日本人起業家が米国の冷凍食品配達を変える--最適な状態で届ける仕組み「Frost」

 コロナ禍で急増した冷凍、冷蔵食品の宅配ビジネスだが、旺盛な需要に対し、到着時に溶けていた、指定期日通りに届かなかったなど配送部分での課題は多い。米国でその課題解決に乗り出したスタートアップが「Frost」(フロスト)だ。率いるのは日本人起業家の田中優祐氏。AIを活用し、配送データを分析、管理し、危機管理することで、遅延や溶けるといったリスクを回避するシステム「Frost」を立ち上げた。

Frost 共同創業者の田中優祐氏(右)と大下優弥氏(左)
Frost 共同創業者の田中優祐氏(右)と大下優弥氏(左)

 「米国は国土が広く、人口も多いが、日本のように冷蔵(冷凍)車を使っての配送システムが整っておらず、ダンボールや発泡スチロールの中にドライアイスを詰めて冷凍、冷蔵食品などを送るケースが多い。しかし、配送品によってドライアイスの必要量が異なり、最適な状態で購入者のもとまで届けることが難しい状態」と田中氏は米国における冷蔵、冷凍食品宅配の現状を話す。

 配送管理においても「ExcelやGoogleスプレッドシートで管理している会社もあり、フルデジタル化しきれていない状態。ここをダッシュボードで管理し、配送状況を一覧で見られるようデジタル化することで、配送時に起こり得るリスクを避けられる」(田中氏)とリスク回避を徹底する。

 Frostは、田中氏が共同創業者を務める大下優弥氏とともに生み出したサービス。冷凍食品を扱うB2C企業で働いていた大下氏が米国での冷凍食品配送事業に課題を感じ立ち上げたという。

 田中氏は「冷凍食品の配送はそもそもの料金が高い。それに加えてミスが起きると再配送のコストもかかる。お客様に至ってはお誕生日に合わせて食べようと用意していたステーキが届かなかった、楽しみにしていたケーキが溶けていたなど、冷凍食品を宅配するという体験自体がよくない思い出に変わってしまう。このリスクを回避したかった」と思いを明かす。

 Frostは2023年の春ごろに本格的な開発をスタート。それ以前にダッシュボードなどの機能は構築しつつあったという。「開発でもっとも時間がかかったのは過去データの分析。宅配会社などが持っている過去データの中でどの配送が失敗し、成功しているのかという成否がまとまっておらず、データの統合が大変だった」(田中氏)と振り返る。

ダッシュボード画面
ダッシュボード画面
リアルタイムの配送状況を確認できる
リアルタイムの配送状況を確認できる

 7月から、冷凍食品の通販を手掛けるD2Cスタートアップと協業し、PoCをスタートしたとのこと。PoCにこぎつける間も冷凍、冷蔵食品を扱っているEC事業者をリストアップし、ヒアリングを実施。サービスをともに改善していく体制を整えて、積極的に声がけしていたという。9月にはエンジェル投資家やVCから日本円にして1億5000万円程度の資金調達を実施。さらなる開発や人材獲得に充てる計画だ。

 「現状では完全に合致する競合はいないと感じている。今、Googleスプレッドシートで作業している企業の配送管理をFrostに置き換えていくことが最大の狙い。大きなチャレンジになるが、米国における冷凍、冷蔵食品の宅配体験を変えていきたい」(田中氏)とした。

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