デジタル庁は10月5日、Web3に関する有識者会議「第1回Web3.0研究会」を開催した。冒頭に「Web3.0で目指す経済、産業、社会の姿とは」との議題が提示されたが、参加した有識者からは「そんなものはわかりっこない」「トップダウンで決め打ちしないほうがいい」などの意見が飛び出た。
ジョージタウン大学で研究教授を務める構成員の松尾真一郎氏は「インターネット黎明期の90年代にUberのようなサービスが登場するとは誰も想像できなかった。国が決め打ちで『こういう社会を目指すべき』ではなくて、さまざまな人がイノベーションの主体となれる環境をいかに構築するか、イノベーションに携わる人達をいかに増やすかが議論の本質になる」と指摘した。
デジタルガレージ 取締役 チーフアーキテクトで、かつ千葉工業大学変革センター長を務める構成員の伊藤穰一氏は「Web3に携わっている人が何をしようとしているのか、社会のムーブメントに目を向けると良いのではないか。Web3には影の部分もあるが、良い部分にいかにフォーカスするのかが重要」と述べた。
続けて、SF小説家でもある構成員の藤井太洋氏は「Web2の黎明期にも『こういう社会がやってくるから、こういうサービスを始めよう』という議論は何度も行われたが、残ったサービスは僅かだった。しかし、その結果として、我々の手元にはたくさんのWeb2を扱えるエンジニアが生まれ、今日のITの基盤を支えている。Web3でもDAO(自律分散型組織)やDeFiに携わるエンジニアをたくさん育て、次世代に残していけるような制度を作っていきたい、その意味ではWeb3のムーブメントが悪意などで潰されてしまうのはもったいない」と述べた。
Web3に関する議論は、金融庁をはじめ各省庁も個別に実施している。デジタル庁の同研究会には、各省庁での議論を取りまとめる役割があるという。事務局によると、主にDAOに関する議論に力を入れるとしている。
デジタル大臣の河野太郎氏は「DAOやNFTといった技術のベネフィットやリスクを踏まえ、Web3を社会課題の解決や経済成長につなげていくために、どのような環境整備をすれば良いのか、幅広い議論をして、年末までに取りまとめていきたい」と語った。
研究会では、次回以降の会議をDAOで実施しようという提案もあった。この提案を受けて河野大臣は「この会議を本当にDAOでやると研究会が決めたのなら実行する。実行すると決めた上で、事務方にどうやるか進めさせる」と前向きに答えた。また、同研究会をDAOで実施するメリットを尋ねる声もあったが「メリットもデメリットもわからない点がDAOでやるメリット」との意見もあった。
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