現在、Moderna、Pfizer、AstraZenecaなどの製薬会社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を予防するワクチンの開発に取り組んでいる。だが、これらのワクチンは遺伝的に黒人やアジア人の系統の人に投与しても、白人と比べて十分な免疫が得られない可能性があるとする研究論文を、マサチューセッツ工科大学(MIT)が米国時間12月2日に公開した。
この論文の著者の1人、David K. Gifford氏は、MITが発表したプレスリリースで、「もちろん、他にも考えるべき因子は数多くあるが、われわれの暫定的な結果によると、黒人とアジア人の系統の人はワクチンが効かないリスクが平均して少しだけ高くなるおそれがあることが示された」と述べている。Gifford氏はMITのコンピューター科学・人工知能研究所(CSAIL)に所属する研究者だ。
この論文は「Predicted Cellular Immunity Population Coverage Gaps for SARS-CoV-2 Subunit Vaccines and their Augmentation by Compact Peptide Sets」(SARS-CoV-2サブユニットワクチンにおける細胞性免疫の人口カバー率の差の予測およびコンパクトなペプチドセットによるその拡大)と題されている。プレプリントサーバーのbioRxivで公開されており、まだ査読を受けていない。そのため、この論文に掲載されている知見の取り扱いについては特に注意しなければならない。
Moderna、Pfizer、AstraZenecaのものを含め、このウイルスのワクチンの多くが、同じ弱点を持っていると、MITの論文は指摘する。その弱点とは、ワクチン開発に使われるウイルス粒子セットの多様性が不十分で、さまざまな遺伝子構成を持つすべての人から同レベルの免疫反応を引き出すことができないという点だ。
この研究はコンピューターモデルをもとにしている。Gifford氏、さらに論文の共著者のGe LiuとBrandon Carterの両氏(2人ともCSAILの博士課程に所属)は、患者データと免疫系内のタンパク質のモデルに基づき、民族分類や遺伝子上系統(被験者の自己申告による)に基づくさまざまな集団について、ワクチンが「ヒット」する(つまり免疫反応の促進に成功する)可能性を、機械学習モデルを使って予測した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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