人工知能(AI)を使えば、コンピューターコードを書いたり、物語を作ったり、相対性理論について解説したりするなど、いろいろと素晴らしいことができるだろう。しかし、中には素晴らしいとは言えないことも、少なくとも1つある。それは、パスワードの解読だ。
Home Security Heroesのセキュリティ専門家が新しいレポートを公開し、優秀なAIツールならよくあるパスワードを数分から数秒で突き止められる実態を明らかにした。
1568万種類のよく使われるパスワードをAIで解読するのにかかる時間を調べるため、Home Security HeroesはAIツール「PassGAN」を採用した。PassGANという名称は、「Password」(パスワード)と「GAN」(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)を組み合わせたものだ。このPassGANは、通常のマニュアルプロセスだけでなく、実際に流出したパスワードの分析を通じて、パスワードを解読する技術を習得できる。このような自動化手法は、より素早く効率的にパスワードを解読できる能力を攻撃者にもたらす恐れがある。
Home Security Heroesがあらゆる種類のよく使われるパスワードを調べたところ、81%のパスワードが1カ月未満で突き止められたという。また、71%が1日未満、65%が1時間未満、51%が1分未満で解読された。
パスワードの見破られやすさは、長さと複雑さの両方に関係しているようだ。PassGANが7文字のパスワードを解読するのにかかった時間は、6分未満だった。たとえそのパスワードに、大文字や小文字、数字、記号が混在していてもだ。また、数字のみで構成された13文字のパスワードを突き止めるのにかかった時間は、3分にすぎなかった。
予想通り、長さと複雑さの両方を備えたパスワードが最も安全性が高かった。あらゆる文字種を含む10文字のパスワードが解読に5年かかるのに対し、数字のみで構成された18文字のパスワードは10カ月で解読できるという。あらゆる文字種を含む18文字のパスワードであれば、突き止めるのに要する時間は600京年だ。
PassGANはなぜパスワードの解読にこれほど長けているのだろうか。ほとんどのパスワード解析ツールは、単純なデータモデルを適用してパスワードを手動的に推測し、文字列の連結などのパスワード生成ルールを用いて、パスワードのパターンについて一定の推測を行う。これに対して、PassGANはニューラルネットワーク上で動作するGANを用いているため、データの分析と学習を通じてますます賢くなることができる。
このような脅威がパスワードに迫る中、私たちはただ諦め、この新たなAIによる支配を受け入れるしかないのかといえば、そうではない。適切なパスワードの運用を実践することで対抗できる。それにはHome Security Heroesが推奨しているように、以下のようないくつかのルールや要件に従うことが必要だ。
Home Security Heroesのアドバイスに加えて、もう1つ推奨されるのがパスワードマネージャーを使用することだ。個々のアカウントに対して長く複雑なパスワードを作成し、記憶し、適用することは、何らかの支援なしにはまず不可能だ。パスワードレス認証が普及するまでは、パスワードマネージャーが引き続き、すべてのアカウントに固有のパスワードを設定するのに最適な手段となるだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果