世界を襲ったコロナ禍は、人々の働き方を大きく変えた。巨額の資金を運用する機関投資家も例外ではない。米コンサル大手のブランズウィックが各国の機関投資家に行った調査(回答537社)によると、73%がコロナ禍の前とは別の場所でほとんどの仕事をこなしているという。
調査(2020年11月、2021年2月)の結果に大きな驚きがあった。それは、数あるデジタル情報サイトの中で、企業のIR(投資家向け広報)サイトが「最も利用し最も信頼できる情報源」としてトップだったことだ。
金融情報ブルームバーグや世界的な経済紙のウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズなどを上回り、メディア関係者から「オッ!」という声があがった。機関投資家の92%が問題のチェックなどでIRサイトを利用し、72%がこれに拠っ投資判断を下すと回答しているという。
調査レポートがいう。
「明確にしておきたいのは、企業のIRサイトは単なるトップのデジタルソースではないという点である。 IRサイトは、私たちがテストしたすべての情報源で最も使用され、最も信頼されていた」。市場の動きに敏感な投資家にとって、より速くより有用な情報をより多く入手するか、入手しないかの違いは決定的だ。
企業のIRサイトに対する評価はとくに英米で高く、「規制当局自体の信頼性が低いアジア」では、話が少し異なると調査は語る。アジアでは投資家の85%がIRサイトを利用するが、投資決定に資するという回答は52%にとどまっている。アジアの投資家が追う企業のIRサイトはいま一つだということなのだろうか――。
調査は、IRサイトは投資家が企業に優先的に求めるデジタルソースだという。回答の50%が「企業のIRサイトがコミュニケーションに最適な方法である」といい、32%がCEO(最高経営責任者)や経営幹部のビデオ動画をコミュニケーションの「ウィッシュリスト(希望項目)」のトップに挙げている。
コロナ禍で、各社とも、バーチャルの決算説明会をはじめ、投資家訪問(ロードショー)やIRデイ(事業別業績や研究開発などの説明会)、各地の工場や店舗のバーチャルツアーなどのイベント動画をさかんに発信した。
その多くで、CEOや経営幹部が登場し、なにかしら語っている。今後も、同様にIRサイトでそれを知りたい――というのだ。日本企業でもリモートでの投資家向け説明会や面談が主流となっている。それだけに、ビデオ動画に対する投資家の期待に応えたいところだ。
また、調査は、投資家の74%が企業から届く電子メールのニュースレターを利用していると指摘している。2020年の「IR活動の実態調査」(日本IR協議会の回答1012社)によると、「eメールによる説明会などの開催通知と申込受付」は日本語版で31%、「RSS(ウェブサイトの新着情報を配信するフォーマット)による情報提供」が同じく23%、英語版ではそれぞれ11%、5.8%にとどまる。
投資家目線でみると、ニュースレターの発信にもっと注力する余地がありそうだ。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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