マーケティングオートメーション(MA)を成功させるには「顧客との適切なコミュニケーション」にどのようなコンテンツを活用するかが重要となる。そこで注目を集めているのが、Webでの情報発信を通じて見込み顧客を獲得、育成し購買へつなげる施策、コンテンツマーケティングである。宗像淳氏が代表取締役社長として率いるイノーバは、150社以上の顧客のコンテンツマーケティング実践を戦略立案から制作まで支援するとともに、その運用に適したソフトウェア「Cloud CMO」を自社開発・提供する企業だ。同氏によるセッション「マーケティングオートメーションを活かすコンテンツ戦略の実践事例」では、デジタル時代の顧客コミュニケーション戦略というテーマのもと、コンテンツとデータを活用した同社の取り組みが実践事例として紹介された。
セッション冒頭、宗像氏は次のように指摘する。「米国では既にInside Sales(内勤型営業)への営業リソースのシフトが顕著に進んでおり、今後もその傾向は持続すると予測されている。こうした営業スタイルの変化はアメリカだから起きているのではない。ビジネス環境の変化に伴って起きているのだ」
ビジネス環境の大きな変化の1つが、インターネットの普及である。ネットが普及し顧客の情報リテラシーが上がったために、顧客が自力で情報を集めて製品購入の意思決定プロセスを進めるようになっているのだ。そのため、顧客のもとに出向く営業担当者は、旧来のような製品説明が難しくなってきている。営業担当者と会うよりも、顧客はむしろWebやメール、電話での説明を求める傾向が強まっているのである。
「このようにビジネス環境が大きく変化したことで、"問い合わせ以上、訪問未満"の営業活動へのニーズが高まっている。そのため、どうやって顧客にアプローチし、接点をつくっていくかが課題となっているのだ」(宗像氏)
こうした背景を受けて、企業の情報発信のあり方にも変化が起きている。顧客が自分で情報を調べて購入の意思決定をするようになったので、顧客にWeb検索等でいかに自社の情報を「見つけてもらうか」を重視する企業が急速に増えているのである。そこで、企業が自分たちの商品に関連するテーマをコンテンツにして積極的に発信するようになりつつあるのだ。
「"MAの導入=ITシステムの導入"ではない。ITはサポートする役割でしかない点を忘れてはならない」と訴えた宗像氏は、同社顧客の事例を紹介。1社目の株式会社デジタルスタジオでは、戦略的なメルマガ配信やインサイドセールスの仕組みにより段階的に顧客を育てることを実践している。また、もう一つの事例、株式会社セールスフォース・ドットコムでは、自社コンテンツサイトの運用により初めて訪れた方にも自社製品の魅力を伝え、興味喚起することに成功しているという。
「コンテンツを充実させ、見込み客を集めてアプローチする仕組みをつくっておくことは、MAを実践するうえで極めて有効となる。営業担当者は本当に顧客のためになるような付加価値型の提案に集中できるようになり、生産性も約3倍にまで向上できるだろう。それこそが、MAの最大の魅力なのではないか」──宗像氏はこう会場に向けて訴えかけ、セッションの幕を閉じた。
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