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東芝が「医療」に挑戦する理由血液一滴のがん検査やゲノム解析の
要素技術が切り拓く未来

ゲノム情報は「未来の誰か」のためになる

中村さんがお話された、ゲノム情報や健診結果をデータベース化するという事業はかなり壮大なプロジェクトですね。

中村氏 そのデータベースを元に分析することで、将来的には、あなたはこういった疾病のリスクがあるので、こういう生活習慣にしていくと予防できますよ、健康的に長生きできますよ、とアドバイスすることが可能になります。また、自分に効く薬を効く量だけ服用することも可能になってくると思います。もちろん東芝グループの従業員だけではデータとしては十分ではありません。同じ日本人という民族で、データの母数を増やしていった方が予測精度は向上していきますので、将来的には東芝だけじゃなく、多くの企業様にこういった取り組みを広げられると良いと思っています。


山口氏 データを集めて解析し、疾病リスクをある程度算出することは東芝としてできたとしても、その先、データを提供していただいた方1人1人が健康に暮らせるようなソリューションを提供しようとすると、やはり私たちだけではパワーが足りません。そこでヘルスケアに関わる多くの企業様とどのようにパートナーシップを結んでいくかが重要になります。ただそこには、まだまだ課題があります。例えば、クルマという便利なものを活かそうとしたとき、車自体の安全性だけでなく、道路と安全に車が通れるような交通ルールが必要です。そうしたインフラが整ってくると周辺にお店ができ、町が出来上がります。今回の取組では、集まったデータを安全に保管することは大前提ですが、データを活用していくためにデータが安全に流れるシステム構築と法規制対応をしっかり行い、データ提供者とパートナー企業が安心して利活用できるヘルスケアインフラを構築しないと、ヘルスケア産業自体が大きくなっていかないと思っています。関係省庁やアカデミア、企業などと連携しながら、ヘルスケア産業をどう発展させていくかが自分にとってのやりがいでもあり、難しさでもあります。

ゲノムや健診結果のデータは、みなさん進んで提供してくれるのでしょうか。

山口 今は医療に貢献したいというボランティア精神で多くの方からデータを提供頂いています。また、自身の健康増進につながる適切な情報など、何かしらの見返りがあるなら提供しますよ、という方もいらっしゃいます。ふるさと納税でも、地域を応援したいという気持ちで税金を納める人もいれば、返礼品が目的の方もいると思います。動機は違っても地域の活性化に繋がるという点では貢献度は同じです。今回の取組みでも、今はボランティアで提供していただける方を募集していますが、いずれはいろいろな動機に答えられるように、データを提供してくださった方に何らかの形で還元できるようにしたいです。それが結果的に医療貢献や1人1人が健康的に暮らせる社会の実現に繋がると思っています。

最近は自動車保険や健康保険で、利用者が事故防止や健康増進につながる活動をすると割引やポイントがもらえるような仕組みも登場していますよね。

米澤氏 インセンティブには2種類あると思っています。自分自身が健康になったり、ポイントなどがもらえたりして直接的に利益が返ってくるものと、健康診断などの自分のデータがどこかの誰かのためになる、というものです。

 私自身がデータ提供の同意書にサインしたとき、自分のデータが他の多くの人の健康や予防医療のためになると思うと、すごく世の中の役に立っている感じがありました。自分たちが生きているときのデータが、次の世代、次の次の世代の医療における財産になると考えると納得しやすくて、私のデータをぜひどんどん使ってくださいという気持ちになりました。

「あなたの子供が今よりもっと進んだ治療を受けられるようになりますよ」という考え方ですね。

山口氏 例えばアメリカですと、難病や希少疾患患者は、自分の情報をオープンにして治験を探したり、情報を共有したりします。日本人は気質もあるかもしれないのですが、あまりオープンにはしません。

 指定難病や、病名がまだついていないような疾患で苦しんでいる方々は日本にもたくさんいらっしゃいます。遺伝子解析で原因を突き止め、治療法を開発するには相当なデータ数と時間が必要ですし、それが可能になるのは次の世代かもしれないし、さらにその次の世代かもしれません。今身近にいる人にすぐに貢献できないかもしれませんが、提供したデータがどこかの誰かにいつか役に立つときが来る、という思想に共感頂いた方々がデータ提供に同意してくださっています。

