OpenAIとジョニー・アイブ氏が仕掛ける「未知のAIデバイス」の曖昧な姿

Katie Collins (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年05月26日 16時21分

 AIはスマートフォンに搭載されつつあり、「Apple Intelligence」やGoogleの「Gemini」ですでに体験した人もいるだろう。

Jony Ive氏とSam Altman氏が並んだ写真 Jony Ive氏(写真左)とSam Altman氏
提供:io

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 しかし、「ChatGPT」開発元のOpenAIは従来のスマートフォンの枠を超え、AIがデバイスを再発明する可能性に賭けている。

 同社は米国時間5月21日、Jony Ive氏のデバイス系スタートアップioを65億ドル(約9300億円)で買収したと発表した。Ive氏とOpenAIの最高経営責任者(CEO)Sam Altman氏は、AIを中核に据えた、これまでにない新しいデバイスを共同で開発している。

 「新しい製品ファミリーを開発・設計・製造するというわれわれの目標のためには、まったく新しい会社が必要であることが明らかになった」と両氏は声明で述べた。「刺激や力、可能性を与える製品の開発に注力してきたioチームは、このたびOpenAIに加わり、サンフランシスコの研究・エンジニアリング・製品チームとより密接に協力していく」

 Ive氏は元Appleの伝説的なベテランデザイナーで、Steve Jobs氏とともに「iPhone」をはじめ数多くのApple製品を生み出した。現在は新たなデバイスカテゴリーの創出に注力しており、このことがAltman氏の関心を強く引いたことは間違いない。Ive氏のスタートアップは「画面のないスマートフォン」を手がけていると報じられたが、実際はスマートフォンではないとの報道もある。

 この謎めいたAIデバイスに関するうわさは数カ月前から流れているが、Ive氏とAltman氏は競合に先を越されることを警戒してか、詳細を伏せている。

 今のところ、われわれはただ想像するしかない。

 既存の比較対象としてはHumaneの「Ai Pin」が挙げられる。同製品は襟などに装着するAI特化デバイスとして2024年2月に華々しく登場したが、期待外れに終わり、AIデバイスというアイデア全体に対する悲観的な見方が残ることになった。

 CCS InsightのチーフアナリストBen Wood氏は「特にHumane AIの壮大な失敗があったため、この種の製品に懐疑論が湧くのは当然だ。同社は私を含むテクノロジー愛好家の想像力をかき立てたが、結局は多くを約束して少ししか実現できない典型例となった」と述べる。

 もっとも、Ive氏とAltman氏の組み合わせには大きな可能性がある。「市場を揺さぶる製品を世に送り込んできたJony Ive氏を侮るのは愚かなことだ」とWood氏は語る。

 Ive氏は「この30年に学んだすべてのことが、この瞬間へと私を導いたという感覚がますます強まっている」と、2人がその友情について話すYouTube動画で語った。

 ForresterのVPプリンシパルアナリストThoman Husson氏は、2人の目標について「既存タスクをAIで強化するだけでなく、新しい製品と体験を発明することだ」と述べる。

 それでもOpenAIは、初のAIデバイスで1億台の出荷を目指しているとされる。初めてハードウェア分野に参入する、サプライチェーンも持たないソフトウェア企業としては大胆な賭けだ。

 Husson氏は「Jony Ive氏は卓越したデザイナーだが、スマートフォン(およびハードウェア)は規模と範囲がものを言う世界だ。私はこの長期にわたる競争では、やはりAppleが最有力だと考えている」と述べた。

ウェアラブル?メガネ?スマホ?――たぶん違う

 手掛かりらしい手掛かりがない現状では、OpenAI初のハードウェアがどのような姿で、どう機能し、われわれの生活にどう溶け込むのかは不明だ。

 Appleの事情に詳しい信頼性のあるアナリストMing-Chi Kuo氏の情報に基づくウェアラブル説もある。Kuo氏のSNS投稿によれば、このio製品は首のあたりに着ける設計で「iPod Shuffle並みに小型でエレガント」だという。

 これは、スマートグラスに注力するMetaとは異なるアプローチを示している。MetaのCEOであるMark Zuckerberg氏は、目と耳の近くで情報をやり取りできる点からメガネこそが究極のAIデバイスだと語っている。

 もっともAltman氏とIve氏のデバイスがウェアラブルでない可能性も覚悟しておくべきだ。The Wall Street Journal(WSJ)によれば、Altman氏はIve氏がAI搭載ウェアラブル製品に懐疑的だと述べており、これが今回のプロジェクトで採用される可能性は低そうだ。

 WSJはAltman氏がOpenAIの従業員に説明した内容として、このデバイスは「目立たず、ポケットに入れることもデスクに置くこともでき、人がMacBook ProとiPhoneの次にデスクに置くような第三の中核デバイスになる」と伝えている。

 こうしてOpenAIの「画面のないスマートフォン」がAppleの製品群に属するかのように語られるのは興味深い。WSJ は、Altman氏が長期的に「製品ファミリー」を構想しており、それはIve氏の言う「新たなデザイン運動」によって特徴づけられるという。

 この製品について確実に分かっているのは、画面を持たないことくらいだ。Altman氏は人々が画面を見て過ごす時間の長さを批判しているが、画面から目を離させるデバイスが市場に入り込む余地はあるだろうか。Husson氏は「スマートウォッチを除けば、スマートフォン以来、新しい製品カテゴリーは生まれていない。破壊とイノベーションの余地はある」と述べる。

 このスマートフォンでもウェアラブルでもない何かは、当面は曖昧な第三の存在として語られ続けそうだ。

Altman氏とIve氏の声明

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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