スマートグラス時代はすぐそこ、「あと一歩」足りないものは?

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2025年01月15日 07時30分

 2025年は、スマートグラスが本格的に普及する年になるだろう。これは、筆者が実際に身に付けた経験から言えることだ。「Ray-Ban Metaスマートグラス」は、普通のメガネに見えるようになっただけでなく、商業的にも成功しており、Counterpoint Researchによれば、すでに100万台以上販売されているという。

 決してスマートグラスが次の「iPhone」のような存在になるわけではないし、その意味では「AirPods」にも及ばないだろうが、筆者はこれまでにいくつも試してきて、スマートグラスは「使える」ことを知っている。これは、「XREAL One」のようなディスプレイグラスについても言えることだ。筆者は、自分の視力に合わせたスマートグラスを普段から持ち歩くことになりそうだと思っている。

 ただし、誰もがそうなるわけではないだろう。2025年のCESでも、見逃せないスマートグラスがいくつか登場したが、その多くはAIの機能が使えるようになるとうたっていた。それらのスマートグラスは、完全に普通のメガネか、それに近い見た目をしている。そしてスマートグラスや(少なくとも)その外見は、世間に受け入れられつつある。ほとんどの人が、Ray-Ban Metaスマートグラスを着けていても気付かないほどだ。

 もちろんそれは、心配の種でもある。FBIによれば、2025年の元旦に米国のニューオリンズで14人を殺害した男は、犯行の際にRay-Ban Metaスマートグラスを着けていた。スマートグラスにできることは動画の撮影、写真の撮影、通話、音楽の再生、カメラを使ったAIサービスの提供などであり、スマートフォンと大差はない。捜査当局は、まだこれらのサービスが犯行に使われたかどうかを確認できていないが、スマートグラスが常にAIサービスを利用できるウェアラブルデバイスが普及する兆しであることを考えれば、この問題について考えてみる価値はあるだろう。

 CES 2025で展示されたスマートグラスは、これまで以上に現実的なものに見えた。例えば、Hallidayのスマートグラスは、普通の眼鏡屋にありそうな見た目であるにもかかわらず、フレームの上側に通知やAIからの情報をテキストで表示できる小さなモノクロディスプレイが配置されている。この小さな円形のディスプレイは視界の上の方にあり、リアルタイムで翻訳された言葉を見たりすることができる。

 またARグラスである「RayNeo X3 Pro」には、ハンドトラッキングが可能なカメラが搭載されており、透明なレンズには筆者が2024年に試したものよりも小型のデュアルディスプレイが組み込まれている。このARグラスは、Metaのプロトタイプスマートグラス「Orion」で使われているものと同じような、Mudra製の手首に装着するニューラルリストバンドと連携させて、小さな指の動きを読み取ってアプリを操作することもできる。

今のスマートグラスに足りないものは

 スマートグラスは非常に未来的なデバイスだが、今はまだ重要な要素が欠けている。それはスマートフォンとの十分な連携だ。Ray-Ban Metaスマートグラスをはじめとするほとんどのスマートグラスは、まだスマートフォンがなければ機能しない。一番の弱点はその連携の貧弱さだ。Ray-Ban Metaスマートグラスは「Meta AI」を使ったり、音楽を再生したり、撮影した写真を同期したりできるが、接続が切れてしまう場合があり、そうなるとスマートフォンにアクセスすることも、操作することもできなくなる。また、AppleのAirPodsや「Apple Watch」、Googleの「Pixel Buds」や「Pixel Watch」などと比較すると連携が甘い。しかし、2025年のうちに、その状況も徐々に改善されていくはずだ。

 今後リリースされる予定のGoogleの「Android XR」は、スマートグラスやVRヘッドセットをスマートフォンやGoogleのAI「Gemini」と密接に連携させるためのフレームワークであり、うまくいけばAndroidスマートフォンとの連携はずっと柔軟になる。筆者が2024年12月にテストしたGoogle謹製のデモ版のスマートグラスには、AIを常時作動させておくモードがあったが、将来はスマートフォンとも接続できるようになると言われている。サムスンの複合現実ヘッドセットは、Androidアプリを実行することもできる。

 AppleのiPhoneでも同じことができるはずだし、やるべきだが、今のところそうした動きはない。不思議なことに、Appleの「Vision Pro」にはiPhoneと直接連携させる機能はなく、その代わりに共通のアプリやクラウドサービスを利用できるようになっている。Appleがスマートグラスを発売した暁には、Apple WatchやAirPodsと同じようにスマートフォンと連携させる機能が搭載されるのかもしれないが、現時点ではそんな製品はうわさの中にしかない。

 Googleは2025年、Android XRに関していくつかの前進を見せてくれるようだ。最初のAndroid XRデバイスは、Vision Proに似たサムスンの大型のヘッドセットになる見込みで、同社はスマートグラスの発売も準備している。GoogleがAndroid XRに関して最初に提携した企業の1つであるXrealの最新の製品であるXREAL Oneは、一日中着けて使うことは前提としておらず、どちらかというとプラグインできるディスプレイと言うべきものだが、この製品は、サムスンのスマートグラスとともに、Android XRに対応する最初のデバイスの1つになるかもしれない。

 スマートフォンとの連携が進めば、スマートグラスは単なる目新しいデバイスではなく、必要不可欠なものに感じられるようになるだろう。筆者はRay-Ban Metaスマートグラスを愛用しているが、スマートフォンとの関係が制限されているところは好みではない(問題はMetaのソーシャルメディアポリシーなのだが)。イヤホンやスマートウォッチのように、スマートグラスでも簡単にスマートフォンのAIサービスを選択したり、スマートフォンの周辺機器として使えるようになるべきだ。ただしこれが実現するのは、2025年ではなく2026年になりそうな予感がある。

 とりあえず、スマートグラスの見た目はかなり改善された。実際、デザインは素晴らしい。残る問題は、他のデバイスとの連携を改善することだけだ。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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