第14回:詐欺やサイバーテロ、情報漏洩に対処するために国が行うべきこと - (page 2)

奈良先端技術大学院大学 情報科学研究科 教授
内閣官房情報セキュリティ対策推進室 情報セキュリティ補佐官 山口 英氏
2005年01月28日 15時30分

官と民の連携でトラブルに備える

--サイバーテロをはじめとする各種の脅威やトラブルへの対策は、どのように考えていらっしゃいますか?

山口氏: 現状において考えられるトラブルとしては、災害などの物理的な障害と、意図的に引き起こされるサイバーテロが考えられます。これらの有事が発生した際に、国民生活や社会経済活動に影響が出ないように、政府機関や金融機関、そしてライフラインを保護しなくてはなりませんので、物理的なものとネットワーク経由のものの双方を組み合わせた1つの考え方が必要となります。
 だだ、日本は以前から地震が多く発生していることもあるため、災害に対しての耐性が強いという特性があります。このため、現在はサイバーテロ対策を中心に、国際的な連携強化や政府と民間の関係強化を図る重要情報インフラ防護(CIIP)を定めています。
 なお、早急に改善をしなくてはならない懸案事項としては、情報インフラに関する対策が挙げられます。というのも、大きな事故や災害が起きた場合でも、現在はキャリアの自助努力に依存している状況だからです。
 一企業であるキャリアの自助努力のみに依存している状況には、限界があります。今後、益々インターネットの活用が盛んになり、使い方が多様化し、さらにインターネットへの依存度が高まる中では、将来的に無理が生じるのは確実だといえます。
 とはいえ、国が民間企業に対して介入するのは、適切ではないという意見もあります。しかし、事件、事故を問わず、有事の際にはトラブルをできるだけ早急に解決するため、国が企業を支え、企業が国を支えていく仕組みが必要だと考えています。

--最後に、山口教授が今回、内閣官房情報セキュリティ対策推進室 情報セキュリティ補佐官を引き受けた理由と、今後の目標についてお聞かせください。

山口氏: 確かに今回の仕事は、非常にやりがいのあることですが、大学の研究に遅れが出るなど、いくつかデメリットもありました。特にインターネットの世界では進展が早く、2年といえども、それに遅れが出るのは、避けられませんので悩むところはありました。
 しかし、私自身、WIDEプロジェクトのメンバーとして日本のインターネットを創世してきたという自負がありましたし、国家がそのセキュリティに関して問題を抱えている以上、その責任を果たすという使命があると感じました。また、一方で新たなことに挑戦する喜びを感じたいというのもありました。
 なお、今後の補佐官としての私のスタンスとしては、補佐官がいらない状況を作り出すことです。というのも、政府がきちっと実施できているならば、補佐官などは不要な存在だからです。そのような状況を実現するために、積極的に官僚や政治家に対しての啓蒙していくことに努めて行きたいと考えています。

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