もしイルカがこの記事を読んでいるなら――こんにちは!
フロリダに生息するイルカの群れを調査している科学者チームが、異種間コミュニケーションに向けたアルゴリズムの研究をたたえるColler Dolittle Challengeの初年度の賞を獲得した。賞金は10万ドル(約1400万円)。
米国を拠点とする同チームはウッズホール海洋研究所のLaela Sayigh氏が率いており、イルカが使うある種のホイッスルが警報として使われていることを突き止めた。チームが調査した別のホイッスルは、予想外または未知の事態に遭遇した際に用いられる。チームは非侵襲的なハイドロフォン(水中マイク)を使って調査し、ホイッスルが群れの複数個体に共通する「言葉」のような役割を果たしている可能性があることを発見した。
音の記録は始まりにすぎない。研究者たちはAIでホイッスルを解析し、さらなるパターンを解明することを目指している。
「動物のコミュニケーションを解読できていない主な原因はデータ不足だ。ChatGPTなどの大規模言語モデルには1兆語もの学習データが必要となる。他の動物についてはそれほどのデータは存在しない」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授で審査員のJonathan Birch氏は述べる。
「そのため、40年かけてイルカのホイッスルの膨大なライブラリーを築き上げたSarasota Dolphin Research Programが不可欠だ。こうした取り組みの成果として、Laela Sayigh氏とそのチームはディープラーニングを駆使してホイッスルを分析でき、いずれは解読に成功するだろう」(同氏)
授賞式では世界各地の4チームの研究が紹介された。イルカのほか、ナイチンゲール、マーモセット、コウイカを対象とするものだ。
このチャレンジはジェレミー・コラー財団とテルアビブ大学の協力によるもので、次年度の応募受付は8月に始まる予定だ。
動物のコミュニケーションを探究し、その秘密を解き明かそうとする試み自体は目新しくないが、AI はより大規模なデータセットの作成を加速している。
「ブレークスルーは必至だ」と語るのは、動物世界との言語の壁を打ち破ることを目指す非営利団体Earth Species Project(米カリフォルニア州)の共同創設者でCEOのKate Zacarian氏だ。
Zacarian氏はSayigh氏のチームを称賛し、人間以外の動物を対象とするコミュニケーションの研究がより広く認知されるようになると述べた。また、AIがこの分野の研究の性質を変える可能性にも注目が集まるとした。
「AIシステムは単に高速化するだけではない。全く新しい種類の探究を可能にする」と同氏は述べ、「われわれは個々のシグナルを解釈するやり方から、コミュニケーションを豊かで動的かつ構造的な現象として探究するやり方へと移行しつつある。これは人間の脳だけでは到底扱いきれない巨大なタスクだが、大規模なAIモデルなら可能だ」とした。
Earth Species Projectは最近、動物の音を解析するためのオープンソースの大規模音声言語モデル「NatureLM-audio」を公開した。現在、ハシボソガラス、シャチ、ハエトリグモなどを対象に生物学者や動物行動学者と協力して研究を進めており、年内に成果の一部を発表する予定だと、Zacarian氏は述べた。
ジェレミー・コラー財団のプレスリリースこの記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
「1→10」の事業化を支援する
イノベーション共創拠点の取り組みとは
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力
イノベーションの「種」から社会実装へ--
社会課題の解決に挑む各社の挑戦