日本でもインフレ、準富裕層の定義は「5000万円以上」のまま?--野村総研に聞いた

 以前、とある日本経済新聞の記事が話題となった。三菱UFJ銀行が「総資産1億円以上の準富裕層」をターゲットに、アプリで資産形成を提案するという内容だ。

 日本における準富裕層の定義については、純金融資産の保有額が「5000万円以上〜1億円未満の世帯」とする野村総合研究所(野村総研)の基準が浸透している。このためSNSでは、「準富裕層の難易度が上がった?」「準富裕層から脱落した」などの投稿も見られた。

野村総研による世帯別純金融資産保有額の階層
野村総研による世帯別純金融資産保有額の階層

 なお、日本経済新聞の記事をよく読むと「総資産」とある。総資産とは賃借対照表で言えば純資産と負債の合計だ。一方、野村総研の定義では、金融資産から負債を引いた純金融資産を指標にしている。つまり、比較できるものではなく、日本経済新聞の記事から「準富裕層の定義が変わった」と捉えるのは筋違いだとわかる。

野村総研の回答は

 とはいえ、ここ数年で円安や株高が大きく進行した。インフレも進み、「純金融資産5000万円以上」の達成は以前よりも容易になった感がある。

 気になったため、野村総研の担当者に定義の変更はないか尋ねた。すると次の回答を得た。

 「推計の継続性を重視し、当面は定義の変更予定はない」

 当面の間ということで、純金融資産が5000万円〜1億円の世帯は、しばらくは準富裕層を名乗れることになりそうだ。なお、政府は新NISAなどを通じて、国民の金融資産形成を強力に後押ししている。また、継続的なインフレが続けば、いずれは定義が変わることになりそうだ。

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