IT業界のみならず、さまざまな分野で導入が進んでいるパブリッククラウドサービス。今回、パブリッククラウドサービスを導入する理由としてよく挙げられる3つのニーズについて取り上げてみたい。
(1)古いサーバからクラウドへ移行したい
(2)高性能なインフラを低コストで使いたい
(3)いざというときのための環境を準備したい
このような3つのニーズが生まれた背景と、実際にどのような手段が有効なのかを見ていこう。
従来のシステムは、社内にサーバを設置する“オンプレミス型”が主流だった。しかし長期間使用していると、当然ながらこのサーバにも老朽化が生じてくる。処理能力が低い旧世代のCPU、最大容量を搭載していても不足気味なメモリ、さらには膨大なデータに逼迫されるストレージなど、一定期間でハードウェアの交換が必要だ。保守期限切れやリースアップ後のサーバ設備維持費が下げられないだけでなく、ソフトウェアの更新ライセンス費用も必要になる。
加えて、運用管理に関するシステム担当者の手間や時間、業務負担なども軽視できない部分だ。システムが老朽化すればそれだけメンテナンスに手間がかかるし、もしトラブルが発生すればビジネスに直接的なダメージを与えてしまうことになる。
こうした点から、ハードウェアやソフトウェアの更新、保守管理などが不要なクラウド環境に注目が集まっている。しかし、中には「従来システムからクラウドへのデータ移行が大変そう」と躊躇している企業も多いだろう。そこで活用したいのが、クラウド環境へのデータ移行ソリューションだ。これは、仮想環境移行サービスを用いて、従来システムの物理サーバ環境を手間なくクラウド上で再現できるというもの。
たとえばニフティのパブリック型クラウド「ニフティクラウド」では、システム移行が容易に行える「VMインポート機能」を提供している。VMインポート機能自体は無料で利用できる。クラウド移行に興味のある方は、一度詳細を確認しておくと良いだろう。
どのようなインフラにも、キャパシティの限界が存在する。もちろんこのキャパシティは高ければ高い方が良いのだが、サーバの性能を向上させれば当然ながらイニシャルコストの増加は否めない。企業では平均負荷とマージンを考えて、オーバースペックにならない程度のサーバを選ぶことになるわけだ。
しかし最近、ECサイトなどでは“一時的なアクセス過多への対応”が課題となっている。これは、テレビや雑誌といったマスメディアで紹介されたり、期間限定で割引クーポンや各種特典などを提供する“フラッシュマーケティング”を行った直後にアクセスが殺到。想定していたサーバの許容量を一時的に超え、アクセス障害やサーバダウンが発生してしまうためだ。
こうした状況を打開するにはサーバの増強が必要だが、オンプレミス環境で再構築するには多大なコストがかかる上、どうしても日常でオーバースペックになってしまう。さらに、マスメディアの取材申し込みから番組・記事の公開までにサーバの増強が間に合わないという、スピード面での問題も出てくるだろう。
しかし、ニフティクラウドなら、膨大な負荷に対応するインフラを短期間で構築可能。アクセス過多によるサーバダウンで、ビジネス機会を損失するような事態も防げるのである。リーチ率やコンバージョン率にもよるが、時には数十万円のコストで数千万円の利益が出るようなクラウド環境は、企業にとって大きな武器となるはずだ。
企業のシステムにはスペックだけでなく“ビジネスを止めない”ことが求められる。その代表例といえるのが、自然災害発生時などへの緊急対応、いわゆる「BCP(Business Continuity Planning:事業継続性)」対策である。BCP対策への需要は2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、特に高まっているといえるだろう。
BCP対策において重要なのは、可能な限り主要業務を停止させない、停止後の復旧時間を最低限に抑える、という部分だ。そこに付随する形で、情報漏えい防止や企業ブランドの維持といった要素が絡んでくる。それでは、具体的な取り組みにはどのようなものが挙げられるだろうか。
耐震や防火対策など物理的な対策はもちろんだが、これらに加えて重要なのは、企業の資産である“情報”をいかに守り抜くかだ。たとえば想定を上回る大規模な震災が発生した場合、物理的な対策が無力化されてしまう可能性さえ出てくる。確かにこのような状況でも、資金があれば建物や設備の復旧は行えるだろう。しかし、長年培ってきたノウハウなどのデータが失われてしまえば、ビジネスをリスタートする速度は極端に遅れてしまう。
では、建物さえ倒壊するような状況において、どのように情報資産を守るのか。その答えが、企業のシステムをクラウドへ移行する、もしくはクラウド上にデータのバックアップ環境を構築する方法だ。バックアップさえあれば、仮に自社内のシステムが壊滅状態に陥ったとしてもデータ保全が可能。また、一般的にクラウドサービスのデータセンターは震災などの影響を受けにくい立地条件と、自家発電装置など十分な対策設備を兼ね備えているため、震災と同時にデータが失われる可能性はきわめて低いといえる。
そのほかニフティクラウドのように、バックアップイメージからVMインポート機能を使ってすぐに従来環境と同じサーバが作成できるサービスもある。通常時は1日あたり266円※という最低限のコストで環境が保持でき、なおかつ非常時は迅速に復旧が行える。さらにニフティクラウドの場合、既存の東日本のデータセンターに加えて西日本のデータセンターがサーバーの設置先として選べる「マルチリージョン」機能の存在もポイント。別の地域にバックアップ環境を構築しておけば、広域災害が発生した際も迅速な復旧が可能だ。
こうしたサービスは、情報の重要性が増す現代ビジネスにおいて、もはや必要不可欠な存在といえるだろう。
※サーバー:mini、OS:Windows Server2008 R2を利用した場合。
1日あたり23時間はバックアップサーバーを停止、1時間のみデータ転送要に起動。
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