Beats by Dr. Dreがイヤホンのボリュームゾーンに新製品を投入した。10月に発売した「Beats Flex ワイヤレスイヤフォン」(Beats Flex)の価格は5400円。Beats by Dr. Dreとしては最も低価格のイヤホンになる。
Beats Flexは、2017年に発売した「BeatsX」同様に、左右のイヤホン部をケーブルでつないだワイヤレスモデル。「開発する上で念頭に置いたのは、高品質とユーザービリティ。そして価格を下げること」とBeats by Dr. Dreは開発のポイントを話す。
イヤホン市場は「AirPods」など完全ワイヤレスモデルが牽引し、対前年比で13%増を記録している。完全ワイヤレスモデルの需要が年々強くなる中、価格的なボリュームゾーンになっているのが50ドル以下。グローバルで見ても75%がこの価格帯のモデルにあたるという。
Beats by Dr. Dreでは、50ドル以下のモデルが市場の大半を占めるというデータを元に新モデルの企画をスタート。このゾーンでは、約6割が有線モデルだが、2019年における有線ヘッドホン、イヤホンの販売台数は対前年比で14%減。この数字は2016年にiPhoneのイヤホンジャックがなくなって以来、減少傾向をたどっている。スマートフォン自体にも付属のイヤホンが同梱されなくなるなど、低価格モデルにおいてもワイヤレス化の波は押し寄せてきている。
一方、低価格イヤホン市場の全体を見ると、買い替え頻度の高さが目立つ。「イヤホンがすぐに壊れてしまうため買い替え頻度が高い。そのため販売台数が多い。これが低価格イヤホンが全体の売上を占める割合が高い理由の一つ」と分析する。
こうした分析結果を踏まえBeats by Dr. Dreでは低価格イヤホンの企画を練り込む。すると「有線からワイヤレスモデルへの買い替えを検討しているユーザーも多いが、ワイヤレス接続の煩わしさや充電がネックになっている」ことが見えてきたという。
また、壊れやすいため買い替え頻度が高いことにも注目。「低価格モデルを使っているユーザーは、イヤホンはすぐに壊れるというイメージを拭い去れない。お金を出して買っているのに、すぐに壊れてしまう体験を重ねるのは避けたい」と指摘する。
市場調査から導き出された製品コンセプトは、価格を抑えながらも高品質。「接続性、音質、通話性能はもちろん、ボタンの感触や感度に至るまで、ほかのBeats by Dr. Dre製品同様の体験を実現しなければならない。それらを実現させた上で、お求めやすい価格にする」という高いハードルが課された。
Beats Flexの開発においてベースになったのはBeatsXだ。「BeatsXが人気モデルとして成功していたので、コストを徹底的に分析し、ユーザーのヒアリング調査も実施した。素材の品質を抑えれば価格が下がることはわかっていたが、妥協できない部分があり、その一つがニチノール製のケーブル」とこだわりの部分を説明する。
ニチノール製のケーブルは、左右のイヤホンをつなぐネックバンドの素材に採用されており、BeatsXも同様。耐久性が高くしなやかなため、くるくると丸めてポケットやかばんに入れられる。記憶合金のためすぐに同じ形に戻ることもメリットだ。
「イヤホンは1日中装着できるような快適性が必要。そのためにもニチノール製のケーブルはどうしても必要だった。加えてユーザー調査から見えてきたのがユーザービリティだ。BeatsXからイヤホン同士をマグネットで連結できるようにしていたが、ここにもうひと工夫加えることで、より使いやすくできないかと意見をもらった」という。
これが今回初搭載された、自動再生、一時停止機能につながった。マグネット部を連結させると自動で音楽の再生が停止し、再度耳に装着すると音楽の再生が始まるというもの。iPhoneだけでなくAndroid OSでも同様に機能し、ユーザーは音楽の停止をボタン操作せずにスムーズにできることが特徴。「音楽の再生だけでなく、通話でも同様に使える」と便利さを追求する。
音質にもこだわる。「50ドル以下のイヤホンは基本的に音質について触れることが少ないが、Beats by Dr. Dreは低価格帯とは言え、音質を追求しなくてはいけない。チューニングについてはものすごい労力をつぎ込んだ」とする。
今回搭載しているのは新規設計のカスタムドライバーだ。完全ワイヤレスモデルである「Powerbeats Pro」に近い、複層構造で、各層が分離して独自に振動するため、低音の再現性と音の歪みに強いことが特徴。それに加え、レーザーでカットした微細な通気孔を設けることで、音にメリハリが出て、音質が向上するという。
「ユーザーが聴くジャンルを問わず、バランスの良いサウンドを再生することがBeats Flexの特徴。どんなアーティストの音楽を聴いても楽しめるはず」とBeats by Dr. Dreは胸を張る。加えて「音楽再生と同様に通話性能も重要。マイク、風切り音フィルター、新しいチューニングアルゴリズムの3点によって、通話品質も向上している。特に、BeatsXでケーブルの途中にあったマイクの位置をバッテリー部に持ってくることで、よりクリアに声を拾えるようになった」と進化点を挙げた。
本体には「W1チップ」を組み込み、Apple製品とシームレスなつながりもサポート。電源を入れ、iPhoneやiPadを近づけるだけで接続でき、「接続が心配」とするユーザーの不安をテクノロジーで解決する。新たなバッテリーセルを用いることで、最大12時間の再生も実現。充電の煩わしさからもユーザーを解放した。加えて、充電端子をLightning端子からUSB Type Cに変更。「過去にUSB Type-Aなどを使っている端末もあったが、USB Type C接続の機器が増えている今、早めにC対応にすることで、廃棄ロスも防げる」とする。
50ドル以下という新たなチャレンジをしたBeats Flexは、低価格を実現しながら、機能も音質も犠牲にしない、高品質なイヤホンに仕上げることで、ボリュームゾーンの音楽体験を変える。
名称のFlexは、1つの作業から別の作業に切り替えるという意味を持ち、音楽を聴く、通話をする、映像を見るなど、次々に切り替わる使い方を示しているとのこと。
低価格市場にBeats Flexを持って切り込んだBeats by Dr. Dre。今後も同価格に近しいモデルの登場が期待される。
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