアルタイムかつアドホックな分析を可能とするソリューションが注目されている。同時に、メモリ容量やCPU性能の向上によって、ある程度のリアルタイム分析をソフトウェアで実現するものも登場してきている。QlikTechの「QlikView」などはその例だ。総勘定元帳データに直接アクセスし、様々な角度から視覚的にデータ分析を行うといった処理を中堅・中小企業でも許容できるコストで実現できる。ただし、いつ必要になるかもわからないアドホックな分析のために、新たな投資をするという決断を下すことも難しいだろう。ハードウェア投資もそれなりに必要となる。こうした課題を解決するために有効なのがクラウドだ。実際、QlikViewは東洋ビジネスエンジニアリングが提供するSaaSである「MCFrame online 原価管理」のオプション機能として採用されている。このようにアドホックな分析機能をSaaS形態で提供することにより、オンデマンド性を加えることできる。自社が抱える課題を手探りで見つけたい中堅・中小企業にとっては、こうした「オンデマンドなアドホック分析」が有効なソリューションといえるだろう。
もう一つのポイントは「現場レベルでの見える化」である。中堅・中小企業における業務の最適化は「長年現場で培った勘と経験」に依存していることが少なくない。だが、原材料費の大幅な変動や団塊世代の退職といったこれまで経験したことがない変化を踏まえて、中堅・中小企業は「現場で起きていることを可視化する」ことを求められている。つまり、全社レベルの経営判断だけでなく、現場レベルの問題発見の手段としてBIを活用することに対する潜在ニーズが存在している。富士通の子会社であるグロービアインターナショナルのERPである「glovia G2」はそうした「現場レベルの可視化」を意識した製品の一つである。製造現場で重要なパラメータ(特定の工程における進捗状況など)が閾値に達するとアラートで通知するなどの機能が備わっている。ITスキルが必ずしも高くない現場部門での可視化を実現するために「通知」という手法を採用した例といえるだろう。あるいはマイクロソフトの「Microsoft SQL Server 2008 R2」が備える「セルフサービスBI」はExcelという誰もが使い慣れたツールと組み合わせることで、集計/分析を行えるユーザの裾野を広げようとする取り組みである。BIはこれまで中堅・中小企業ではあまり注目されなかった分野であり、以下のグラフが示すように導入率も極めて低い状況になる。だが、経済環境変化などの外的要因とテクノロジの進歩が重なったことにより、これまで認識されていなかった潜在ニーズが今後顕在化してくる可能性がある。大企業との違いを踏まえ、中堅・中小企業のIT投資余力やITスキルレベルに見合ったソリューションを提供することが重要である。


