第3のLEDバックライト方式採用「S-LED」搭載 日立Wooo ZP05シリーズの高画質を検証する
薄型テレビは各メーカーが横並びの時代から、独自の機能を競い合う個性の時代に入った。アジアのメーカーに対抗して、日本メーカーが独自の高付加価値を競う時代に突入したのだ。こうした状況の中で日立から新しい個性派テレビが登場した。それがWooo ZP05シリーズに搭載された新方式の「S-LED(スリムブロックLEDパネル)」である。『光を支配し、黒を制した』「S-LED」は画期的な高画質を実現しているという。日立開発陣のインタビューを交えて、「S-LED」の仕組みと実力、そして、テレビ作りの戦略を検証してみよう。
「当社はプラズマテレビと液晶テレビの両方を手がけていて、双方ともに高画質化を図っていますが、今までの液晶テレビの画質には、どうしても超えられない壁がありました。液晶の黒の表現力に限界があり”どうしても出せない黒”があったのです。その壁をブレイクスルーするために、まったく新しい方式のLEDバックライトを創造し、”光を支配”することで、今までにない表現力をものにしたい、というのが「S-LED」開発の狙いです」(日立コンシューマエレクトロニクス 鈴木氏)
こうしたコンセプトの元に開発された日立独自のLEDバックライトが「S-LED」である。
この「S-LED」を搭載した日立コンシューマーエレクトロニクスの液晶テレビ「<S-LED>Wooo ZP05シリーズ」が発表された。ZP05シリーズは、Woooの最上位モデルとして追加されたシリーズで、ラインアップは、37V型のL37-ZP05と、42V型のL42-ZP05となっている。
(鈴木氏)
「液晶の画質を変えるには、発光のエリアコントロール(部分的に発光を制御すること)で部分的に階調を表現できる方式であること。しかも省エネを実現できる新方式のバックライトが必要で、それが「S-LED」なのです」
自らが発光しない液晶パネルは、液晶の画素を透過するなんらかのバックライト(光源)が必須になる。鈴木氏の言うように、一般的に液晶ではこのバックライトの光漏れ(黒浮き)が大きな課題と言えるだろう。特に暗い部屋で見ると黒浮きが目立つシーンが多い。
省エネの観点から、従来のCCFL(冷陰極管=蛍光灯のような発光管)バックライトよりも消費電力の低いLED(発光ダイオード)バックライトがトレンドとなっている。従来のLEDバックライトの方式は「エッジ型」と「直下型」があり、ここで構造を簡単に紹介する。
エッジ型LEDバックライトは、画面の端にLEDを配置し、その光をアクリルなどの導光板(光を反射、拡散させる板)で画面全体に広げる方式である。従来のCCFLをLEDに置き換えた方式といえ、導光板が大型で常時点灯しているため、光漏れによる黒浮きを完全に防ぐことはできず、黒の表現力はCCFLとほぼ同等といえる。(イメージ図)
直下型LEDバックライトは、画面の直下に画素のようにLEDを縦横に敷き詰める方式だ。細かいエリアコントロールがしやすい点が最大のメリット。各LEDに境目がなく、光を均一に全体に広げるために、比較的多くのLEDを使う。(イメージ図)
「S-LED」は今までにない”第三のLEDバックライト”といえる新方式で、エッジ型を小型にして、それを画面に敷き詰めた構造を採用。映像の根源となる「光」を精緻に部分制御し、高いコントラストを表現することで、画期的な高画質を実現し、同時に省エネも実現している。
「S-LED」は、小型のエッジ型導光板をタイル状に敷き詰めた方式といえる。(ブロックの数は非公開であるが、L42-ZP05で128ブロックと推測される)導光板をブロック化することで細かいエリアコントロールが可能になり、高いコントラストを実現している。また、LEDの数が少ないため省エネが実現しやすい点も大きなメリットだ。(イメージ図)
こうしたユニークな構造をもつ「S-LED」はどのようにして製造されるのだろうか?
