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「緊急的にでも20代のユーザーを取り戻す」--ドコモが「ahamo」を投入する狙い

山川晶之 (編集部)2020年12月04日 16時30分
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 発表と同時に大きな話題となったNTTドコモの新プラン「ahamo」。一番のトピックは、同社のメインブランドで20GB月額2980円(税別)を実現したことだろう。KDDIやソフトバンクがすでに発表している20GBプランはサブブランド(UQ mobileとY!モバイル)での提供で回線は4Gのみ。ahamoは、5G対応に加えて通信料も2社と比べて安価であり、ソフトバンク傘下のMVNO「LINEモバイル」の最大容量プランと比べても安い(音声通話+12GBで月額3280円)。

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 エポックメイキングなプランではあるが、中身もこれまでの同社のプランとは一線を画している。新規契約や解約手数料、MNP転出手数料などは設けておらず、手続きも基本的にスマートフォンアプリ完結で、eKYCによる本人確認など非対面で手続きが完了する。こうした完全オンライン化によるサポートコストの削減により低価格を実現しつつも、回線速度はドコモの他のプランと同様。82カ国での海外ローミングや5分間の無制限通話、テザリングも追加費用なしで利用できる。

 この料金を実現した代わりに手放したものもある。完全オンラインと説明した通り、基本的にドコモショップでのサポートは受けられない。スマートフォンも、SIMフリーモデルやahamo向けにラインナップ予定の端末を使用する想定となっており、既存のドコモ向け端末をショップで購入することはできるものの、その後の手続きはユーザー自身でアプリから行う必要がある。また、キャリアメールや端末割引の廃止、ファミリー割の設定不可など、デジタルリテラシーのある若年層かつ独身世帯の利用を念頭に置いている。

「緊急的にでも20代のユーザーを取り戻す」

 なぜ、この尖ったプランの提供にいたったのか。12月にドコモの代表取締役社長に就任したばかりの井伊基之氏は、これまでドコモが苦手としていた若年層へのアプローチ強化を挙げる。「当社はこの層(20代)のお客様に大変弱く、他社にどんどん取られている。そこにぴったりなプランがなかった」とし、「他社よりも競争力があるものを打ち出さないとお客様が取れない。切実な競争戦略でこの価格をつけた」と語る。

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12月にNTTドコモ代表取締役社長に就任した井伊基之氏

 ドコモの現在のプランでは、大容量のデータ通信が可能な「ギガホ」と、低容量での利用を想定した「ギガライト」の2プラン体制となっており、20GBクラスの中容量プランが抜け落ちていた。そこに、ドコモならではの回線品質とデジタルネイティブ世代には不要とも言える手厚いサポートを削ぎ落としたプランを用意することで、安価かつ大量のデータ通信を必要とする若年層のニーズに応えた形だ。ドコモは20年前から長期契約しているような高齢のユーザー層が厚い。「今の20代は30代、40代と中心的な世代となっていく。今負けるとずっと負けたままになる。緊急的にでも20代を取り戻さなければ10年、20年後もその層が低いまま」と井伊氏は危機感をあらわにする。

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ドコモでは、「ギガホ」「ギガライト」をプレミアプラン、「ahamo」をニュープランと位置付けてドコモで展開。そのほか、エコノミープランとして、MVNOと協業した低廉かつ低価格なプランも導入するという

 なお、20代を惹きつけるための戦略としてデジタルネイティブをコンセプトとしたものの、年齢制限などは設けておらず20歳以上であれば誰でも契約できる。そのため、ahamoのローンチ後に起こりうる問題として、オンラインのみでのサポートを掲げたところで、結局なし崩し的にドコモショップでサポートする可能性は捨てきれない。これについて同氏は、「コンセプトはウェブでサクサク簡単に手続きでき、リモート型社会でコンタクトせずにやりたいことがやり遂げられる仕組みを本気で作ること」としつつも、「どうしてもそれができない場合は助けないといけない」と付け加えた。

サブブランドの痕跡もあるが井伊社長は否定

 今回の新プランでは、ところどころサブブランドを想起させる“痕跡”がある。サービス自体は3月からスタートするが、5月までは既存のドコモユーザーがプラン変更する際にもMNPと同じ手続きを取る必要がある(手数料などは不要)ほか、発表会で投影された資料のスマートフォン画像のアンテナピクトの横には「ahamo」と書かれてある(通常であればdocomoと表示される)。同プラン専用の端末ラインナップが別途用意されるのも他社のサブブランドと似ている。

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ドコモの既存ユーザーであっても5月まではプランの以降にMNPと同様の手続きが必要(手数料などは不要)
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投影された資料には、アンテナピクトの横に「ahamo」の文字

 しかし井伊氏は、サブブランドではないと否定。あくまでもサブブランドは作らず、ユーザーの使い方にあわせてメインプランを複数作る方針としており、ahamoもメインプランの一つと強調する。「ブランドはお客様が価値を決めるもの。キャリア側がメインブランドです、サブブランドですと決めるものではない。従来はそうだったのかもしれないが、ドコモはそう考えたくない」とし、「20代にとってはこれ(ahamo)がメインプランになる。このプランが支持を受けたのならそれがブランドになるだろう」と述べた。また、既存ユーザーのプラン移行については、「3月から始めたかったがシステムが間に合わなかった。1カ月だけごめんなさい」と釈明した。

 なお、20GBかつ低価格のプラン投入は、政府による携帯電話料金引き下げの要請に沿った形に見えるが、井伊社長は「政府の要請というよりは、当社の競争戦略上の打ち手。20代のメインブランドとして打ち出した」という。「武田総務大臣の会見での発言の通り、コロナ禍の時代にスマホの活用が促進されている。リモート型社会のなかで、よりよい料金を提供するべきだという意見はごもっともだと思う。去年の6月に新料金プランを導入したが、競争的には十分じゃなかった。政府が仰るのは国民の声を反映されているのだろうし、競争戦略上そこ(若年層)に打って出なければ我々の三番手はずっと続く」と述べ、あくまでも政府は競争政策を促進するスタンスとの見解を示した。

目指すは「トップへの返り咲き」

 井伊社長による新体制の象徴に見えるahamoだが、プランの策定は社長就任前から検討していたものだという。同氏は、「コロナも含めリモート時代への対応を早くしなければ(若年層のユーザーを)どんどん失っていくだろうという危機感があった。ドコモとしては、1年以上前から20GBをターゲットとした戦略を検討していたが、その具現化を早めた」という。コンセプト決めから若年層へのヒアリング、サービス内容やUI/UXの仕様までをすべて若手社員が中心となって進め、20代に選んでもらえるようなサービスを目指した。

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サービスを取りまとめたNTTドコモサービスデザイン部の佐々木千枝氏。若年層プランの投入は経営判断によるものだが、内容はボトムアップで進めた

 井伊氏は、最終的な目標として「三番手と言われないよう、トップに返り咲きたい」とMNOの最下位脱却を宣言。ドコモでは、ahamoに加え、MVNOと協業して進める低廉・小容量のエコノミープランの提供、ギガホやギガライトの値下げを含んだ改定を予定しており、一人当たりの通信費低下は避けられない。しかし、こうした料金プランの改革によるユーザー数の増加、IoTや自動運転など違う領域での通信増を見込んでおり、コンシューマー向けの対策としてコンテンツの強化も目指すという。

 「映画や劇場、スポーツ観戦が不自由な時代となっており、ネット上で簡単に視聴できるようなリモート時代のサービスを展開する」としており、「減収する通信費を非通信サービスでどう埋めていくかが事業経営者の責務」と今後の意気込みを示した。

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