フォースタートアップスは6月11日、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」において、2021年1月から5月までを対象とした「国内スタートアップ資金調達額ランキング」を発表した。
それによると、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を展開するSmartHRが124.9億円を調達し、2位にランクインした。また、Mobility Technologies、ビットキー、シンクサイト、マネーツリー、アクセルスペースホールディングスが25億円を超える資金調達を新たに実施。新規ランクイン企業は6社となった。なお、Mobility Technologiesについては、以前より公表していた調達内容が登記簿に反映されたため計上されている。
2013年1月に設立されたSmartHRは、人事・労務の業務効率化と、働くすべての人の生産性向上を支えるクラウド人事労務ソフトであるSmartHRを提供している。同サービスは、雇用契約や入社手続きをペーパーレスで完結できることが特徴。また、従業員情報も自動で蓄積され、年末調整やウェブ給与明細、さまざまな労務手続きにも対応している。
2020年4月、大企業を中心に社会保険の電子申請が義務化。今後、中小企業にも適用拡大が行われることで、同社ソフトのさらなるニーズ拡大が見込まれている。登記簿によると、2021年3月から4月にかけて、およそ124億9500万円の調達を確認。これにより、企業評価額は1700億円に到達した。
8位にランクインしたビットキーは、ブロックチェーン技術を基盤としたスマートロック「bitlock」や暮らしのコネクトプラットフォーム「homehub」を展開する。5月にパナソニックのハウジングシステム事業部および、プライムライフテクノロジーズとの資本業務提携を発表。パナソニックとは、homehubとパナソニックが扱う住宅設備や建材商品をつなげることで、住宅市場における顧客のニーズに対応した商品開発を目指す。
プライムライフテクノロジーズとは、2022年3月までにhomehubを基盤としたタウンポータルサイトを開発し、新規の大型分譲での展開を開始する。共有施設予約、住民間のコミュニケーションなどの機能も提供し、さまざまな製品やサービスとの連携も視野に取り組みを進める方針だという。
11位にランクインしたシンクサイトは、AIが駆動するイメージ認識型高速セルソーティング技術(超高速・高精度なイメージ認識型のリアルタイム細胞分離システム)を用いた治療・診断プラットフォームを研究開発するスタートアップ。5月19日には、シリーズBラウンドで総額28億5000万円の資金調達を発表している。引受先は、スパークス・グループ、シスメックス、三井住友トラスト・インベストメント、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、SBIホールディングスなど。これまでの累計資金調達額は、49億300万円となる。
今回の調達を受けて、GC技術(独自に開発したイメージ認識型高速セルソーティング技術であるゴーストサイトメトリー技術)を利用した治療や検査診断の実用化に向けた、各領域における共同研究を推し進めるという。また、GC技術が搭載された細胞分析・分離システムの開発を加速していく予定。事業拡大にともない人材を拡充し、大きな需要が見込まれる米国市場の事業開発も積極的に進めるとしている。
資金調達金額ランキングのランクイン企業の設立日と、設立からの累計調達金額をみると、トップ20にランクインしている企業のうち累計調達金額が100億円を超えている企業は、Paidy、SmartHR、Mobility Technologies、ディーカレット、TBMの5社となる。また、設立5年以内のスタートアップは、ディーカレット、ネットプロテクションズホールディングス、ビットキー、Legal Force、アクセルスペースホールディングスの5社で、全社が20億円以上を調達している。
13位に新規ランクインしたアクセルスペースホールディングスは、2020年に設立。独自開発の超小型衛星を活用した宇宙ビジネスを展開するアクセルスペースの親会社となる。子会社であるアクセルスペースは、東京大学と東京工業大学で生まれた超小型衛星技術を使用した世界初の民間商用超小型衛星を含む実用衛星の開発・運用に取り組んでいる。2018年6月には、経済産業省が推進するスタートアップ集中支援プログラム「J-Startup」に採択されている。
12位に新規ランクインしたマネーツリーは、個人向けの家計管理アプリ「Moneytree」やエンタープライズ向け金融プラットフォーム「Moneytree LINK」を提供。5月には、GMOベンチャーパートナーズ、任天堂創業家の山内家ファミリーオフィス、Aslead Capital、Fidelity Internationalを引受先とする26億円の第三者割当増資を実施。2012年の創業以来、同社の累計調達金額は58億5000万円に到達している。
同社では、6月4日時点での「国内スタートアップ想定時価総額ランキング」も発表している。同ランキングは、登記簿情報に記載されている発行済みの顕在株、潜在株をもとに算出。また、子会社やINCJ主導で設立した企業は除外されている。
それによると、SmartHRが新たなユニコーン企業になった。評価額は、5月の320億の5倍以上となり、1700億円を突破。5月のランキング外から一躍、2位に浮上している。登記簿より、約125億円の新たな調達と、以前と比べた際の株式取得価額の上昇を確認できたことが今回の評価額の増加につながったという。なお、今回の調達により、同社の累計資金調達金額は200億円を突破している。
1000億円超えの企業数は合計11社。ランキング上位企業の入れ替わりにより、ジェネシスヘルスケアが評価額463億円で新規ランクインしている。同社は、自宅でできる遺伝子検査キット「GeneLife」などを提供。5月には、日本国内において100万人検査を達成し、遺伝子検査のパイオニアとしての地位を確立している。
今後は、日本における最大の遺伝子データベースを構築し、集団情報を起点とした新たな個別化予防および、ゲノム領域の科学・医療を開拓する方針。特に、遺伝子編集やCRISPR(クリスパー)などの新しい技術革新を用いた新薬発見、遺伝子治療などに注力していく予定。2030年までに、最先端の遺伝化学技術を実用化し、遺伝病の半数を撲滅することを目指す。
ランキング3位のTRIPLE-1はローカル5G市場に新規参入した。ミリ波帯および、Sub-6帯に対応し、Stand Alone方式(5Gのみで動作する無線アクセスネットワーク構成)をサポートする新製品「TOKI」シリーズを発表。今秋より初回量産品の販売・提供を開始する予定。
7位のTBMは、国内外での事業成長を加速させるべく、コーポレート・ファイナンス室を設立。宇田川宙氏が室長と上席執行役員に就任している。今後、財務・資本戦略を中心とした経営基盤の強化を図るという。
11位のMobility Technologiesは、MOBILOTSと業務提携契約を締結。MOBILOTSの「ロジビズUP!」において、次世代AIドラレコサービス「DRIVE CHART」のシステムを活用。独自の交通事故削減と安全管理業務支援サービスを6月より提供開始する予定。
12位のアストロスケールホールディングス(英国)は、2024年までにデブリ除去の商用サービス化に向けた技術革新のため、英国宇宙庁から250万ポンドを受け取った。同資金を活用し、軌道上ミッションで役目を終えた複数の人工衛星を除去する衛星「ELSA-M」の技術を開発する方針。
14位のティアフォーは、南福岡自動車学校を運営するミナミホールディングスと、自動運転技術を活用した運転技能検定システムおよび、教習システム「AI教習システム」を製品化。同製品の販売を行う合弁会社「AI教習所」を設立し、各教習所に製品を提供するという。
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