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しがらみや恐怖を越えて--大手医療法人がAIを画像診断に採用した理由

Greg Nichols (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 編集部2021年04月30日 07時30分
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 医療分野の自動化が大きく進んでおり、医師や医療関係者は、これまで産業分野でよく起きていた自動化との衝突を経験している。特に放射線科医は、人工知能(AI)がスキャン画像の診断スキルを上げるにつれ、大規模な変革に直面している。

スキャン画像を確認する人々

 これは放射線科医にとっての脅威だろうか。

 CTスキャンの画像診断にAIを使うことについての議論は、ロボットが人間に置き換わるという枠組みでとらえられがちだ。だが、医師が経営する放射線医療法人として米国最大の規模を誇るRadiology Partnersは、AIを恐れるのではなく、受け入れようとしている。この法人は3000以上の病院にサービスを提供している。Radiology Partnersは、Aidocの放射線医AIプラットフォームを導入し、患者のトリアージを支援しようとしている。これにより、医師は最も緊急な症例に優先的に対処できるようになる。

 これはどういうことだろうか。AIの能力を認めたということなのだろうか。

 医師が経営し、2019年にはその価値を40億ドルと評価されたRadiology PartnersがAIに大きく賭けた理由を解明するため、私は同社の経営陣に連絡をとった。その結果、AI採用までの道のりは常に平坦だったわけではなかったことが分かった。

 Radiology Partnersで臨床AIのアソシエイトチーフメディカルオフィサーを務めるNina Kottler博士は「新しいものを導入する場合の常で、放射線医学におけるAIへの最初の反応は、恐怖、混乱、興奮などまちまちだった。AI専門家や一般メディアによるAIの画像認識能力の過度な高評価も影響し、AIが放射線科医に取って代わるのではないかという恐怖があった」と語った。

 自動化に対する典型的な恐怖だ。では、どのようにしてその恐怖を乗り越えたのだろうか。

 「AIの実際の機能についての理解が進んだ今、恐怖はほぼ克服された。恐怖の他に、『AIのブラックボックス』という未知なるものへの不安や、見慣れない新技術への抵抗感などもあった。抵抗の中にはもっともなものもあり、放射線AIアルゴリズムの導入と展開には幾つかのハードルがあった。新たな技術に対する、ある程度の懐疑論は健全であり、臨床アルゴリズムの構築と展開をしっかり監視するために重要だ。だが、ポイントのずれた懐疑論者は、最新の文献やこの分野の専門家の考察についていけない人たちだ。まだ抵抗しているのはAIの価値を理解していないか、AIが医師に取って代わると考えている人々だ。だが、医学博士のCurt Langlotz氏が語ったように、AIは放射線科医に取って代わることはない。ただし、AIを使わない放射線科医は、使いこなす放射線科医に取って代わられるだろう」(Kottler氏)

 それが、同社がAI革命から逃げ出すのではなく、迎え入れようとする主張の推進力だ。

 Radiology Partnersの会長兼最高経営責任者(CEO)、Rich Whitney氏は次のように述べた。「われわれがAIを受け入れるのは、放射線科だけでなく、医療システム全体に価値をもたらすと信じているからだ。AIアルゴリズム導入の結果、次のようなメリットがあった。患者の転帰の改善、フォローアップと治療の推奨事項のばらつきの減少、患者のフォローアップを確実にするためのバックアップの提供、病院と保険会社と患者の支出の軽減、診断精度の向上、医師の燃え尽き症候群の減少などだ。かなり印象的なメリットのリストだ! そして、われわれはまだAIの可能性の表層をひっかいているだけだ。将来的には、医師とAIのコンビは患者ごとの固有のガイダンスによる精密な診察と、病気を治療するだけでなく、予防のための予測ケアを提供するようになる。われわれは、AIを放射線科医の敵とはみなさず、むしろ、彼らがより多くの価値を得て、医療システムにおける役割を高める機会とみている」

 確かなのは、これが放射線医学とその先の医学全般におけるAIの始まりにすぎないということだ。

 「AIには、画像診断ライフサイクルのすべての要素に影響する能力がある。放射線検査のスケジューリングを改善し、放射線量と撮影時間を減らし、識別された病理に基づいて自動的に治療実施計画を作成することで何度も検査を行う必要がなくなり、多様なデータベースから集めた関連データをまとめた患者にも分かりやすい診断報告書を提供し、患者が追加撮影の日程を立てるのを助ける。医師は、人間の目では見えない、より多くの定量化された情報が利用可能になることで、違いに気づくだろう。対象集団による正常な人体組織のセグメンテーションと定量化は、血液のパネル検査に匹敵するイメージングデータを提供し、病理は容量分析され、時間を追って追跡されるため、疾患に対する治療の効果を容易に判断でき、画像所見に基づくリスク層別化は、臨床医が病気を予防するのに役立つ」(Whitney氏)

 Kottler博士は次のように付け加えた。「Aidocとの新たな提携と、米国における画像検査の約1割を担う当社の市場ポジションにより、われわれはこうした画期的な価値提案をパートナーに提供できるようになりつつある。同時に、AIに対する抵抗とエンゲージメントの欠如の問題に、教育を通じて取り組んできた。医師にAIの機能とその限界についての正確な情報を把握してもらうだけでなく、AI導入後の将来における医師の役割についてのビジョンを提供することも重要だ。AI技術とそのインフラに投資するだけでなく、放射線科医にも投資して、彼らがAIのある未来で中心になるよう支援している。この未来は、患者と医療システム全体にとって大きな期待を抱くものだ」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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