KDDI、「iPhone 12」の発売に向け新戦略--若者向けの5G学割プランなど発表

 KDDIは10月16日、auブランドの新サービスに関する記者発表会を開催。新モデルとなる「iPhone12」シリーズの発売に向け、さまざまな施策を打ち出した。

10月16日の発表会に登壇するKDDIの高橋氏。iPhone 12シリーズ全機種が5Gに対応したことで、改めて今後auから提供されるスマートフォン全機種を5Gにするとした
10月16日の発表会に登壇するKDDIの高橋氏。iPhone 12シリーズ全機種が5Gに対応したことで、改めて今後auから提供されるスマートフォン全機種を5Gにするとした

 同社代表取締役社長の高橋誠氏はまず、新iPhoneの販売施策を説明。同社では10月15日より、対象の5Gスマートフォンへの機種変更で機種代金を5500円割り引く「5G秋トクキャンペーン」を実施しているが、iPhone 12シリーズにもそれを適用することを発表した。

 これにより、「iPhone 12」の64GBモデルは9万7930円、「iPhone 12 Pro」の128GBモデルは12万1995円となり、「非常にお求めやすい価格設定にしたつもり」と高橋氏は胸を張る。さらに端末購入プログラムの「かえトクプログラム」の適用により、それぞれ月当たりの支払額は2170円、2705円になるとのことだ。

auブランドから販売されるiPhoneの価格。「5G秋トクキャンペーン」などによって購入しやすい価格にしたとのこと
auブランドから販売されるiPhoneの価格。「5G秋トクキャンペーン」などによって購入しやすい価格にしたとのこと

 さらに高橋氏は、iPhone 12が全機種5Gに対応したことを受けて5Gのエリア展開についても説明。9月末時点では42都道府県に5G基地局を設置していることから、2020年内に残りの5都道府県にも基地局を設置して“全国制覇”したいとしている。また、その後は2021年度末に約5万局を整備するという方針は変わっていないものの、それと同時に全国の人口カバー率を90%にまで広げることを明らかにした。

 高橋氏は、4Gの既存周波数帯の活用についても言及。既存帯域の5Gでの利用について総務省に了承を得たことから、4G向けの帯域を積極活用してエリア拡大を加速していくとしている。iPhone 12ではKDDIが免許を保有する周波数帯うち、3.7GHz帯、3.5GHz帯、2.1GHz帯、1.7GHz帯、700MHz帯の5つを5G用としてサポートしていることから、これを積極活用してエリアを広げていくと見られる。

iPhone 12の5GはKDDIの5つの周波数帯に対応することから、今後4G向け周波数帯の活用を積極化、2021年度末までに約5万局を整備して人口カバー率90%を実現するという
iPhone 12の5GはKDDIの5つの周波数帯に対応することから、今後4G向け周波数帯の活用を積極化、2021年度末までに約5万局を整備して人口カバー率90%を実現するという

 もう1つ、高橋氏は5Gでは「データ使い放題が当たり前の時代になったと思っている」と話し、「データMAX 5G」などの使い放題プランについても言及。auでは「データMAX 5G Netflixパック」などのサービスをバンドルした料金プランを中心に加入者が増えているそうで、その客層を見ると29歳以下の若い世代が約65%と、圧倒的に支持されているとのこと。そのため、若い世代に5Gをもっと体験してもらうべく、新たな施策として「auワイド学割」を発表した。

 これは、29歳以下のauユーザーを対象とした割引サービスで、申し込んだ翌月から6カ月間、使い放題のプランを月額1000〜1600円割り引くもの。中でも割引額が1600円と大きいのが「データMAX 5G Netflixパック」「データMAX 5G テレビパック」の2つで、高橋氏もこの2つのプランに関しては「若い人から『このサービスがいいぞ』と思ってもらいたい」と、こだわった割引き額を実現したという。

「auワイド学割」の概要。29歳以下の使い放題プラン契約者の料金を6か月間割引くもので、「データMAX 5G Netflixパック」などは月額1600円引きとなる
「auワイド学割」の概要。29歳以下の使い放題プラン契約者の料金を6か月間割引くもので、「データMAX 5G Netflixパック」などは月額1600円引きとなる

 高橋氏は、iPhone 12に関連した施策としてもう1つ、5Gネットワークとの連携を打ち出した。iPhone 12は状況に応じて5Gと4Gのネットワークを切り替えることで、高速通信と長時間駆動を実現する「スマートデータモード」を搭載しているが、これはアップルと携帯電話会社が共同でネットワークをチューニングすることによって実現できるものだという。

