中小企業同士の「共創」も実現--企業のオープンイノベーションを“当たり前”にさせるeiicon代表・中村氏 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年05月02日 09時00分
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必要なのは「マインドの強さ」と「会社側の仕組み」

——ちなみに、パーソルグループ自体は社内起業しやすい社風なのでしょうか。

 社内起業しやすい雰囲気はあります。USENの宇野康秀さんや、オープンハウスの鎌田和彦さん、サイバーエージェントの藤田晋さんらが創業した会社なので、ベンチャーマインドは非常に強い社風ですし、やりたいことはやりなよ、という感じなんです。ただ、会社としての規模が大きくなっているがゆえにきちんとした制度がありませんでした。今では徐々に整えられてきていますけどね。パーソルイノベーションという箱ももちろんその1つです。

——パーソルグループのなかで立ち上げたからこそ良かった点はありますか。

 うーん(笑)。当初想定した会社のリソースは一切使えなかったですし、なかなか「シナジーがあった」とは言いにくいですね。パーソルイノベーションの社員として、毎月安定的にお給料をいただけるというのは、非常に低リスクで、会社に感謝すべきところではあるんですけど、裏を返すと、低リスク低リターンだとも思っています。じゃあなぜやるのかと言えば、やっぱり文化を作りたい、これをやりたい、という気持ちがすごく強くあったからですよね。その思いが発芽したのが大企業の中だったというだけです。

——2020年度以降、eiiconではオープンイノベーションをどう進化させていきたいと考えていますか。

 今は「オープンイノベーション3.0」と言われるような時期に入りつつあります。従来の会社対会社、One to Oneでは解決できなかった社会課題にどう取り組んでいくべきなのかが課題として取り上げられるようになってきています。MaaSやスマートシティなど、社会を巻き込んで価値変容を起こしていかなければいけないようなイノベーションを、オープンイノベーションの手法で展開していく時代になってきていますよね。

 そういう意味では自治体、地方行政がこのコロナ禍で補正予算を持つようになったこともあり、2021年度は産官学連携の事例が増えてくると思っています。われわれとしては、社会課題の解決を目指すものはもちろんのこと、中小を含めた地方の企業に、イノベーションの手法としてオープンイノベーションをしっかり浸透させていきたい。その先には海外展開も見据えていければとも考えています。

 あとは、親会社のパーソルには多くの資金を出してもらっていて、株主の立ち位置でもありますので、ちゃんと還元できるステップに来たかなとも思っていますから、パーソルの目的に連動するところで恩返しができればいいなと思っています。

仕事と子育てに全力

——ここからは話題を変えましょう。社外活動について、何か積極的に関わっていることはありますか。

 実は社外活動は一切やっていなくて(笑)。この5年、必死だったんですよね。1人目の育休中にeiiconの事業を起案しましたが、2人目、3人目の子どもを産んだときには育休もとっていませんし、3人目は昨年9月に出産したばかりでして……。正直、仕事と子育て以外やってないんですよね……。やはりスタートアップ界隈の社長さんたちのようにコミュニティに顔を出せることも少ないですし、夜の会食なども幼い子がいると難しいですからね。

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——子育てでこだわっていることがあればぜひ教えてください。

 子どもにはコミュニティをたくさん持っていてほしいなと思います。多くのコミュニティを彼・彼女自身で体験しないと世界が広がらない。好きも嫌いもわかりませんから、習い事もいろいろチャレンジしてもらっていて、語学も壁にならないよう英語の環境には気を遣っています。異なる価値観・世界観の友人ができるように、複数のコミュニティに所属させてあげたいな、とは思っていますね。

——お子さんたちもある意味オープンイノベーションというか、型にはまらずいろいろな人と触れ合ったりコラボしたりして、自分の可能性を広げてほしいと。

 そうですね(笑)。自分の頭で考えたこと、感じたことを自身で反芻しながらぶつけるようになってきてるように感じます。最近6歳になった子は「差別とは何か」がテーマになっています。森喜朗さんの発言がきっかけになって、たとえば「女子トイレに男の子が入っちゃいました、これは差別でしょうか?」「それは差別じゃありません」みたいな、そういうクイズを日常的に出してくるようになっちゃってます(笑)。

——ご自身のチャレンジされる姿勢や、お子さんの教育方針など、そういう考え方・価値感はいつ中村さんの中で醸成されたのでしょう。

 母の影響は強いですね。実は母のような、母親にずっとなりたかったし、今もそう思っています(笑)。物事をプラスに捉えるか、マイナスで捉えるかはあなた次第、という育てられ方をしたと思います。それから、もちろん、とっても大切にもしてもらっていましたが、「やってみなはれ」とぽーんとチャレンジさせるような母でもありました。

 仕事においても、子育てにおいても、まずそこに在る「事実」を見に行こうとする癖、そして必ずチャレンジする姿勢は幼少から身についたものかもしれません。

——最後に、この連載の共通の質問ですが、イントレプレナーに必要なことは何だと思いますか。

 1つは「仕組み」だと思っています。経産省の出向起業等創出支援事業もそうですが、そういった低リスクな仕組みを事業会社側が用意するべきではないかと。たとえば私自身は、eiiconの立ち上げのときに、会社を辞めることに別に未練も怖さもありませんでした。自分で始めてもいいし、会社が立ち上げを支援してくれるならありがたい、くらいの感じ。自分でその事業をやりたい、こういう世界を実現したいという意思、マインドの強さは他のスタートアップや起業家、経営者にも負けているとは思っていません。自信は全くありませんでしたが、チャレンジすることに迷いはありませんでした。

 ただ、すべての人がそういうイントレプレナーマインドを最初から持てるかというと、そうではないですよね。だからこそ、もう少しイントレプレナーが生まれやすい仕組みを会社側が用意するといいと思うんです。ちょっとした課題を見つけて、人生をかけるほどじゃないかもしれないけれどやってみたいな……くらいの気持ちの人もスタートを切れる仕組みを作るべきだろうなと思っています。

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——ありがとうございます。それでは、中村さんが尊敬する他社のイントレプレナーをご紹介いただけますでしょうか。

 イントレプレナーも、オープンイノベーションと同様で言葉が独り歩きしている節もあると思っていて。ただの新規事業部署の担当を指すケースもあると思うんですが、私の中での定義は、確固たるアントレプレナーシップ(起業家マインド)を持った、企業内発起業家です。

 起業したからには、いかに事業をスケールさせるかを日夜考え続けますし、泥臭く現場で実践もし続ける。その意味でいろいろなお話で共感しあえ、一方で大尊敬している阿久津智紀さん(JR東日本スタートアップのシニアマネージャー/TOUCH TO GO代表取締役社長)をつなぎます。

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