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視力への影響は?眼の疲れは?ユーザーへの配慮も十分な東芝メガネ型ウェアラブルデバイス「Wearvue」

15分間「Wearvue」で小説を読ませたら疲れる?

 まず1つめの実験として行なわれたのは、連続して「Wearvue」の表示を見た時の疲労について評価した。具体的には「Wearvue」の投影部に表示される小説を読んだ時と、紙に印刷された文字を読んだ時の疲れ方の差を見た実験だ。

 「Wearvueの画面だけ見るようにというような指示はしませんが、カーソル操作により自分で行送りの操作をしながら小説を読んでもらうので、自然と画面表示を注視する形になります」と永谷氏は実験について語る。

 Wearvueは今のところ、作業時にマニュアルを表示する、遠隔サポートを行なうといった使い方を想定している。Wearvueの表示する虚像とメガネ越しに見る実像を見比べたり、見る場所を切り替えたりしながら使うイメージであって、Wearvueの虚像だけを見つめつづけるという使い方は想定外の使い方だが、連続的に集中して見た場合にどれだけ疲れるのかというある意味Wearvueにとって厳しい実験だ。

 「自覚的疲労度を聞いた主観評価であるSSQの結果は、紙媒体で小説を読んだ時とWearvueで読んだ時とでほとんど差はありませんでした。同様に、客観評価である両眼波面装置で検査した結果にもほとんど差がありませんでした。厳密に診ると主観評価で紙媒体よりも少しだけWearvueの方が疲れがあるという結果でしたが、これはVDTと同じ程度です」と永谷氏。

 VDT(PCでの作業等)と同程度という結果だが、ユーザーにとってより身近なスマートフォンと比べた場合にどうなのかというと、スマートフォンの方が疲れるはずだという。

 「スマートフォンとWearvueには似ている部分と違う部分があります。似ているのは、両方とも片目で見ていることになりやすいことです。Wearvueは片眼にのみ映像を見せますが、スマートフォンも画面が小さいことから片目で見ていることがよくあります。そして違うところは、スマートフォンはうつむき気味の不自然な姿勢で使うことになり、画面が小さいせいで文字等も小さく表示されます。Wearvueは正面に大きく表示されるため、自然な姿勢で楽に見ることができます」と不二門氏。

 スマートフォンを見続けるよりは疲れず、PCで画面を見続けるのとあまり変わらない程度の疲れ具合だと考えると素人にもわかりやすい基準になりそうだ。


写真は実験の様子 大阪大学大学院 医学系研究科 不二門教授監修

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「Wearvue」の映像と実背景や手元を繰り返し見る作業は疲れる?

 2つめの実験は、先に述べたような実務での利用を想定したものだ。具体的には「Wearvue」を身につけた状態で3m離れた位置に置かれた実媒体に書かれている内容に対し「Wearvue」の画面に表示される質問内容を読み取り、実媒体の記載内容をを確認してから手元の回答用紙に書き込むという作業を45分間継続して行なった。

 「タブレット端末で質問された場合とWearvueで質問された場合で比較すると、SSQでは少し疲れがあるという結果が出ました。参考までに、その程度は3D映像の結果よりはマイルドで収まっていた。客観評価では差異が無く、有意差もありませんでした。つまり、眼精疲労の心配はないが人により軽度の眼疲労の可能性はあると言うことです。ただ、Wearvueをつけての作業は初めてですから、慣れによって改善されるとも期待できますし、若く対応力のある被験者からはタブレットよりも楽だという感想も出ました」と永谷氏は語る。 従来のタブレットで指示を確認してから作業する場では背景と手元を見る繰り返しになり顔ごと動く様な大きな視線移動を伴ったわけだが、「Wearvue」を使った場合はわずかな視線のみの移動で済むことになる。利用者が慣れれば、タブレットでの作業より楽に作業できるようになる可能性も高そうだ。

 医師の立場からの見解として不二門氏は「主観的に少し疲れただけで、眼疲労はあっても眼精疲労になる心配はない。近視になる、視力が落ちるといったこともない。少しの疲れといっても休息で回復するものですし、作業ならば定期的な休憩があるはずですから実用には問題がないと考えられます」と語った。

発売後も継続的に実験を実施予定

 2つの実験のうち、実作業を想定した2つめの実験は今回販売される量産機を使って行なわれたものだ。現場での運用に近い形で出荷同等品が使われた実験の結果に、導入検討企業は安心できるだろう。

 「販売時には取扱説明書に連続作業時間等についての注意事項は記載します。また、今回は短時間の実験ですが、より長く使い続けた時はどうなるかということも継続的に検証していこうと考えています」と金子氏。今後は現場での使われ方に合わせた実験なども行なって行く予定だという。

 健康な眼の視力が落ちることはないということだが、すでに眼が悪い人の場合はどうなのかということにも回答をもらった。「左右の視力バランスが悪い人にはWearvueが見づらい部分もありますが、矯正して視力が揃えば問題なく使えます。また普段から矯正している人は左右で違うものを見ている状態の調整能力が高くなっているのか、元の視力がよい人よりも見やすいという傾向もあったようです」と不二門氏。コンタクトレンズ派には全く問題がなさそうだ。

 もちろん、メガネ利用者のことも考えられており、第2弾として普段のメガネをかけたまま上から被せて利用できるオーバーグラス型の開発も始まっているという。

 「人間の眼は左右で横方向にずれのある見え方を調整する能力よりも縦方向にずれのある見え方の調整能力の方が低く、上下にずれると違和感が強く出ます。両眼で見るグラス型のものを作る時には、表示位置をぴったり合わせる必要があります」と不二門氏は語る。東芝では今はメガネ型ウェアラブルデバイスを業務シーンに展開することに注力しているが、将来的には両眼で見られるエンターテインメント利用なども含めたコンシューマーモデルを展開する可能性もあるという。実現の折には、また不二門氏の協力のもと、あらたな評価実験が行なわれるのだろう。

 利用者の感覚的な評価だけではなく医学的な裏付けのある評価によって安全性を正しく伝えた上で販売を行ないたいという東芝の考えが反映された「Wearvue」。安全性を重視したい日本企業にとっては魅力的な製品といえそうだ。


左から
東芝 研究開発統括部 マーケティング戦略室 金子氏
大阪大学大学院教授 不二門氏
東芝 研究開発センター マルチメディアラボラトリー 永谷氏

提供:株式会社東芝
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2016年7月31日