話題作から名作までを試聴して音質面をチェック

 まさにいいことずくめの「トップマウント構造」だが、ではどんな音を聴くことができるのか。話題作から名作までを試聴して音質面をチェックしていきたい。

CD今回試聴したCD。
最新のアルバムから名盤までを「HA-FXC71」と「HA-FXC51」のそれぞれで聴いてみた。

『HA-FXC71』と『HA-FXC51』でジャミロクワイを試聴

 まずはジャミロクワイの約5年ぶりとなるアルバム『ロック・ダスト・ライト・スター』から、シングルとなった「ホワイト・ナックル・ライド」を『HA-FXC71』で聴いた。まさにジャミロクワイなスムースかつ躍動感あふれるトラックなのだが、徐々に音が高まっていくイントロからクリアな音場が広がり、そこに音が満たされたと同時にジェイ・ケイのおなじみのハイトーン・ボイスが飛び出してくるが、そのリアルな歌声にまずハッとさせられる。ドキドキするほど近く感じられて、まるでアリーナの一列目で観ているかのような臨場感。アクセントとなっているシンセの音色が微妙に変化していく様子や、曲全体を支えるベースの震え、確かにリズムを刻むドラムの位置感覚も混在することなく、各パートがどのあたりで演奏しているのかがはっきりと感じ取ることができる。澄み切ってみずみずしい音の空気の中を伸びやかな高域が貫いていき、厚みがあってまろやかな低域が全体をソフトに覆っているような印象だ。中高域も低域の量も過不足なく、バランスもとてもよい。
一方、『HA-FXC51』はより高域と低域がはっきりとした印象を抱いたが、中域のボリューム感もまずまずあり、ドンシャリという感じはあまりしない。グルーヴ感重視のサウンドを好む人ならば『HA-FXC51』の躍動感あふれる音質再生もきっと気に入るはずだ。

シンセサイザーなどエレクトリックな音はどうか

 続いてはエレクトリックなものを。ペット・ショップ・ボーイズのベスト盤『究極のペット・ショップ・ボーイズ』から、彼らの名前を一気に世界へと広げた80'sクラシックの「ウエスト・エンド・ガールズ」を聴いた。シンセを主体としたいわゆる80'sサウンドの代表的な曲で、非常に軽いタッチで聴こえるのだが、リマスター音源ということを加味したとしても、今まで何度となく聴いてきたこの曲がまるで現在のサウンドのように鮮明かつ力強く鳴らされていることに驚かされた。軽さの象徴だった乾ききったドラムのビートにはうるおいが感じられ、控えめがちだったシンセベースが「オレだよ、主役は」とばかりに前へと出てきている。リアルタイムで聴いていた人にとっては、あの軽さはどこにいってしまったのかとさびしくなってしまうほど。逆にレディ・ガガをはじめとしてペット・ショップ・ボーイズへのリスペクトが高まり再評価されているので、若いリスナーには『HA-FXC71』を通してのサウンドが“今”を感じさせると思う。
『HA-FXC51』ではより低域に主張が感じられて、全体的にパワフルに鳴っている印象を抱いた。ジャミロクワイ同様にダンス・ミュージック寄りの音楽を得意としていることを再認識した。

クラプトンの声が臨場感を持って再現

 アコースティックな音も試したい。エリック・クラプトンがジャズを彼なりに解釈した『クラプトン』から、数々のジャズ・ジャイアンツたちが取り上げてきた「枯葉」を聴いた。
イントロのピアノの艶やかさをはっきりと浮かび上がらせ、まるで熟成したような弦の響きは深い余韻を加えた実に雰囲気のある再生力だ。加えてクラプトンの年輪を刻んだ歌声はまるでテーブル越しに聴いているかのような臨場感。席数のそう多くはないジャズ・クラブで演奏されている光景が目に浮かぶ。高解像度ではあるが、すべての照明がつけられたような白けた明るさではない。あくまでも曲の雰囲気を壊すことなく、見通せるくらいのクリアさだ。ゆったりとリッチな低域はじわじわと広がっていく感じで、ふくよかな音像を形成していく。
『HA-FXC51』で聴いてみると、その音像はさらに広がった印象を受ける。低域の層が厚めになり、全体的にボリューム感が出た。一方でクリアさは少し後退している。

トリオ・ジャズも鮮明に再現

 「枯葉」つながりで、ビル・エヴァンス・トリオの『ポートレイト・イン・ジャズ』をもちろん「枯葉」で聴いてみた。やはりピアノの音色はヴィヴィッドで、気品高く聴こえる。
しかし特筆すべきはスコット・ラファロによるウッドベース。ソロ・パートの弦がうごめく様子をまるでフル・ハイヴィジョンのように高精細で生き生きとして捉えている。何度かほかのインナーイヤータイプでも試聴しているが、この鮮明感は体験したことがない。定位感もはっきりとしていて、ヘッドホンならではのダイナミズムも感じられる。一方、『HA-FXC51』は高域と低域が互いを引き立てるように伸びていき、躍動感をアピール。一体感のある鳴りを楽しむことができた。

クラシックは音色の輝きまでが再現

 最後にカラヤンの最後の来日公演を収めた『ラスト・コンサート1988』から終盤の「ブラームス交響曲第1番:第3楽章」を取り上げたい。優雅にたゆたうように流れ出す弦楽器のアンサンブルが中盤にいたって表情を変えて、力強く絶えず表情を変えていく様子をクリアに描き出していくあたりは感動の一言。空間の広がり、音色の輝き、レスポンスともに申し分ない。ビクターが掲げる「原音探究」の理念を言葉ではなく、音で感じる瞬間が何度となく訪れた。『HA-FXC51』では響きが増したような感じで、『HA-FXC71』が指揮台の側だとしたら、コンサートホールの最上席で座って聴いているような印象を受ける。このあたりの音のニュアンスの違いを取り替えて楽しんでみるのもおもしろいだろう。

製品スペック紹介
HA-FXC71

再生周波数帯域:8Hz〜25,000Hz
質量:6.2g(コード含まず)
コード:1.2m(Y型)、φ3.5mm 24金メッキステレオミニプラグ付
付属品:シリコンイヤーピースS、M、L 各2個、 コードキーパー、クリップ、キャリングポーチ

詳細はこちら

HA-FXC51

再生周波数帯域:10Hz〜24,000Hz
質量:4.4g(コード含まず)
コード:1.2m(Y型)、φ3.5mm 24金メッキステレオミニプラグ付
付属品:シリコンイヤーピースS、M、L 各2個、 コードキーパー、クリップ、キャリングポーチ

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著者プロフィール
油納将志

洋楽を中心に執筆している音楽ライター。音を聴くという仕事柄、ヘッドホンをはじめとするオーディオ機器にも関心が深く、デジタルグッズ系雑誌でオーディオに関する記事も書いている。

提供:日本ビクター株式会社
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