NTTのドコモ子会社化に「異議あり」--通信事業者28社が総務大臣に意見申請書を提出

 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど電気通信事業を営む28社は11月11日、日本電信電話(NTT持株)によるNTTドコモの完全子会社化に対して、公正な競争環境の整備を目的とした意見申請書を総務大臣に提出した。なお、趣旨に賛同した企業は37社に上る。

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37社を代表してKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが会見を開いた
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意見書を提出した28社と趣旨に賛同した37社

 意見書の内容は、情報通信審議会または同等の場での公開の議論、環境変化に応じた競争ルールの整備の大きく2つ。NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)で定められたNTT持株の目的や事業内容には、移動体通信業に関するものは入っておらず、子会社化はそぐわないとの趣旨を示したほか、NTTグループ内の連携が深まることで、強大な市場支配力による電気通信市場の公正な競争が阻害され、最終的にはユーザーの利益を損なう可能性があると指摘している。

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情報通信審議会または同等の場での公開の議論、環境変化に応じた競争ルールの整備を求める
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NTTグループの統合で巨大なユーザー基盤を持つ通信事業者が誕生することに

 NTTは1985年に民営化され、公正競争に関する政策的議論を経て1988年にNTTデータ、1992年にNTTドコモ、1997年にNTTコムウェアが分社化。1999年のNTT再編では、NTT持株、NTT東・西、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の4事業に分割。さらに、分社化した企業の完全民営化を目指すべく、出資比率の低下とNTTグループ内の相互競争実現に向け、2001年に規制改革推進3か年計画が閣議決定されている。完全子会社化はこれに真っ向から逆行することになると各社は指摘する。

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NTT法で定められたNTT持株の目的や事業内容には、移動体通信業に関するものは入っていないと指摘
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NTT再編の歴史

ドコモ子会社化で何が問題になるのか

 完全子会社化が実現したら具体的にどういった問題が出てくるのだろうか。3社は想定される事例として、NTT東・西が貸し出す光ファイバーの卸価格の高止まりや、NTTグループに有利な接続ルールの条件提示などを挙げる。基地局と接続するボトルネックには光ファイバーが利用されており、飛距離の問題から基地局の密度が高くなる5Gではボトルネックの重要度は増す。その光ファイバー網は設備ベースでNTT東・西が75%のシェアを持っており、通信各社はNTT東・西の設備を借りる立場にある。

 その場合、ボトルネック設備の接続ルールなど見た目は公平性を担保していても、インターフェイスや仕様がNTTグループに有利な条件となったり、ファイアウォールが形骸化する可能性があるほか、NTT東・西とドコモ間の人的交流により、接続ルールや卸役務に関する情報の同等性が確保されない問題があるという。また、NTTドコモと競争事業者とで同等条件である場合でも、高額の卸価格が設定されることで、競争事業者の排除が実現できてしまうと指摘する。両者に高額な卸価格を設定したとして、ドコモの場合はグループ間で資金が移動するだけで、NTTグループとしては利益の最大化が可能になるという考えだ。

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ドコモ完全子会社化で事業者間の排除を狙った卸価格の設定が可能になるとする
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情報の同等性も確保できないとする

 そのため、環境変化に応じたルールの整備として、NTT東・西とNTTドコモが一体化することがあってはならないとの趣旨を示し、NTTグループと競争事業者がNTT東・西の光ファイバー網を完全に同等な条件・環境で利用できることを求めるほか、ボトルネック設備の接続ルール・卸役務利用についてのより厳格な運用が必要になるとしている。

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NTTグループに有利な条件が発生しづらい仕組み作りが必要になる

 楽天モバイル執行役員 渉外部長の鴻池庸一郎氏は、「楽天モバイルは新規事業者で、NTTとの関わりは重要」とし、「基地局建設は、伝送設備の設置場所、GC局、GC局を結ぶ光ファイバーをお借りしている。料金が高止まりすることで、これから競争事業者として新規参入する事業者についても、公正かつ競争する環境が阻害される懸念がある」と述べた。

NTTのドコモ子会社化はGAFA対抗が目的

 NTTでは、ドコモを子会社化する理由として競争環境の変化を挙げている。情報通信分野ではGAFAなどの海外IT大手が台頭しており、サービスレイヤーでのNTTの存在感は薄い。同社では、NTTコムウェアやNTTコミュニケーションズをドコモの傘下に移管することも検討しており、ドコモを上位レイヤーやビジネスまでを含めた総合ICT企業に進化させることで、中核企業としてNTTグループ全体の成長を目指すとしている。

 2社の移管についてソフトバンク渉外本部 本部長 渉外担当役員代理の松井敏彦氏は、「コンシューマーはNTTドコモ、エンタープライズはNTTコム、東・西が光ファイバーなどのボトルネックを担当し、NTT持株が全体をコントロールするという一体化が実現される」と、巨大なNTTの復活を懸念。「何らかの連携が進むのであれば、禁止行為規制の強化やお互いのファイアウォールの明確化など追加施策が必要になる」との考えを示した。

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NTTコミュニケーションズのドコモ傘下入りについても危機感を示している

 なお、すでにNTT持株によるNTTドコモのTOBは進んでおり、止めることは現実的に難しい。KDDI理事 渉外広報本部 副本部長の岸田隆司氏は、「通常であれば審議会で議論された中で進んでいくものが、TOBが先行してしまっており順番が逆になっている。TOBが終わった後でもきちんと議論したい」と語る。総務省には、公での議論の場と競争ルールの整備を求めているが、今後の状況によっては、総務省以外へのアクションとして公正取引委員会への対応も検討するとしている。

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