コインチェックは7月1日、トークンを利用した資金調達手段「IEO(Initial Exchange Offering)」プラットフォーム「Coincheck IEO」を利用したプロジェクト「Palette」の購入申し込みを開始した。IEOによる資金調達は国内初としている。
IEOは、これまで暗号資産を使った調達手段で一般的だったICO(Initial Coin Offering)と異なり、暗号資産取引所が主体となって、プロジェクトの審査やトークンを販売する資金調達モデル。プロジェクトの透明性や暗号資産の上場が確約されていないICOと異なり、取引所側が審査から上場までをサポートする。取引所のユーザーのみにプロジェクトを展開するため、ICOのように広範囲のユーザーから資金を調達する用途には向かないが、より信頼性を高めた状態で募集できるのが強みだ。海外でのIEO調達件数は156件、累計調達額は700億円を超えているという。
クラウドファンディングなど他の資金調達方法と異なるポイントとして、資金の代わりにトークンを販売することで、資金調達と同時にトークンエコノミーの構築も実現する点にある。トークンの価値はプロジェクトのネットワークの価値に依存するため、出資者はトークンの価値を上げるためにネットワークを広げたり、運営を積極的にサポートするように行動する。結果、トークン保有者は経済的インセンティブが得られるようになるほか、プロジェクトの運営・拡大にも寄与する。
今回、IEOによる調達を実施するのが、エンターテインメント領域に特化したNFTプラットフォーム「Palette」を展開するHashpalette社。マンガアプリなどを展開するLink-Uと、ブロックチェーン企業HasPortとの合弁企業で、マンガやアニメ、アート、ゲーム、音楽、スポーツなどの日本産デジタルコンテンツに対してNFTを発行する。Palleteでは独自のコンソーシアムチェーンを採用。Palette内でNFTをやり取りしたり、クロスチェーン技術を使い、イーサリアムやNeo、Ontology、COSMOSなどの他のブロックチェーンと接続する拡張性を持ち合わせている。
発行するのは「PLT」という独自トークンで、2億3000万枚販売する(総発行数は10億枚)。価格は1PLTあたり4.05円、一口あたり1000PLT(4050円)で、最大2400口(972万円)まで購入可能。IEOで9.3億円を調達予定としている。PLTは、決済トークン以外にも、GASトークン、ガバナンストークンの役割を持つ。パブリックチェーンではないため、GAS(ネットワーク手数料)価格が安定しているほか、イーサリアムを使ったNFTなどのようにそのトークンを保有していなくても参加できる。IPホルダーが安心して参加できるガバナンス体制も構築可能。
また、Palette内で事業を展開するIPホルダー向けに、「HashSuite」というNFTシステム基盤を提供。暗号資産交換業と同レベルのサイバーセキュリティと、アンチーマネーロンダリング(AML)レベルを実現しているという。動画や静止画だけでないさまざまなデータでのNFT発行が可能なほか、SNSログインやクレジットカード決済も標準搭載している。NFTのAMLについては、FATFも注視しており、グローバルレベルの規制に準拠する準備があるとしている。
なお、日本初のIEOとなるため、コインチェック、Hashpalette以外にも、規制当局ともに協議を進めながら開始までこぎつけたという。また、コインチェックにおける審査責任については、日本交換業協会(JVCEA)が定める受託販売に関する自主規制規則に沿った形で審査するほか、トークンの上場廃止となる事由が発生した場合は、他の暗号資産と同様に一定の基準にもとづいて廃止を検討するとしている。
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