5.クライアント環境の仮想化では業務アプリケーションも含めたサービス提供が必要

デスクトップやアプリケーションの仮想化はクライアント環境の運用管理コストを削減する手段として、大企業では着実に導入実績を伸ばしつつある。1.のプライベートクラウドに関する項目でも述べたように、今後はサーバとクライアント双方の環境において単なる仮想化から標準化や自動化へのステップアップが進むものと予想される。
一方、中堅・中小企業がクライアント環境に関して抱える最大の課題は情報漏洩である。マルウェア感染や社員の故意による情報漏洩のリスクは企業規模に関係なく存在する。そのため、クライアントPC台数と相関の強い運用管理コストよりも、情報漏洩防止を始めとするセキュリティ関連対策の方に高い関心が払われている。
クライアントPCのセキュリティを強化する施策としては依然として通常のクライアントPCに対策ソフトウェアを導入する手法が多くを占める。だが、「クライアントPC内にデータを置かない」という抜本的な対策のためにはシンクライアント専用端末の導入が効果的だ。しかし、中堅・中小企業ではサーバおよび専用端末の導入にかかるコストが負担となり、導入は容易ではない。そこで注目されるのがDaaSである。シンクライアントと同等のメリットを享受しつつ、サーバや専用端末の投資を回避することが可能となる。サービス提供価格も徐々に下がってきているため、セキュアなクライアント環境を必要とするユーザ企業の中には導入に踏み切るケースも出てくると予想される。その際に重要なのは、すぐに利用できる業務アプリケーションもサービスに含めて提供するということだ。単に仮想化されたデスクトップ環境を提供するだけでは、イメージ作成などの作業をユーザもしくは販社/SIerが行わなければならず、その面でのコストが障壁となる。そこで、中堅・中小企業で多く導入されている主要な業務アプリケーションをあらかじめ用意し、すぐに利用できる状態でサービスを提供する。日立情報システムズの「Dougubako」などはその例だ。業務アプリケーションも含めて手軽に利用できるDaaSがどれだけ登場するか?が中堅・中小企業においてデスクトップ仮想化が普及するかどうかを大きく左右すると予想される。もう一つ重要なトピックがアプリケーションの仮想化だ。古い業務アプリケーションやIE6を対象としたWebアプリケーションを維持しなければならないという理由でWindowsXPの利用を続けているケースは中堅・中小企業においても少なからず存在する。IE6でないと使えないシステムと、IE7以降を対象とすればレスポンスや使い勝手を改善でできるシステムを併用したい場合、デスクトップ仮想化だけではリソースの無駄使いや管理負担の増加が生じる可能性がある。アプリケーション仮想化のソリューションはVMwareの「ThinApp」、Microsoftの「App-V」、Symantecの「Symantec Workspace Streaming」などが既に存在するが、現時点では大企業による導入が中心だ。上記の「業務アプリケーションも含めた提供」の一環として、レガシーな業務アプリケーションをアプリケーション仮想化によって延命させることができれば、中堅・中小企業がクライアント環境の仮想化に取り組む敷居をさらに下げることができると期待される。


6.クラウドによる構造変化だけでなく、海外展開に伴う委託先の変更にも注意すべき

大企業と同様に中堅・中小企業においても海外展開への機運が高まっている。特に最近では従来から海外拠点での製造に積極的に取り組む製造業だけでなく、新たな市場開拓を進める卸売業といった他業種も海外展開への意欲を見せている。旧来は大企業による海外展開に追随する動きが少なくなかったが、昨今では国内市場の縮小を懸念して新たな市場を開拓するといった自発的な取り組みが目立つのが特徴だ。展開先としては市場のポテンシャルを期待して、中国を挙げるユーザ企業が最も多い。
中堅・中小企業は新たなIT活用を検討する際、既存の販社/SIerによる提案や助言を重視する傾向が強い。この傾向は海外展開を検討する際においても変わらないのだが、その割合は徐々に下がりつつある。つまり、海外展開という命題に関しては「既存の販社/SIerへの依存度」が今後下がり、委託先の変更が起きやすくなる可能性があるといえる。海外展開は国内でのIT活用とは大きく異なるノウハウを必要とする。中堅・中小企業もそのことを認識し、冷静にパートナを選ぼうとしている傾向がうかがえる。
今後、IT活用における委託先の変更や業務システムの刷新を喚起するものとしては、クラウドのような所有から利用への変化やIFRSのような法制度対応が挙げられることが多い。クラウドについては中長期的には大きな変化をもたらすが、中堅・中小企業が既存の業務システムを無理なくクラウド移行できるようになるにはまだ時間がかかる。IFRSについても会計システムは既に導入率が高く、既存システムがIFRSに対応しさえすれば敢えて刷新をする必要はない。むしろ、海外展開に取り組む時の方がユーザ企業に求められる変化は大きい。海外拠点も含めた業務システム活用を考えれば、多少コストをかけてもクラウドを選択すべき場合もある。複数の会計基準や商習慣に対応するためであれば、会計システムの刷新も必要になる。ここでの販社/SIerの役割は単にモノを提供するだけでなく、異なる商習慣を踏まえた「多基準対応」をビジネス面で支援する役割が求められる。
このように海外展開はクラウド活用や会計システム刷新へと繋がるトリガーでもあり、その過程で委託先の変更が発生する可能性も十分考えられる。販社/SIerとしてはクラウドによる緩やかな構造変化だけでなく、海外展開によるシステム刷新や委託先変更が起きる可能性についても注意を払うべきである。


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