大日本印刷(DNP)は3月23日、現実(リアル)の街と並列(パラレル)で仮想(バーチャル)の街・施設を開発する、自治体や施設管理者公認の「XR(eXtended Reality)コミュニケーション事業」を開始すると発表した。
DNPは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)など、リアルとバーチャルの融合によって、現実の地域や施設が持つ価値や機能を拡張し、生活者に新しい体験価値を提供することで、地域創生につなげる「地域共創型XRまちづくりPARALLEL CITY(パラレルシティ)」を推進する。
XRコミュニケーション事業は、同社の表現技術と大量の情報を処理する能力に、パートナーの強みを掛け合わせて、年齢・性別・言語などによって分け隔てられることなく、リアルとバーチャルの双方を行き来できる新しい体験と、経済圏を創出するというもの。
PARALLEL CITYの推進にあたり、DNPはXRロケーションシステム「PARALLEL SITE(パラレルサイト)」を提供するとともに、地域創生事業で培ったノウハウやネットワークなどを活かし、PARALLEL SITEを活用した地域共創型のバーチャル空間を構築する。
また、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツホルダーと協業し、リアルとバーチャル双方の多様な表現手法を使って、コンテンツの魅力を発信する事業を推進。デジタル処理技術を活用した、国内外の美術館・博物館の所蔵作品や有形・無形の文化遺産に関するアーカイブ事業と、それらのデータをさまざまなメディアに展開する事業も推進する。
DNPは、これらのコンテンツとXRコミュニケーションを掛け合わせ、生活者が多様な文化に触れて楽しみながら学べる新しい体験価値を創出し、地域の空間と連動したイベントなども企画する予定だ。
さらに、コロナ禍で求められる非対面・非接触のコミュニケーションに対応する、新たなコミュニケーションサービスを提供。すでに展開しているリアルとバーチャルが連動して買い物が楽しめる「リテールテイメント」や、仮想空間での体験や鑑賞を実現する「バーチャル展示会」に加え、これらのサービスとPARALLEL SITEで構築した自治体や施設管理者の公認空間と連動させることで、地域交流の場を拡張する。
PARALLEL CITYの第1弾として、札幌市北3条広場(アカプラ)と、渋谷区立宮下公園の2拠点を、2021年中に立ち上げる予定。札幌市北3条広場は、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)とイチョウ並木のある広場で、札幌駅前通まちづくりと連携し、リアルとデジタルの連携によるエリアマネジメント活動に取り組む。渋谷区立宮下公園は、2020年7月に開かれた公園で、新たな渋谷の文化・カルチャーの発信拠点としての価値を拡張させることを目的に、渋谷未来デザインと連携し、リアルな公園とバーチャル空間を連動させた空間を構築する。
大日本印刷 専務執行役員の蟇田栄氏は「新型コロナの感染拡大により、生活者の移動などが制限され、テレワークやオンライン配信といった、バーチャルを活用したサービスが急速に浸透した。かつて活版印刷は、ペストの流行を背景に、コミュニケーション手段として発達していったと言われている。新型コロナの感染拡大により、バーチャルによるコミュニケーション技術の普及が加速すると見られる。そのときに、誰もが安心して楽しめる状況を作り上げることが大事。DNPは高度なセキュリティ事業の運用に加え、多くのコンテンツ管理に携わってきた。それを強みに、一過性ではなく、持続可能な空間構築をDNPが支えられると考えている」とコメントした。
今後は2025年までに全国30拠点の構築を目指し、各地の公認空間を基軸に、さまざまなXRコミュニケーション事業を展開して、2025年度までに関連事業も含めて100億円の売上を目指すとしている。
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