噂のOpenAI製ブラウザーは「Chromeキラー」になれるか--私が期待すること

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2025年07月24日 16時50分

 OpenAIは先ごろ発表した「ChatGPTエージェント」に続いて、AI搭載の独自ブラウザーを近く公開するとみられている。

OpenAIのロゴ 提供:Omer Taha Cetin/Anadolu via Getty Images
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 まだ公式発表はなく、最高経営責任者(CEO)のSam Altman氏も沈黙を守っているが、同社がAI対応ブラウザーを開発中であることは公然の秘密となっている。その狙いは、すでに市場投入されている「Perplexity Comet」や「Dia」といったAIブラウザーだけでなく、ウェブブラウザー界の圧倒的存在である「Google Chrome」との競争に挑むことにある。

 その理由はChatGPTエージェントを見れば明らかだ。同機能は日用品の注文や予定の調整などをこなす一方で、「複雑なワークフローを最初から最後まで」実行するために独自の仮想コンピュータ上で動作し、「ウェブと対話するビジュアルブラウザー」を備えている。舞台裏では「Operator」によるウェブサイトとの対話能力、「deep research」の情報統合力、「ChatGPT」のインテリジェンスと会話力が連携し、的確な回答を導く。

 Altman氏は5月のSequoia Capitalイベントで、年齢層によるChatGPTの使い方の違いを説明した。年配の人々はGoogleの代替として、20~30代は人生のアドバイザーとして、大学生はOSのように活用しているという。いずれの場合もブラウザーが窓口となる。

 こうした背景から、OpenAIが専用ブラウザーを提供するのは理にかなう。多くの人が仕事でブラウザーを使っている。あなたは今、いくつのタブを開いているだろうか。さらに別のプログラムを開くのと、ブラウザー内にとどまるのと、どちらが良いだろうか。もちろん、後者だろう。

OpenAIのAIブラウザーに期待できること

 筆者の予想では、新たなブラウザーはMozilla以外のほとんどが採用している「Chromium」ベースで、AIアシスタントを完全統合したものになる。これにより、現在のアシスタントが提供するすべての機能が、ブラウザーに完全に統合される。例えばCometが実現しているように、開いているタブの情報を取り込み、より精度の高い応答を返すことが可能になる。

 Chromiumは事実上の業界標準であるため、OpenAIはブラウザーの基本機能を一から作り直す必要がない。既存のウェブサイトや拡張機能、ウェブアプリへの対応も容易だ。そのため、同社の開発者は高度なAI機能の開発に注力できる。

 開発者や内部の関係者の話に基づく初期の報道によれば、同ブラウザーには記事・動画・PDFのAI要約や、「GPT-4o」のような画像・音声・ファイル対応などの機能が含まれる見通しだ。さらに、AIがフォームの入力やタスクのスケジューリングをユーザーの意図に沿って自動化するという。例えば、仕事用と個人用のメールアカウントを使い分けている場合、航空券やホテルの予約には仕事用、Amazonの注文には個人用を自動で選択できるかもしれない。

 自社のブラウザーがあれば、OpenAIはユーザーの質問だけでなく行動やデータ全般にアクセスできる。これは長年Googleのビジネスモデルを支えてきた基盤であり、OpenAIなどのAI企業もそれを狙っている。

 OpenAIがアクセスできるユーザーデータが増えるほど、Googleなどサードパーティーに渡るデータは減少する。Altman氏にとっては好都合だ。

AIブラウザーの競争

 AIブラウザーの競合状況を見ると、OpenAIはAIをユーザーのデジタルな代理人として深く組み込む戦略を採っているようだ。理想的には、ユーザーが朝から晩までOpenAIブラウザーで仕事も娯楽も完結させる世界を描いている。

 一方、Perplexityを搭載したCometはより従来型の機能を重視している。これは研究者やプロフェッショナル向けのブラウザーであり、要約、文脈理解、出典表示、タブ間の自動化に重点を置く。従来の検索はPerplexity独自の回答エンジンに置き換えられる。

 DiaはAIとのやり取りを前提に一から再構築されている。AIがワークフローを管理し、セッション履歴を参照し、次の行動を提案する「ワークスペースOS」を約束している。ユーザーはブラウジングというより、目的地と答えまでをDiaに導かせる感覚だ。

 Googleも参戦していることを忘れてはならない。そのアプローチは漸進的だが野心的だ。突然の混乱を招くような変更を避けながら、会話型AIを日常のブラウジングに組み込んでいる。例えば、Chromeの「Gemini」は会話型AIをブラウザーのインターフェースに直接組み込んだ。月額20ドルの「Google AI Pro」プランや同250ドルの「Google AI Ultra」プランに加入していれば、閲覧中のページから直接Geminiを呼び出せる(現時点では米国のみ)。

 ただし、Googleが他社ほどAIを深く組み込む可能性は低い。米連邦取引委員会(FTC)がGoogleにChrome売却を迫る中、そのような統合は不利に働く恐れがある。OpenAIがChromeを買収する可能性もある

 Microsoftは自社プログラムへのAI統合を進めており、「Microsoft Edge」は「Copilot」ネイティブのブラウザーとなった。サイドバーをクリックするかアドレスバーに「@copilot」と入力してCopilotを呼び出せば、EdgeはリアルタイムのAIアシスタントとなり、質問への回答やページの要約、クリエイティブな作業の支援を、閲覧中のタブを離れることなく実行してくれる。

 「Windows 11」にもAIが組み込まれている。Microsoftは2023年からWindowsへのAI統合を進めてきた。現在は、CopilotはWindowsの重要な一部となり、Windows 10/11の「Copilot Vision」が画面全体を解析し、ユーザーの作業をサポートするまでになった(現時点では米国のみ)。

 皆さんがこれらのプログラムのいずれかを使っているなら、プライバシーの懸念にも触れた方がいいかもしれない。

 それはさておき、どのブラウザーがベストなのだろうか。筆者は個人的にPerplexityとCometが好きだが、結論を下すのは早すぎる。AIプログラムの進化は速いため、常に最新の状況を把握するのは困難であり、現時点では1つに絞ることはできない。ただし、いろいろ試してはみるつもりだ。皆さんも使ってみるといいだろう。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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