(鈴木氏)
「液晶パネルの構造を大別すると、液晶のパネルモジュールとバックライト部に分れます。「S-LED」は、フルHD IPSα液晶パネルに、日立独自の「スリムブロック型LED」バックライト部を合体させて製造しています。この行程は岐阜の生産工場で行っております。つまり「S-LED」は、当社製のバックライトを採用した日本製の液晶パネルです。」
「S-LED」の映像を見た瞬間に感じられるのは、その圧倒的なコントラスト感だ。今までの同社機CCFL液晶とはレベルの違うコントラストを実現している。特に暗い環境で見た時のコントラスト感が素晴らしい。
(鈴木氏)
「第一の狙いは暗部の表現力とコントラストの向上です。一般のご家庭の夜のリビングの照度は150〜200ルクス程度(販売店頭は1000ルクス以上)で、それほど明るいとはいえません。この比較的暗い環境の中で漆黒と輝く白を同時に表現することが、今までのCCFL液晶では難しかったのです。「S-LED」は発光をエリアコントロールすることで、深い黒とまばゆい白を同時に表現できます」
都会の夜景のデモでは、夜の闇は漆黒に表現される、と同時に瞬くビルの窓などの点光源は眩しいほど明るい。その奥行き感とリアリティは、まるでプラズマやブラウン管など、個々の画素が自発光するディスプレイを見ているようだ。暗い部屋で見ても高いコントラスト感が味わえ、今までのCCFL液晶の常識を覆す実力の高さが感じられる。
「S-LED」と従来のCCFLバックライトのテレビ(同社機)では、具体的に見え方がどう違うのか?それを解説してみたい。
CCFLバックライトのテレビ(同社機)は、常時点灯するCCFLの光を液晶シャッターで隠して黒を表現するので、写真のように暗い環境で見るとバックライトの光が漏れ出て、黒が白っぽく浮いてしまう。
従来のCCFLバックライトのテレビ(同社機)で、黒を表現しようとすると、バックライト全体の輝度を落とすしか手段がなく、写真のように、夜空の黒は表現できても、窓の光などのハイライトの輝度が落ちてしまう、という弊害があった。
これらに対して「S-LED」は、写真のように、エリアコントロールによって夜空の漆黒と窓の光のまばゆさを同時に表現できている。
映像の輝度信号を分析し、ブロックごとの発光を適切な輝度に制御。バックライトの発光を緻密にコントロールすることで、映像の明暗をきめ細かく表現する。さらに、発光部分の光漏れを抑制する構造により、メリハリのきいた鮮やかな映像を作り出す。
「S-LED」は高いコントラスト感を実現していて、さらに後述するように省エネにつながる構造である。このような液晶テレビは今までに体験したことがない、という印象だ。
インフォメーション
L42-ZP05 / L37-ZP05 スペック
基 本 仕 様 |
外形寸法 幅×高さ×奥行(cm) *突起部含まず |
モニター+スタンド (モニター) |
L42-ZP05 102.7×69.9×30.7(102.7×66.3×9.3) L37-ZP05 91.6×63.7×30.7(91.6×60.1×9.3) |
---|---|---|---|
表示サイズ (幅×高さ/対角)(cm) |
L42-ZP05 93.0×52.3/106.7
L37-ZP05 81.9×46.1/94.0
|
||
液晶パネル | フルHD IPS αパネル(LEDバックライト) | ||
表示画素数 (水平×垂直)(画素) |
1,920×1,080 | ||
質量(スタンド含む)(kg) |
L42-ZP05 22.9(25.7)
L37-ZP05 18.0(20.8)
|
||
消費電力(待機時)(W) |
L42-ZP05 179(約0.1)
L37-ZP05 151(約0.1)
|
||
年間消費電力量 (kWh/年)※1 |
L42-ZP05 107
L37-ZP05 99
|
||
チ ュ | ナ | 数 |
地上デジタル放送 (CATVパススルー対応) |
3 | |
BS・110度CSデジタル放送 | 2 | ||
地上アナログ放送 | 1 | ||
CATVアナログ受信 (C13-C63) |
● | ||
録 画 機 能 |
HDDレコーダー内蔵 (容量) |
500GB | |
iVポケット(カセットHDD「iVDR-S」対応)※2 | ● | ||
ダブル録画※3 | ● | ||
ハイビジョン長時間録画 (XCodeHD) |
●(8倍録画)※5 | ||
ダビング・ムーブ | ● | ||
いいとこジャンプ・シーンサーチ※4 | ● | ||
追いかけ再生・同時録画再生 | ● |
- *アナログ放送の録画はできません。
- ※1 年間消費電力量はスタンダードモードを標準状態として測定。年間消費電力量とは、省エネ法に基づいて、型サイズや受信機の種類別の算定式により、一般家庭での平均視聴時間(4.5時間)を基準に算出した、一年間に使用する電力量です。
- ※2 iVポケットで録画機能を使用するには、別売のカセットHDD「iVDR-S」が必要です。
- ※3 2番組同時録画の際は、1番組がTSモードでの録画となります。
- ※4 番組によっては正しく設定されない場合があります。
- ※5 TSX8モード時。BSデジタルハイビジョン放送(24Mbps)をTSモードで録画した場合との比較において。地上デジタルハイビジョン放送(17Mbps)をTSモードで録画した場合は約6倍です。
増田和夫 プロフィール
最先端のデジタル家電などを得意とするメディア評論家。
WEBでの取材&評論で活躍中。
大の録画ファンでレコーダー「ダビング10」の解説も好評だ。
物欲系レビューというよりは「モノとにらめっこするのではなく、モノの背景にあるコンセプトや開発者のメッセージを探りたい、今年は日本のもの作りの正念場で、その現場を取材したい」と開発者インタビューなどのジャーナリスティックな記事に意欲的だ。
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部