ほんの少し、スマートフォンに光が見えてきた2005年の終りに登場したのが、ウィルコムの「W-ZERO3」だ。大型で高解像度のタッチパネルディスプレイ、スライド式で現れるQWERTYキーボードという特異な外見の端末に搭載されていたのが「Windows Mobile」。音声通話はもちろん、ウィルコムのメールを自動受信することもでき、安価な定額プランにも対応する。ようやく登場した、ユーザーが頑張らなくても使うことができるスマートフォンだった。
ユーザーの熱狂ぶりは、先日発売された「iPhone」にも劣らないものだった。予約者も多く、発売日には冬空の下で徹夜する人も見られた。
日本で長く「ザウルス」を開発してきたシャープのノウハウが詰め込まれた端末はもちろん、OSに「Windows Mobile」が採用されたことで、その前身である「Windows CE」や「Pocket PC」用に開発されたさまざまなアプリケーションがそのまま使えるというのも魅力になった。欲しいと思っていた人が無理なく購入できる、普通の人が普通に使えるスマートフォンがやってきた瞬間だった。
「W-ZERO3」はスマートフォンブームを生み出した。しかし、まだ一般化したわけではなかった。携帯電話と呼ぶには大きく重い端末だったことや、ビジネス向けの黒いシンプルな端末がユーザーを限定した。
しかし、このブームに乗るように携帯各社からもスマートフォンが登場した。2006年には、htcの「HTC TyTn」をベースにした端末として、7月にドコモが法人向け端末「hTc Z」を、10月にはソフトバンクモバイルが個人向け端末「SoftBank X01HT」を発売した。その後、両社ともに順調にラインアップを拡充している。
また、ウィルコムでも端末の小型化や多機能化などを重ねて「W-ZERO3シリーズ」として販売。さらに、新規携帯事業者として登場したイーモバイルからは、音声通話サービス開始と同時に「EMONSTER」が登場した。最後に残ったauからも2009年春にはWindows Mobile搭載端末を発売すると発表された。
端末のためにキャリアを乗り換えるほどのマニアでなくとも、気軽に「いろいろなことができるケータイ」として楽しむことができるようになってきた。