タス、データ分析から不動産テックを切り開く--価格可視化手掛け20年 - (page 2)

加納恵 (編集部)2020年07月21日 08時30分
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出資会社4社が持つ強みを最大限に生かしたサービス

――実際の不動産評価を導き出す仕組みについて教えて下さい。

秋山氏 公開されているオープンデータに、出資会社である三友システムアプレイザルの保有データ、独自の全国空室率インデックスなどを加え、統計分析から算出しています。提供を開始した2000年当時は、公示地、基準地、相続税などのデータをかけ合わせることが限界でしたが、2005年くらいから、大学の教授などに協力いただき、統計分析で価格を出すことに成功しました。現在では、規模など個別要因を入力すると価格に反映できるシステムも備えています。

――現在はAIを使ったものも多いですが、統計分析を使用されているんですね。

秋山氏 AIは今の時代に合っていて、活用すべき部分は多いと思っています。算出する際に使っているデータは私ども独自の部分が多いので、その辺りは朝日航洋、三友システムアプレイザル、トヨタ自動車、豊田通商と4社の出資会社を持つ私どもならでは強みだと思っています。

――かなり色の違う企業が出資会社として名を連ねていますが、会社設立のきっかけというのは。

秋山氏 2000年当時はインターネットが今のように普及しておらず、政府も手探りの状態。その時に次世代GIS(地理情報システム)の国家プロジェクトがあり、親会社の1つである朝日航洋がそれに手を挙げたんです。朝日航洋は高い技術力を持つ会社で、その処理技術を使い次世代GISのプロトタイプを作ったところ、高品質なものができ、これを何かに活用できないかと考えたのが設立のきっかけです。

 活用方法を考える中で、不動産鑑定評価を手掛ける三友システムアプレイザルの仕組みを組み合わせると面白いのでは、ということで2社が手を組みました。その後、朝日航洋の出資会社であるトヨタ自動車も加わり会社を設立したということです。

中村氏 今でこそ異業種企業のタッグは増えてきましたが、その先駆け的存在になると思っています。GISの技術も今は当たり前になっていますが、20年前にその技術をきちんと立ち上げ、ここまでやってこられたことがタスの現在を裏付ける理由だと思っています。

別サービスとして始めた「ANALYSTAS」が目指すもの

――タスマップは機能も追加され、充実されていく中、新たに「ANALYSTAS(アナリスタ)」も開始されました。なぜマーケット分析の機能を切り離し、別サービスとしてはじめられたんですか。

中村氏 これには2つの意図があります。1つはタスマップを通じて、主要首都圏の賃貸マーケットをレポートしていたところ、別のエリアだったり、もっと詳細が欲しいというニーズが生じたこと。もう1つは、設立以来提供してきたタスマップとは別の柱を持ちたいと考えたことです。

 アナリスタ開始前も要望を頂いて個別でスポット的にカスタムオーダーの分析をお出ししていたんですが、問い合わせも増えてきたことも要因ですね。

「ANALYSTAS(アナリスタ)」
「ANALYSTAS(アナリスタ)」

――具体的なエリアや詳細など、求められる幅がかなり広そうですね。

中村氏 要望が細かいことは事実です。そうしたニーズに応えられるよう、データを可能な限り集めて分析し、ご提供するようにしています。ある意味コンサルティングに近いかもしれませんね。マーケットを将来目線も含めてどうできるか一緒に考え、ニーズにできる限り応えるスタンスを貫いています。

――通常のマーケットレポートに欠けていた部分を補うようなサービスですね。

中村氏 ご要望をいただく企業から見た場合、戦略的な一助になると思っています。新たな知見や経営判断、事業拡大といったステージで使えるデータ分析になっているので、不動産や金融に限らずあらゆる業種で活用いただけるのではないでしょうか。

――マンションデベロッパーの方や企業の投資判断の段階などで必要になってきそうですね。

中村氏 今あるマーケットレポートの穴埋めができるサービスだと考えています。首都圏で物件が豊富なエリアはリアルデータもある程度は集められますが、地方で物件が少ないエリアでは判断材料が乏しい。そこで豊富なデータを元にアナリストが分析するというのは大きなメリットではないでしょうか。

――お話を聞いていると、本当に初期の初期から不動産テックに取り組んできた企業という印象ですが、社内ではどういう認識なんでしょうか。

中村氏 周りの方からはよく言われるのですが、社内では不動産テック企業という認識は薄いかもしれませんね(笑)。

秋山氏 今、不動産テック企業のトレンドはAIなどですよね。タスは統計分析を現時点では打ち出しているので、その辺りもちょっと違うかなと(笑)。

――不動産テックと言われる企業は不動産業から始めた会社が約半分。不動産テックカオスマップでは3分の2がITからスタートした企業です。ずっと不動産に軸足を起きながらテック軸でやられている会社はすごく少ない。そういった意味で大変貴重な企業だと思います。今後の展開についてはどうお考えですか。

中村氏 アナリスタは開始から約2年が経過していますが、この周知を進めていきたいと思っています。不動産を軸にやってきた会社ですから、市場のニーズにまだ応えられるものが必ずある。そこはブレずに取り組んでいきたいと思っています。

 またAIのように新たなテクノロジーに対しても否定をしているわけではなく、世の中の状況に合わせて取り組んでいきたいと思っています。導入できるものは取り込んで、リプレイスするものもあると思いますし、そういった取り組みは常に続けていきたいですね。

――現在、不動産や金融など、BtoB向けビジネスに取り組んでいらっしゃいますが、BtoC向けのサービスを手掛ける可能性は。

中村氏 ニーズはあると思っています。例えば相続の問題などは、スマートフォンをモバイルなどで簡単に問合せができたりすると便利ですよね。そういう観点からもBtoCサービスの可能性は排除していません。

 ただ、今の時代、1社ですべてを完結することは難しくなっています。スピード感を持ってサービスを提供するためには、他社との協業も見据えながら新たなサービスを、世の中に早く届けられるようにしていきたいと思っています。

インタビュアー

赤木正幸

リマールエステート 代表取締役社長CEO

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。 

 

川戸温志

NTTデータ経営研究所 シニアマネージャー

大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。

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