国産ドローンメーカーのACSLは2020年12月から2021年9月にかけて、自社設計・開発した汎用機体「ACSL-PF2」を5機使用し、マレーシアにいる現地オペレーターと完全遠隔で協業して、累計1000時間におよぶドローン試験飛行を実施した。
「2022年度中、遅くとも2023年3月までにレベル4の法改正が行われるいま、メーカー自らが、安全性や信頼性を高めるための試験や評価を加速し、その結果をきちんと社会に発信していくことは、非常に重要だ」と語るACSL代表取締役兼COOの鷲谷聡之氏に、本試験の狙い、実施内容、今後の展開を聞いた。
ドローンが人の頭上を飛行する、いわゆるレベル4が話題になっている。これは操縦者が目視外で第三者の上空を飛行させるもので、現行法では許可されていない。今後は要件を満たせば許可・承認される予定で、その要件に関わるのが「機体認証」をはじめとする新制度だ。
機体認証とは、ドローン各機体の信頼性を担保する、車でいうところの車検のような制度。いままさに、登録要件定義や保安基準策定が、国土交通省で進められており、レベル4の飛行は、第1種機体認証を取得した機種に許可される見通しだ。しかし、ここには大きな課題があったという。
「レベル4では、航空機に近しい設計思想、試験評価が求められる。設計プロセス、製造プロセス、コンポーネントレベルで安全性を担保する必要があるが、一方でドローンは航空機とは違って試験飛行をしやすい割に、ドローンというシステム全体としての性能評価や耐久評価がまだまだ不十分で、レベル4の安全性を議論するためのベースとなる基礎データが不足していた」(鷲谷氏)
そこでまずは、レベル3の実務や実証実験で数多くの採用実績があるACSL-PF2を使って、リアルな環境においてレベル4の運用を想定した1000時間の試験飛行を実施した。狙いは、レベル4で飛行するドローンを開発するためには、どの項目でどのような基準をクリアするべきかという、基礎データの取得だ。
「下手したら1機あたり50時間、5機合計しても250時間程度で試験終了もあり得ると覚悟していた」(鷲谷氏)というが、いざフタを開けてみると、最長飛行した機体は累計270時間、5機の累計では1000時間の試験飛行を達成。モーター、ESC(Electric Speed Controller)、プロペラの交換は一切必要なく、どの機体も破壊値には至らなかったという。
試験実施期間は、2020年12月から2021年9月。構想は、コロナの感染拡大が広がったタイミングだった。しかし、「マレーシアで実施する」ことは、譲れない絶対条件だったという。理由は3つある。
1つめは、人件費の問題。試験飛行を任せられるレベルのパイロットを確保するための費用は、日本と東南アジアでは3倍の差がある。2つめは、飛行エリアの問題。試験用の広い面積を確保するには、日本ではフィールドが限られる上、開発拠点である東京からのアクセス、フィールド使用料も好条件とはいえない。3つめは、テスト環境の多様性だ。
マレーシアには、ACSLが自社CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて出資する、エアロダイングループの本社がある。エアロダイングループは、世界第2位のドローンソリューションプロバイダーで、35カ国以上でサービスを展開しているほか、マレーシア政府案件の請負実績も豊富であるため、現地の自治体と連携した多様なテスト環境が整っている。しかも現地パイロットは、他社製品をかなり使い込んでいるベテラン勢だ。
ACSLにとってエアロダインは、ASEAN進出本格化、将来的には販促も含めて連携するグローバルパートナー。この日本法人であるエアロダインジャパンと連携して、マレーシアにおいて試験を実施することになったという。
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