9月2日に開催された「CNET Japan Conference 2015」。リモートワークやモバイルワークについて、考え方やそれを実現する手法などさまざまなものが紹介された。ここに登壇したシスコシステムズ シスコ コンサルティングサービス マネジャーの林大介氏は冒頭、「そもそもワークスタイルとはなにか?」と呼びかけた。
ワークスタイルは一般的に「Work(仕事)」の「Style(やり方)」、つまり「働き方」と訳され、どうしてもモバイルワーク/テレワーク/在宅ワークなど「手段や実現像」をイメージしがちになる。
しかし林氏は「私は『Style』を『選択肢』と捉えています。つまり、ワークスタイルは場所/時間/ツール/システム/ルールなどの選択肢であり、ワークスタイル変革とは『仕事におけるあらゆる選択肢のイノベーション』といえるわけです」と語る。
ワークスタイル設計におけるジョブ(肩書き)とロール(役割)についても言及。ジョブは短期間では変わらないが、ロールはリサーチャー/ファシリテーター/リーダー/ネゴシエーター/オペレーター/クリエイター/プレゼンター/マネージャなど一日の中で頻繁に変わるため、ワークスタイルはジョブではなくロールに合わせて設計されるべきだという。
それでは、なぜワークスタイル変革が上手くいかないのか。この理由について、林氏は「意志決定の軸(コンセプト)」「従業員の心理的負担への配慮」「定着化の仕組み」の3つが欠如しているためと指摘する。
まず「意志決定の軸」だが、たとえば「いつでもどこでも働けること」をワークスタイル変革のコンセプトとしている企業があるとする。しかし、これでは何のために改革をするのか不明瞭で、株主/顧客/従業員/社会など"誰を喜ばせたいか"という視点が欠けている。
「いつでもどこでも働ける」はビジョン(全体像)に過ぎず、「顧客価値を最大化する」といった企業ごとに異なる本来の意味でのコンセプト(判断基準)が求められるのだ。
「従業員の心理的負担への配慮」を先程の例に当てはめると、「いつでもどこでも働ける=従業員が幸せ」とは限らない。従業員の負担を軽減するには、まず心理的な負担を取り除いた後、物理的な負担を取り除くのが正しいアプローチとなる。
「定着化の仕組み」に関しては、「先進的なシステムを導入したのに使ってもらえない」というのが、手段が目的化してしまった典型的な例だ。そうならないためにも、経営層から現場まで各役割に応じた定着化のプロセスを事前に決めておくことが重要となる。
続いて林氏は、ワークスタイル変革の本当の進め方について「ワークスタイル変革はジグソーパズルのようなものです。一点異なるのは、最終的にどのような絵になるか分からないということですが、作り方は一緒です。まずはパーツを分類して枠を決めます。ピースのはめ方も順番ではなく、大まかな塊を作っていけばいいんです。そして、出来上がった絵を見てこれが最終的なビジョンなのだ、と捉えれば良いのです。」とアドバイスする。
また、ワークスタイル変革をリードする部門について林氏は「ワークスタイル変革はボトムアップではなく、必ずトップダウンで行うことが重要です。経営トップの人間が決断しなければなにも始まりません」と断言する。現場から経営トップの人間に決断をさせるには、熱意より数字で示すこともポイントだ。
講演が終了したところで、CNET Japan編集長の別井貴志による簡単なインタビューも実施。その中で「そもそもワークスタイル変革は必要?」という問いに、林氏は「企業にとってのワークスタイル変革はダイエットのようなもので、実はなかなか本気で取り組みにくいものです。漠然と『ワークスタイル変革をやるんだ』ではなく、生死に関わるつもりで強固な意志をもって進めていくのがワークスタイル変革です」と回答していた。
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