では、こうして登場してきたウイルス作成のプロとは、どんな人達なのだろうか。具体的に居住している場所まで特定できないが、インターネット上の痕跡から、いくつかのグループが存在するといわれている。
実際にウイルスを作成する者は、インターネットを介して相互にコミュニケーションを保ちつつ技量を上げていくため、その過程でこのようないくつかのグループができあがる。これが「組織化」だ。
そうして生まれた新しいウイルスは「高度化」している。素人が興味本位で作るウイルスとは構造や性能の面で大きく異なるのだ。そして、OSやデータベースの脆弱性を攻撃するウイルスが早期に作られるのは、組織化された背景こそである。脆弱性を攻撃する機能、配付する仕組み、情報(IDやパスワード)を収集する仕組み――など、ある種の分業体制ができ上がっているのだ。
こうして作られたウイルスは、今度はネット犯罪集団に流れていく。新種のウイルスを検知する仕組みは、インターネットの要所にある。先ほどウイルスを作成するのは容易であると書いたが、作成したウイルスをどこで感染させ、拡散させるかの方が難しい。これに失敗すると、拡大する前に対処され、場合によっては逮捕されることになるからだ。これを逃れるため、作成された新しいウイルスの配布は専門のネット犯罪集団が担当するのだ。
このネット犯罪集団は、自らが捕まらないようにインターネットのセキュリティ体制が弱い国を経由しつつ、既存のインターネットの仕組みを悪用して現金化していく。ホームページを改ざんして偽の金融機関のホームページを作り、フィッシングサイトに誘導させてIDとパスワードを盗んだり、ウイルスを送り込んでPCの情報を引き出していく。
ネット犯罪集団が関与したウイルスは現金化という明確な目的があるため、無差別に広めるだけでなく、最近ではある程度ターゲットを絞って攻撃してくるのも特徴だ。
このようにインターネットで利用できるサービスを複合的に組み合わせた結果、最大効果を狙った「複合化」が起こる。現在は、このような形態でウイルスが使われており、ユーザーは対策が必須だ。昔のように、音をならして驚かすような派手なことはせず、黙ってIDやパスワードを盗んでいくのだ。
ジャストシステムから発売されたセキュリティソフト「カスペルスキー インターネット セキュリティ 2009」は、2年前に発売された同6.0、昨年発売された同7.0に続く製品で、ジャストシステムから販売されるようになって3作目となる製品だ。今回は特に高速化、性能強化が図られており、新たなウイルスへの迅速な対応や、急増するフィッシングサイト対策も行われている。
ウイルスの脅威については認識したものの、では具体的にどう対策を行えばいいのか? 普段のウイルス対策で間違えがちなポイントをピックアップして解説してみたい。実際にユーザーが行える最も効果的なウイルス対策はウイルス対策ソフトの導入だ。ここではセキュリティーベンダーであるジャストシステムの「Kaspersky Internet Security 2009」担当者に話を聞いた。