丸山氏は「中小企業ではIT導入のメリットを実感できていない」ことが背景にあると話す。見えていないものに投資しリスクを取りに行く気がない、新しいものに興味がわかないという意識が変らない限り、IT導入は進まないというのだ。これを解消するためにはコンサルタントの活用などを通じた知識の収集が欠かせないが、その費用すら「もったいない」と考えてしまう現実、中小企業を対象としたコンサルタントそのものが少ない事も理由だという。
さらに丸山氏は「中小企業では、いわゆるプロダクトアウトの思想に傾きがちなのではないか」とも指摘する。「新しい技術を、どのようなビジネスに活かせるかを考えるとき、製品よりの見方になるのはわかる。とはいえ、マーケットイン、つまりマーケットではどういうニーズがあるのかということを念頭に置かなければならない。プロダクトアウトとマーケットイン、この双方をいったりきたりしながら、方向性を決定していくことが重要だろう」と提言する。
新たな技術は日々、進化を継続している。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末は、そのいい例だ。「中小企業こそ、いちはやくこれら技術革新の成果を取り入れるべきだろう。新しいものをリスクを意識して果敢に採用するような元気な会社が大きく伸長できる」と丸山氏。ただ「サプライチェーンに組み込まれてる中小企業の場合、その大元の大企業からのコントロールがきつくなっているのは、気になる」という。
丸山氏は政策面についても提言している。
「今後、政府機関などは、もうすこし、業種のセグメンテーションを考慮した方策を打ち出していくべきなのではないか。中小企業に対するIT促進、支援といっても、一概にはいえない。従来、中小企業の定義は従業員数の大小により決められてきている。もちろん、それにも意味はあるが、単に従業員数だけで判断していては、見落とされることがある。従業員数が同じくらいであっても、IT関連のベンチャーと、金型や工作機械を扱うところでは、事情はまったく異なってくる」からだ。
東日本大震災発生から半年が経過し、国内経済全体は、徐々に「震災以前」へと戻り始めているが、中小企業を取り巻く環境は決して穏やかではない。IT活用の進展は、中小企業自体が意識変革することが重要ではあるが、さらに踏み込んだ国や地方自治体などからの支援が必要かもしれない。
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