クリエイター向けの“左手デバイス”である「Orbital2(オービタルツー)」を開発・販売するBRAIN MAGICは5月26日、新製品「Orbital2 STERNA(オービタルツースターナ)」を発表した。CCC グループが運営するクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」において、5月26日〜7月10日まで先行販売する。
一般販売は、クラウドファンディング終了後の8月以降を予定しているという。一般販売予定価格は1万8920円で、クラウドファンディングでは最大25%オフの早割プランなどを設けている。
BRAIN MAGICは、デジタルハリウッドの学内発ベンチャーとして産声をあげたスタートアップで、イラストレーター(現:代表取締役)の神成大樹氏が、御茶ノ水の校舎でファーストプロダクトを誕生させた。
そのBRAIN MAGICが開発するOrbital2は、“左手デバイス”と呼ばれる、ダイヤル式のクリエイティブツールの先駆け的存在だ。イラストレーターや動画製作者など、プロ向けのアプリケーションを使うクリエイターの日常的な動作を減らし、肉体にかかるストレスを抑制する。たとえば、イラストレーターであれば、画面の拡大や縮小、ツールの選択、切り替え、保存など、1時間に1000回以上キーボードを操作する。こうした単純な切り替え操作が続くことは、クリエイティビティを発揮する妨げになっていた。また、長年の作業の積み重ねで腱鞘炎を起こし、仕事が困難になるクリエイターもいる。
そこで開発されたのが、Orbital2だ。ボディ部は小さめのペットボトルほどの太さ、ダイヤル部はペットボトルの蓋とほぼ同サイズとなっている。これはデザインを最適化したところ、偶然発生した相似点だと言うことだが、「倒す」「回す」「押す」の3つの動作で、複数の作業をシームレスに実現するインターフェイスだ。
これにより、クリエイターはディスプレイから目を離すことなく作業ができる。たとえば映像製作者なら、左手でシーケンスの拡大縮小やフレーム移動などをさせつつ、イメージした通りの編集に集中できる、まさに作業に没頭できる作りになっている。
独自の機能を多数有するOrbital2だが、中でもユニークなのは“キーローテーション”機能だ。これは本体に最大10個までのショートカットキーを登録できるもので、たとえばイラストレーターが行う「筆を持つ、消しゴムを持つ」といった2つの作業をする際に、1つにまとめられる。スイッチひとつで切り替えが可能なので、工夫次第でさまざまな用途で利用できる。
さらに、”フリックメニュー”もある。これは、マウスに追従する放射状のオーバーレイメニューだ。8つの機能パレットに登録し、各方向にフリックして操作するもので、ペンタブレットを使うクリエイティブ作業に向いている。
たとえば、イラストレーターが絵を描く場合、背景のアスファルトを描くブラシと、空を描くブラシを変更するシーンでは、キーボードショートカットでは切り替えができない。そのため、毎時マウスなどでブラシを変更する必要があった。これをOrbital2のフリックメニューに割り当てることで、毎回UIを変更することなく、ひとつの作品を描ききるまで没頭できるのだ。
こうした独自の機能を持つOrbita2は、ジョイスティック式の作業ツールの先駆けであり、クリエイターからのニーズも高い製品だが、国内で生産していることやパナソニックの高性能なセンサーを利用していることから、競合他社と比べて高価になってしまうという課題があった。実際、検索キーワードでも「Orbital2 高い理由」などと検索されているそうだ。そこでBRAIN MAGICは、”ワンプッシュあたりの耐久性コストは高い”と考えているものの、より多くのクリエイターに利用してもらいたいという思いから、今回エントリーグレードの開発に踏み切ったという。
それが同日に発表された新製品のOrbital2 STERNAだ。ジョイスティック・ダイヤル・スイッチを再設計し、頭頂部の直径やくぼみの深さなど細かい調節が施され、倒す・回す・押し込む操作を軽くし、指先の感覚のみで位置を判別できる凸型スイッチ、傾斜により押し込みやすさが向上するなど、さらに使いやすくなっている。
従来のOrbita2との違いは、機能の切り替えを手に伝える振動モーターがないこと、Micro-B接続ではなく、Type-C接続であること。また、振動モーターを取り除いたことで筐体の中に余裕ができ、本来の人間工学をベースにしたデザインにより近づいたという。
なお、BRAIN MAGICでは、協力クリエイターからデータを収集。現場で、どの作業が多く使われているのかをリサーチし、プロの現場で対応できる耐久性を備えることを徹底している。そこで、ダイヤルにはメタルシャフト由来の高級感とクリック感のある、日本CUI製光学式高解像度・100万回転耐久ロータリーエンコーダーを採用。しっかりしたフィードバックもある、パナソニックの長寿命タクトスイッチを採用している。Orbital2 STERNAでもこれを使用しているため、ヘビーな使い方を繰り返しても、使い勝手が変わらず、へたらない仕様になっている。
前述の通り、Orbital2 STERNAは同日より、GREEN FUNDINGでクラウドファンディングを開始した。Orbital2が3万5200円の価格設定なのに対し、Orbital 2 STERNAの一般販売予定額は1万8920円。エントリーグレードとして、購入しやすい価格に設定されている。GREEN FUNDINGでは、初日の特別価格が25%オフの1万4190円となるほか、Wacom Intuos Proとのセットプランや、Wacom One 液晶ペンタブレット13とのセットなども用意されている。
また、今回の発表に合わせて同社COOの甲斐頌久氏から、「Orbital2 LOGGER」も発表された。これは、Orbita2を使う中で「こうして欲しい」というクリエイターからの声を集約し、共同開発したものだという。繰り返し作業の登録がより簡単になり、作業負荷の軽減と、制作時間の短縮を実現、Orbita2を使用するまでのハードルも下がったことになる。
さらにBRAIN MAGICは、今後の展開として、これまでのデバイスと今後収集するデータログ、AIなどを組み合わせることで”未来のクリエイティブシーンを実現したい”と語った。
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