 そのため、この機能を実現しているのは、iPhoneを販売する携帯電話会社の中でも数少ない企業だという。その1社としてKDDIは名を連ねており、同社でもアップルと「ベストなチューニングをした」(高橋氏)と話している。

消費電力を抑えながら5Gによる高速通信を活用できる、iPhone 12の「スマートデータモード」は携帯電話会社と共同で実現するもので、KDDIも対応する1社となっている
消費電力を抑えながら5Gによる高速通信を活用できる、iPhone 12の「スマートデータモード」は携帯電話会社と共同で実現するもので、KDDIも対応する1社となっている

 また、KDDIはiPhone 12の発売に合わせて「au 5Gエクスペリエンス」も打ち出している。これはスマートデータモードが、ネットワーク経由でユーザーが使い放題プランを契約しているかどうかを判別する仕組みを備えていることを活用した機能。「データMAX 5G」など使い放題の料金プラン利用者がiPhone 12を使って5Gエリア内で通信をすると、動画の品質が自動的に高画質になるという。

 そのため、当初対応するのはiPhoneに限られるが、将来的にはAndroid端末にも広げてきたいとのこと。なお、対応するコンテンツは、アップルの「Apple Music」「FaceTime」のほか、10月23日には「TELASA」が対応するとのこと。さらに11月には「SPORTS BULL」、12月以降には「smash.」「auスマートパスプレミアム」が対応予定だという。

「au 5Gエクスペリエンス」は、使い放題プランを使った通信かどうかをiPhone 12が判定できることを利用し、使い放題かつ5Gの通信時は高画質の映像配信などを実現できるものになる
「au 5Gエクスペリエンス」は、使い放題プランを使った通信かどうかをiPhone 12が判定できることを利用し、使い放題かつ5Gの通信時は高画質の映像配信などを実現できるものになる

 高橋氏は、この仕組みは「アンリミテッド(使い放題)でないと提供できない」と説明。国内の5Gサービスで使い放題のプランを正式に提供しているKDDIだけが実現できるサービスだとアピールしている。さらに、高橋氏はコンテンツを提供する事業者に対しても、ネットワークの制約を気にする必要なく高画質のコンテンツ配信に対応しやすくなるとし、積極的な対応を訴えた。

 また今回の発表会では、iPhone 12だけでなくApple Watch向けの施策にも改めて言及。Apple Watchの取扱店舗を550店舗から1400店舗に拡大することや、iPhoneを持っていない家族がApple Watchを使えるようにする「ウォッチナンバー」をauだけが提供していることなどをアピールした。高橋氏はApple Watchが提供する機能を活用した未来の健康をサポートするオリジナルサービスを、自治体や医療機関などと開拓していきたいと話しており、そのためにもApple Watchの販売を積極的にサポートしていきたいとしている。

iPhone 12の発売に当たってApple Watchに関する施策も改めてアピール。ウォッチナンバー機能への積極対応などで販売を拡大していく方針のようだ
iPhone 12の発売に当たってApple Watchに関する施策も改めてアピール。ウォッチナンバー機能への積極対応などで販売を拡大していく方針のようだ

 さらに高橋氏は10月1日に事業承継した「UQ mobile」の事業についても紹介。UQ mobileに関して「auがメインでUQ mobileがサブではない。れっきとしたメインブランド」と強調し、シンプルでお手頃価格を追求するブランドと位置付け、あくまで携帯電話会社が提供するサービスとしてマルチブランド展開していきたいとしている。

事業承継したUQ mobileはシンプルでお手頃な価格を追求、5Gによる使い放題を主体としたauブランドと明確な違いを打ち出したマルチブランドとして展開していくとのこと
事業承継したUQ mobileはシンプルでお手頃な価格を追求、5Gによる使い放題を主体としたauブランドと明確な違いを打ち出したマルチブランドとして展開していくとのこと

 なお、菅義偉氏が内閣総理大臣に就任して以降、政府から強く要求されている携帯電話料金の引き下げに関しては、「国際的な料金とそん色ないものを検討している」と回答。政府の競争促進に向けた方針が打ち出されるのを待った上で、対応を進めるとの考えを示した。

 またNTTによるNTTドコモの完全子会社化に関して、高橋氏は「NTT法などに抵触していないから問題ないとの話だが、政府の閣議決定による分離分割の観点からNTTのNTTドコモへの関与は薄くしていく方向だったはずなのに、急転直下で逆に触れたのは正直驚いているし、おかしいと思う」と指摘。

 特に5G、6G時代は、NTTグループが強みを持つ光回線の重要性が高まることから、NTTドコモの完全子会社化で公正競争を確保できるのか、議論するための準備を進めるとしている。

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