日本を軸に配信者と視聴者をつなぐ「おむすびチャンネル」--開始約半年でウクライナ支援も実現

加納恵 (編集部)2022年07月28日 08時30分

 「目指す方向は最近目立ち始めている動画配信サービスとは真逆。ゴシップや誹謗中傷、卑猥なコンテンツが一切ないデジタルプラットフォーム」ーーFJC 代表取締役社長の岡本広樹氏は、自身が手掛ける「Ch-OMUSUBI(おむすびチャンネル)」をこう表現する。

 おむすびチャンネルは1月17日の「おむすびの日」にスタートしたライブ配信プラットフォーム。競合の多いジャンルながら、「外国人と日本人が共生し、共に活躍できる社会」をコンセプトに、日本語を学習する親日外国人が配信者」として自己表現をし、日本人が「視聴者」としてその様子を視聴するなど、日本を軸にした国際交流を目的に開始した。

「Ch-OMUSUBI(おむすびチャンネル」
「Ch-OMUSUBI(おむすびチャンネル」

 代表取締役を務める岡本氏は、ベラルーシで働いていた経験を持つ。「ベラルーシで働いていたとき、同僚のベラルーシ人の女性が日本への留学を計画していたが、コロナの影響で日本にいけなくなってしまった。留学する直前だったので、仕事も辞めてしまって収入もない。しかもいつ日本にいけるのかもわからない状況がなんと1年半も続いた。このような環境でも収入を得られる仕組みを考えられないかと思ったのがおむすびチャンネルのきっかけ」と、日本に興味を持つ外国人の支援がスタートだったという。

 おむすびチャンネルの特徴である投げ銭機能は、日本に興味がある外国人の方を支援するための仕組み。「日本語のスピーキングスキルを鍛えて、なおかつお金を稼げる、そういうプラットフォームがあったらいいよね、という思いを形にした」とのこと。その背景には、インターネット上に深く根付いてしまったヘイト運動から、配信者を守りたいという気持ちがある。

 「外国人の方が日本語で顔出しをしながら配信することで、応援してくれる人も多い一方、特定の国のヘイトなどはインターネット上にまだまだ残っている。日本を好きになってくれて、興味を持っている外国人の方が、勇気を持って配信しているにもかかわらず、誹謗中傷されたり、嫌な書き込みをされたりしたら、すごいショックだろうなと。そうしたことから守れるプラットフォームを作りたかった」とヘイト問題と向き合う。


 そのためおむすびチャンネルには強固なヘイト対策を採用。30日750円の月額課金制にすることで、ユーザーを限定。利用規約に反する行為を行うユーザーに対する強制退会機能を設ける。運営による目視チェック・巡回を定期的に実施するほか、会員同士がお互いを監視することで、通告できる制度を導入。会員からの通告が3回に達すると、運営に退会を促す仕組みになっている。

 「作りたいのは便利で優しい世界。客観的に見ると嫌な言葉でなくても、本人にとっては傷ついてしまう言葉もある。そういう言葉も拾えるように通告制度を設けた。ただ、監視体制が厳しくなると言論統制になりかねないので、できれば、こうした制度を設けずに運営していくことが理想と考えている」とやり方を模索する。

配信者同士がつながり実現したウクライナ支援

 サービス開始から約半年。すでにおむすびチャンネルが社会貢献に結びつくケースも出ている。注目されたのは、ウクライナへの支援だ。「ウクライナが侵攻を受けた2日後に配信者が現状をおむすびチャンネルで伝えてくれた。当時はウクライナの方への支援の仕方が決まっておらず、どうしていいかわからないけれど、なにかしなくてはといった状況。配信者は日本への避難を希望していたが、ルートが確保できなかった。その時、ポーランドにいた日本人配信者がウクライナまで車を手配し、ウクライナの配信者の国外避難を支援し、ウクライナからハンガリーまで送り届けた。ハンガリー在住の配信者がウクライナの配信者の身の回りのケアや大使館とのやり取りをお手伝いして日本へ連れてくることができた」と配信者同士が手を組み、日本までの避難ルートを開拓した。

 その後も投げ銭で得た資金を物資に変え、ウクライナからの避難民が多かったポーランドに届けたり、避難先で就労機会がない人に対し、投げ銭機能で収入を確保してもらったりと、刻々と変化するニーズを捉えて、支援を継続。「配信者が現地にいることで、何に困り、何が足りないかを把握できた」とおむすびチャンネルならではの支援を実行する。

 サービス開始時点で多くの配信者を確保していたことも支援が実行できた要因だが、その裏には「1万人以上に声をかけた」という配信者の獲得に向けた事前の取り組みが大きい。「おむすびチャンネルを企画した2年前から、日本に興味のあると思われる外国人の方に声をかけていった。そのやりかたはSNSを見てDMを送るという本当に地道な方法。興味を示してくれる人がいる一方、怪しいなと思われた人も多かったと思う(笑)。サービススタートまでに2年を要したことで、途中で連絡が取れなくなった人もいた」と時間をかけて構築してきた。

 一方で「私自身もSNSで1万人超のフォロワーの方がいて、その人たちに声をかけたことをはじめ、インフルエンサーの方を通じてサービスの開始をアプローチしていった」と視聴者の獲得にもSNSを活用する。

 「日本」を軸に海外の人とつながる場となっているおむすびチャンネル。「当初は海外の人と交流することで知識を得たり、語学学習といった意味合いが強いサービスになることを想定していたが、サービスを始めてみると『人との出会いの場』を求めている人が多いことに気づいた」と岡本氏は言う。

 サービスを開始した1月は、長引くコロナによる自粛生活や行動制限もあり、人とのつながりが希薄なっていた時期。この思いを反映するように、7月に開催したオフラインイベントでは、約520名の参加者を集めたという。

7月に開催したオフラインイベント
7月に開催したオフラインイベント

 今後は「コミュニティとしての結束力を強め、オフラインでの交流も作っていきたい。距離をこえて出会えるオンラインももちろん大事だが、顔を見て相手がわかることが大切。交流イベントは海外でも企画しており、9月にはポーランドで実施する予定」と海外での活動も視野に入れる。

 現在、有料会員数は約1万7000名、配信者数は世界80カ国、約650名を超え、グローバルコミュニティとして成長を続けている。「誹謗中傷などが本当にないデジタルプラットフォームに育ってきた。目指すのは本当に優しい、ヘイトなどのないコミュニティが築けること。これが私たちの競合優位性だと思っている」と「最も健全で優しく、上品なデジタルプラットフォーム構築」に今後も力を入れていく。

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