「CES 2025」では、スマートグラスが多数出展されていた。そのほとんどは、AIアシスタントや翻訳サービス機能を搭載していたり、ユーザーが所有するほかのガジェットと接続したりできるというものだった。しかし、EssilorLuxotticaの「Nuance Audio」というスマートグラスは、聴覚補助技術を内蔵しており、聴覚と視覚の両方を同時に補助することができるという製品だ。
Nuance Audioについて初めて聞いたとき、筆者は、メガネのアーム(耳の後ろに来る部分)にマイクが配置されているものと思っていた。だから、音を拾うマイクが、レンズの上部などフレームのさまざまな場所に6個配置されているのを見たとき、うれしい驚きを感じた。もちろん、スピーカーは耳の真上にあり、聞き取りやすいように調整された音声を届けてくれる。
EssilorLuxotticaのデモブースは、CES 2025でも特ににぎやかなコンベンションホールに出展されており、来場者がNuance Audioのマイクをテストできるようになっていた。音声は、前方から来る音を拾って目の前にいる人の話を聞き取りやすくするモードと、周囲の音すべてを増幅するモードを選択できる。
筆者はどちらのモードもテストしてみたが、その機能には驚かされた。Nuance Audioの担当者が後ろにいるときでも、大勢の人の中で、その声をはっきり聞き取ることができた。専用アプリには、マイクのプリセットが4つあり、マイクの強度を調整できる。さらに、電源のオン/オフ操作やバッテリー残量の確認、音量の調整が可能なほか、ノイズトラッキングの機能もある。
筆者は、Nuance Audioのグローバルヘッドを務めるStefano Genco氏と話をする機会を得た。Genco氏によると、EssilorLuxotticaは、アプリの使用を好まないユーザーやテクノロジーにそれほど詳しくないユーザーのことも考慮しているという。そうしたユーザーのために、メガネ本体には、音声モードを切り替えられる多機能ボタンが付いている。さらに、メガネを外すと、バッテリーを無駄にしないよう、6個あるマイクのうち5個がオフになり、メガネのアームを折りたたむと完全にオフになる。
2024年秋に発表された「AirPods Pro(第2世代)」の聴覚補助機能を利用できるのは、AirPods Pro(第2世代)を所有する「iOS」ユーザーに限定されることを考えると、Nuance Audioの誰でも使える設計は親切だと感じた。Genco氏は、Appleの機能がきっかけとなって、日常的に使用する製品を市販の補聴器に変えようという議論が始まったことを認めてはいるものの、最終的には、会話中に「AirPods」を装着している人に対して警戒心を抱き、この人は本当に話を聞いているのだろうかと疑問に思う人も出てくるかもしれない。
その疑問を口に出してしまうと、装着者は聴覚障害があることを明かさざるを得なくなる。障害のことを黙っておきたい人も多いだろう。Nuance Audioを使用すれば、そのような質問をされることはほとんどなくなるはずだ。
Nuance Audioのバッテリー持続時間は8時間だが、音声増幅の設定によっては、それよりも短くなる。充電するときは、メガネを折りたたんで、充電パッドに置く。バッテリー残量が80%未満の場合はバッテリーの状態を示すライトがオレンジ色に点灯する。80%以上ある場合は、緑色に点灯する。
Nuance Audioは聴覚障害者を対象とした補聴器業界を大きく変える製品ではあるものの、誰でも装着することが可能だ、とGenco氏は説明した。同氏によると、われわれが会話していたような騒がしい環境では、話している相手に集中しようと脳を酷使するので、精神的な疲労につながるという。これには、筆者も同意する。CESの会場では、話し相手に、聞き取れなかったのでもう一度言ってほしいとお願いした後、話の内容を聞き取るために集中しなければならないことが何度もあったからだ。
したがって、音を聞きやすくしたいと思っている人は、Nuance Audioを検討するといいだろう。「Ray-Ban Metaスマートグラス」と同様、購入したNuance Audioをメガネ販売店に持ち込んで、度付きレンズを取り付けてもらうことも可能だ。
補聴器は2025年のCESで人気のコンセプトではあったが、ほとんどがインイヤー型や従来のオーバーイヤー型の形状を採用している。EssilorLuxotticaでは、スタイルと機能性を優先していることは明らかだ。それが可能なのは、同社がメガネ業界で培ってきた経験のおかげである。
Nuance Audioの発売時のカラーバリエーションは、ブラックとバーガンディーの2色だ。フレームの種類は、四角フレーム(厚形と薄型)が2種類と円形フレームが1種類の計3種類である。Nuance Audioは、米国で市販の補聴器に分類されるため、現在、米食品医薬品局(FDA)の承認を待っている段階だ。同社は、2025年中に認可が下りることを期待している。
Nuance Audio
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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