エプソン、超エコに古紙から紙を再生する「PaperLab」--紙の循環しやすく、環境意識向上へ

 セイコーエプソンは、乾式オフィス製紙機「新型PaperLab(プロトタイプ)」を開発。12月6~8日に開催された「エコプロ2023(SDGs Week EXPO 2023)」の同社ブースで公開した。2024年春から実証実験を行い、2024年秋には商品化を目指す。

 「PaperLab」は、オフィスなどから排出される使用済みの古紙から、水をほとんど使わずに、繊維化や結合、成形を行い、紙を再生することができる。

 2016年に世界初の乾式オフィス製紙機「PaperLab A-8000」を発売。官公庁や自治体、金融・証券、製造業などでの導入が進み、紙の購入や使用済みの紙を処理するための輸送頻度の削減、CO2排出量の削減、機密情報の処理に貢献しているという。

エプソンブースに展示された新型PaperLab(プロトタイプ)
エプソンブースに展示された新型PaperLab(プロトタイプ)
エコプロ2023のエプソンブースの様子
エコプロ2023のエプソンブースの様子

 セイコーエプソン P商業・産業事業部副事業部長の山中剛氏は、「オフィスなどで使用しているコピー用紙などのリサイクルは、廃棄、回収、再生、販売という過程を踏み、大きな再生サイクルのなかで運用されている。そのため、水や木材の消費、再生やそれらの輸送に関わるCO2発生などの環境負荷が大きい。PaperLabでは、その場での小さな再生サイクルが実現でき、水もほとんど使用せず、環境負荷低減に貢献できる。さらに、古紙を機体のなかで完全繊維化するため、機密情報が抹消されるほか、製紙の前処理や後加工などによる新たな雇用機会を創出できるというメリットもある」とする。

新型PaperLab(プロトタイプ)と開発責任者のセイコーエプソン P商業・産業事業部副事業部長の山中剛氏
新型PaperLab(プロトタイプ)と開発責任者のセイコーエプソン P商業・産業事業部副事業部長の山中剛氏

 今回発表した「新型PaperLab(プロトタイプ)」は、2022年のエコプロ2022で公開した「新型PaperLabコンセプトモデル」で実現した「本体サイズを小型化」「専用シュレッダーの導入」「結合剤に天然由来材料を採用/紙の繰り返し循環」の考え方を踏襲。商品化に向けて改良を加えたという。

 本体サイズは、高さ1.28m✕幅3.35m✕奥行き0.91mとなり、A-8000に比べて約50%の小型化を実現。木目基調の天板を採用するなど、外観を一新し、オフィス空間に馴染むシンプルなデザインにした。「よりオフィスに導入しやすく、オフィスで紙循環を行いやすくするサイズを目指した。また、本体価格も約半分に抑えることを目標にしている」と、意欲的な価格設定にも挑んでいる。


 また、PaperLabで再生した紙の枚数に応じて、CO2や木材、水に対する環境貢献量を液晶パネルで確認できるようにした。「この情報は、PCやスマホでも確認でき、PaperLabによる日々の環境貢献活動とその成果を実感できる。活動成果を社内外のレポートとして活用することもでき、社員の環境意識の向上、働くモチベーションの向上のほか、企業ブランドイメージを高めたり、地域住民や子供たちが環境を考えるきっかけづくりにつなげられたりする」とした。

新型PaperLab(プロトタイプ)の液晶画面で環境貢献量を確認。データはスマホなどとも連動する
新型PaperLab(プロトタイプ)の液晶画面で環境貢献量を確認。データはスマホなどとも連動する

 PaperLabの最大の特徴は、エプソン独自技術の「ドライファイバーテクノロジー」である。紙を繊維に戻す「繊維化」、結合素材により強度や白色度を向上させる「結合」、加圧して成形する「成形」の3つのプロセスにより、「ドライファイバーペーパー」に再生する。新型PaperLab(プロトタイプ)では、紙を再生する際に使用する結合材を天然由来の成分に置き換えたほか、PaperLabで再生した紙を繰り返し再生することができるようにした点も大きな進化だ。

 また、PaperLab専用シュレッダーの採用により、使用済みの古紙をその場で細断するため、本体から離れた場所でも、機密情報が漏洩せずに古紙を回収。複数の場所に同シュレッダーを配置することで、ビル内における複数企業の共同利用や地域での利用も可能になる。

PaperLab専用シュレッダー。こちらの液晶画面でも環境貢献量を確認できる
PaperLab専用シュレッダー。こちらの液晶画面でも環境貢献量を確認できる

 なお、PaperLab A-8000同様に、シュレッダーを使用せずに、古紙をそのまま本体に投入するモデルの開発も検討しているという。

 一方、「PaperLab A-8000リフレッシュモデル(プロトタイプ)」も開発した。製紙可能サイズの追加など、現行モデルに比べて利便性を向上している。2024年春に発売する予定だ。

「PaperLab A-8000リフレッシュモデル」(プロトタイプ)
「PaperLab A-8000リフレッシュモデル」(プロトタイプ)

 「現行モデルでは、使用済みコピー用紙の種類に合わせて製紙条件を個別に設定する必要があったが、新モデルでは、内部センサーが用紙ごとに異なる繊維の状態を検知し、紙種に応じた製紙条件を自動で最適化する。また、A3サイズよりひと回り大きいサイズの紙を再生できるようになった」という。

 4000枚の古紙をそのまま本体にセットすることで、一括で大量の用紙を再生させることができるため、使用済みの紙が、多く発生する場所で集中的に紙を再生させたいニーズに適している。また、コピー用紙だけでなく、厚紙や色紙にも再生できる。

 セイコーエプソンは、2022年9月に、パーパスとして、「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」を制定し、環境を経営戦略の重点に置く一方、パーパスの実現に向けた施策のひとつとして、「環境ビジョン2050」を打ち出し、2050年までにカーボンマイナスの達成と、地下資源の消費ゼロを目指している。

 セイコーエプソン 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部副事業本部長兼P商業・産業事業部長の五十嵐人志氏は、「エプソンは、創業以来培ってきた『省・小・精の技術』をベースに、創造と挑戦を重ねてきた。より効率的に、より小さく、より精緻にすることにこだわり続け、地球環境問題の克服をはじめ、人と地球が豊かに彩られる未来を実現したいと考えている」とし、「PaperLabは、オフィスによる資源循環を実現するために、重要な役割を担う製品である。この1年で商品化に向けて大きく前進しており、ラインアップの拡大により、生産性や使い方、設置場所などに適したモデルを選択できるようになる。PaperLabが生み出す価値を、多くの顧客に届け、持続可能で心豊かな社会の実現に貢献したい」と述べた。

セイコーエプソン 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部副事業本部長兼P商業・産業事業部長の五十嵐人志氏
セイコーエプソン 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部副事業本部長兼P商業・産業事業部長の五十嵐人志氏

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