がんの早期発見につながる技術の可能性と課題

がんの早期発見や治療に貢献する要素技術への取り組みについても教えていただけますか。

米澤氏 私達の精密医療に関わる取り組みは大きく2つに分けられます。目指しているのは健康寿命の延伸で、それに向けた取り組みの1つがジャポニカアレイ®による予防、もう1つがマイクロRNAを使ったがんの早期発見から治療へ、という流れです。がんを早期発見するための技術は他にもいくつかありますが、マイクロRNAを用いるものはそのうちの1つとして間違いなく有力な技術だと考えています。

 がんを早期に発見できるようになると、いろいろな治療の手段が生まれます。手術、化学療法、放射線療法、免疫療法などがありますが、東芝としては放射線療法の1つとしてすでに事業化している重粒子線治療装置の他に、免疫療法の一種である遺伝子治療にもフォーカスしています。

 これを実現するのが生分解性リポソームで、今後もこの技術開発を進めてさまざまな治療手段を提供できるようになれば、がんの患者さんや、がん検査を受けられる方が、自分に最も適した治療を選べるようになると考えています。

がん以外の病気の早期発見もできるようになるのでしょうか。

米澤氏 私たちの技術は、がんになったとき、血液中に増える特定のマイクロRNAを検出するものです。今のところこれはがんの発見のみに使えるものとなっています。ただし、いくつかの他の病気にかかったときにも特殊なマイクロRNAが分泌されることが研究レベルではわかってきています。同じ技術を応用して、がん以外の病気も素早く見つけられるだろうという仮説をすでに持っていますので、その研究開発も継続していきます。

血液一滴でがん検査ができる技術は、早期発見につながる一方で懸念もあるとされています。陽性反応を示しても実際には治療の必要がないケースだったり、具体的ながんの場所がわかりにくく、再検査に手間がかかって医療機関や本人にとってはかえってストレスになるなどですね。この点についてはどのようにお考えですか。

米澤氏 2020年度に実証実験を行う計画で、そこでしっかり確認、検討しなくてはいけないと思っている項目がいくつかあります。1つは、がん種を特定できないという問題です。今は13種類のがんを検出できるとしていますが、13種類のがんのうち、どのがんになっているか、はわかりません。さらに13種類以外のがんも検出してしまうかもしれません。

 また「ステージ0」から検知してしまうことも問題です。従来の画像診断では判明しなかったようながんも見つけてしまうことがあります。この手法では、診断の正確さを評価する指標「AUC」は0.99となっています。見逃し・誤報が100人に1人あるということで、可能性は非常に低いですが、ゼロではありません。診断の結果ステージ0の可能性もあると言われ、何度も検査した結果、実際は擬陽性、つまり本当はがんではなかったという可能性もあるわけです。

それは難しい問題ですね。

米澤氏 診断で陽性となった方へ、どのように情報をお返しするか、あるいはどういう追加の検査をご案内すべきかといったバックアップやフォローの方法・体制を考える必要があります。専門家の方々に相談しながら、まずは適切な検査結果をどのようにお伝えするかということを確立していきます。


 先日、2月4日はWorld Cancer Day(世界対がんデー)で、関連するイベントに私も参加しました。そこではがんサバイバーの方、現在がん治療中の方が登壇されてお話をされていたのですが、がんという病気は、告知を受けた時点ですごくいろんな情報が欲しくなるそうです。

 健常者の方で、がんに関心が高い方はそこまで多くないと思います。ですが、がんだと告知された瞬間に、どうしたらいいのかと戸惑って、とにかくたくさんの情報が欲しくなるそうなのです。そこで医学的に正しくない情報をつかんでしまうリスクもあります。

 そうした場面では、患者の方に対する精神的なケアと正しい情報の届け方が課題になってきます。ですから実証実験では、医師の方々ともお話ししながら、どのようにして情報をお返しするのがいいのかも検証する予定です。

提供:株式会社 東芝
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2020年9月30日

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