日本の不動産市場でDXが進まない要因とは--不動産テック7社が語ったビジネス事例

 不動産テック先進国の米国では、AIによるデータ分析、ビジネスプロセスのマネジメント、スマート不動産などが成熟しているという。一方、日本の不動産市場のDXが進まない要因は、データフォーマットの不統一など、共通のデータ基盤が存在しないことにあると言われている。

 情報の透明化が進まず市場全体の情報が不足している上に、日本の不動産業界は、深刻な人手不足にも悩まされている。不動産業務の負担を減らすためには、自動化や効率化を図り、不動産業界でDXをより進めていく必要がある。

 そんな不動産業界を背景に、データアセットマネジメント事業を展開するAOSデータは6月22日、「不動産テック×AI/DXデータフォーラム」を開催した。

 同フォーラムでは不動産テック協会による基調講演のほか、GA technologies、リーウェイズ、Housmart、REMODELA、AGE technologies、アクセルラボ、スペースリーなど、不動産テックを推進する企業が7社登壇。AIやVR活用など、DXが進む不動産テックのビジネス事例について語った。本稿では、講演の一部を抜粋してお届けする。

日本の不動産業界の課題と、各社が語ったビジネス事例

 基調講演を行ったのは、不動産テック協会代表理事の巻口成憲氏。不動産業界のDX最新動向とデータビジネスの可能性について語った。

不動産テック協会 代表理事 巻口成憲氏
不動産テック協会 代表理事 巻口成憲氏

 巻口氏は先進事例として、米国の不動産マーケットについて解説する。米国と比較すると日本の不動産エージェントは労働生産性が4分の1程度であるとし、その背景としてデータの活用が不十分であることに触れた。

 続いて巻口氏は、不動産テック協会が公開している不動産テックカオスマップを紹介し、これまで増え続けてきた各ジャンルのプレーヤーが、2022年初めて減少に転じたと述べた。巻口氏は「不動産テック業界で淘汰が始まり、市場が成熟化しつつある」とし、今後の不動産テック業界は市場をいかに早く席巻するかではなく、差別化がより重要になっていくと予測した。

不動産テック カオスマップ
不動産テック カオスマップ

 また、日本の不動産業界の課題として、不動産に番号が振られておらず、データをうまく連携させられていない点を挙げる。不動産テック協会が推進する「不動産共通ID」の取り組みを紹介し、スマートシティ実現における有用性などについて言及した。

 リーウェイズ 取締役COOの佐伯智昭氏は、AIと自社データを活用した不動産業務DXの最新事例について紹介。一例として、7月3日から提供開始される「ASSET TRANSFORMATION」(アセトラ)について言及した。

リーウェイズ 取締役COO 佐伯智昭氏
リーウェイズ 取締役COO 佐伯智昭氏

 アセトラは、大東建託グループが資産運用をサポートする総合資産サービスプラットフォーム。リーウェイズのサービス「Gate.」(ゲイト)と連携し、2億件を超える不動産ビッグデータを活用して、顧客が保有する不動産の将来的な展望や課題を分析、アドバイスできるという。資産運用コンシェルジュによるサポートや、AIによるシミュレーション機能も備える。

 REMODERA 代表取締役社長の福本拓磨氏は、賃貸物件の原状回復、オンライン退去立会を扱う自社サービスについて説明。退去立会は日程調整が難しく、顧客の都合で週末に集中することもあり、これまで非常に時間がかかるものだったという。退去立会をオンライン化することで、移動時間も含め4時間程度かかっていた時間を、2時間未満にまで短縮できたとした。

REMODERA 代表取締役社長 福本拓磨氏
REMODERA 代表取締役社長 福本拓磨氏

 退去立会はトラブルも多い。そのため、国交省のガイドラインに沿って誘導できる機能や、正しくログを残せる機能などを充実させた。今後はサービスをさらに発展させ、「入居者が退去時にスマートフォンなどのデバイスをかざせば、入居時の状況と自動で照らし合わせられるようにしたい。また、その情報を近隣の不動産会社や職人にも共有できるようにしていきたい」と展望を語った。

国交省のガイドラインに沿って誘導し、トラブルを回避
国交省のガイドラインに沿って誘導し、トラブルを回避

便利、快適なスマートホームから社会課題の解決へ

 アクセルラボ 取締役CTOの青木継孝氏は、次世代の住宅スタイル、スマートホームの魅力と今後の展望について講演。便利、快適といったイメージの現在のスマートホームから、今後はより社会課題を解決するような場で利用されることが増えると語った。

アクセルラボ 取締役CTO 青木継孝氏
アクセルラボ 取締役CTO 青木継孝氏

 例として、青木氏は強盗被害や少子高齢化における課題に触れた。具体的には、外出先での鍵の管理、施錠確認、親族や友人への一時的な鍵の受け渡しがスマートロックの利用でスムーズになること、センサーの設置で留守中の侵入者検出ができることなどを挙げた。

 また、スマートホームによるペットや家族の見守りサービスも需要が高まっていると話す。室内の温度を自動で管理する、1人暮らしをする高齢者のトイレのドアなどに開閉センサーを設置して有事の際は自動で駆けつけられるようにする、などの機能が注目されているほか、スマートホームの導入によって、エアコンや太陽光発電を管理するなどエネルギーマネジメントも可能になると述べた。

 講演ではほかにも、GA technologies AI Strategy Center室長の稲本浩久氏、Housmart 代表取締役の針山昌幸氏、AGE technologies 代表取締役CEOの塩原優太氏、スペースリーのマーケティング部マネージャーの酒井隆弘氏が登壇。自社のAI活用の実例や不動産の業務DX、空間DXについて語った。

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