ヤフーとLINEの経営統合が完了--新生ZHDが「集中領域」に掲げた4分野とは - (page 2)

2021年中に行政手続きのオンライン申請をスタート

 両社とも、行政や自治体と連携した取り組みを数多く手掛けており、特に新型コロナウイルスの感染拡大以降、ワクチン接種予約システムの構築や厚労省と実施した大規模アンケート調査など、より一歩踏み込んだデジタル活用を支援している。今回、新生ZHDでは集中領域の社会カテゴリとして、行政DX、防災、ヘルスケアを挙げ、インターネットを使った課題解決を目指す。

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ワクチン接種予約システムはすでに200自治体で導入

 行政DXでは、2021年中にYahoo! JAPANのサービスやLINEで網羅的かつユーザビリティに優れたオンラインでの手続き情報の拡充と、内閣府の「マイナポータル」と連携した、行政手続きのオンライン申請サービスを開始。まずは、児童手当や介護といった手続きから順次拡充していくという。

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2021年中にマイナポータルと連携したオンライン申請サービスを提供へ

 防災についても両社が力を入れて取り組んでおり、ヤフーでは「Yahoo!防災アプリ」などの提供、LINEでは災害時モードの実装など知見を貯めている分野だ。今回、平時における生活エリアの危険度チェック、災害警戒時のパーソナルタイムライン、災害発生時の避難経路の案内、復旧・復興時の支援マッチングなど、防災に関するさまざまなステージでの情報提供を実現する。

 ヘルスケアでは、LINEヘルスケアが提供するLINEドクターを起点に、オンライン診療や服薬指導、薬の配送サービスまでを新たに展開することで、遠隔診療サービスの普及を目指す。そのための一歩として、2021年度中にオンラインの服薬指導を開始するという。

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AIに5年間で5000億円投資、2023年度は売上収益2兆円規模へ

 こうした集中領域の強化に必要なエンジンとして、ZHD代表取締役社長 Co-CEOの川邊健太郎氏(元ZHD代表取締役社長CEO)、同社代表取締役 Co-CEOの出澤剛氏(元LINE代表取締役社長CEO)がより力を入れていくと宣言したのが、AIへの投資である。ZHDでは、今後5年間で5000億円を投資するほか、5年間で5000人のAI活用に関わる国内外のエンジニアを増員予定という。

 海外展開にも本腰を入れる。すでにLINEの利用が多い台湾、タイ、インドネシアを起点として、日本での成功事例を各国に展開したり、各国での成功事例を日本に持ち込むことも検討。ソフトバンクやNAVERのネットワークも生かして、それ以外の海外展開も狙うという。インドPaytmの技術をベースにしたPayPayのように、ソフトバンク・ビジョン・ファンドやNAVERのリソースも国内サービスに取り込む予定だ。

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台湾でLINE Payはトップのキャッシュレスブランドになっている
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ソフトバンク・ビジョン・ファンドとNAVERのリソースを生かしつつ、海外展開にも本腰を入れる

 そのほか、ユーザーからの課題やサービス、機能を募る「課題解決ボックスを」も期間限定で設置。ユーザーの声をサービスに反映させる。

 こうした新体制のもと、2023年度の売上収益を2兆円、営業利益は2250億円の過去最高益を目指すとしている。

新生ZHDは海外の巨大IT勢に対抗できるのか

 2019年のヤフーとLINEの統合会見にて、両氏は統合する背景として「共通して持つ大きな志」とGAFAやBAT(Baidu、Alibaba、Tencentの中国IT勢)といった「グローバルテックジャイアントの存在」を挙げており、川邊氏は、会見中に何度も「アジアを代表するAIテックカンパニーになる」とビジョンを語っていた。

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海外のテックジャイアントと比べると、ヤフーLINE勢は規模が小さい(2019年11月の統合会見より)

 それから1年半近く経ち現状はどのように変化したのか。川邊氏は、「コロナ禍により、世界レベルで見るとGAFAやBATなどと基本的な体力差はむしろ開いたと思っている」と説明。一方で、テックジャイアントと戦う上で今後重要になる2つのポイントとして「ローカルに根ざした対応力の強化」と「グループの守備範囲の広さ」を挙げる。

 前者は、日本に根ざしたローカライズ力を指す。「例えば、給付金のもらい方などの検索結果を見ると、グーグルよりもヤフーの方が詳細がわかりやすいといったユーザーの支持を頂いた」という。後者は、グループの総合力に関するもので、「検索、EC、メッセンジャー、決済、金融、親会社まで含めると携帯電話サービスまで幅広くやっているのGAFAやBATにもない特徴」と強調した。

 出澤氏も、「ユーザーから見ると、どこの会社が提供しているかは関係なく、便利かどうかがすべて」とし、「日本では大きな問題だがグローバルではそれほど困っていない点もたくさんあるはず。日本やアジアのユーザーが困っている点、不便な点に真剣に向き合って取り組む。同質化ではなく差別化していくのが我々のアプローチ」と、テックジャイアントとは違う戦い方を示した。

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川邊氏と出澤氏は、ヤフーとLINEのコーポレートカラーが合わさった同じネクタイを着用していた

 また、統合までの1年4カ月の間に、両社のカルチャーでどういった発見があったかという質問に対して川邊氏は、「LINEのほうが社会課題の解決に突っ込む力がある」とし、「ダイヤモンド・プリンセス号に何百台ものスマホを持ち込み、LINEドクターを入れて乗客に健康相談を提供できた 。もう一つは全国一斉健康アンケート。すぐにレスポンスが貰えるというユーザーとの協働関係は非常に素晴らしい。あらたなデータの可能性を解き放つ」と評価した。

 出澤氏は、「非常に大きい会社ではあるが、経営陣の意思決定が早い」と説明。「コロナ禍で直接会えない状況だったが、オンラインミーティングは、コロナ以前よりも頻繁で朝から晩まで川邊さんや役員メンバーと話す機会があった」という。さらに、「どうやって社員とマネジメント側が気持ちを通じさせるかのコミュニケーション設計がすごい。1on1ミーティングも川邊さんに教わった。役員間の情報共有の仕方やメンタリング、コーチングなど最先端の取り組みも参考になった」と評価。LINE側では「やりたくても手が回っていなかったところ」だったという。

 続けて、「社員にパッションがあって非常に優秀な人と会えた。(LINEでも)良いメンバーと仕事できている自負はあるが、会う方々が非常に優秀で、楽しみにできた1年4カ月。この2社が力を合わせれば非常に良いことができる」と今後に期待を寄せた。

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