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「アバターファッション」はビジネスになるのか?--アパレル制作や知財の観点から語る

土居 充(伊藤忠インタラクティブ)2020年07月15日 09時32分
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 デジタルアバターにファッションを提供することが、ファッションブランドのビジネスにつながるかをディスカッションするオンラインイベント「SOuDAN オンライントーク ♯01アバターファッションはビジネスになるのか?」が6月に開催された。

 主催は、ファッションを軸にさまざまな事象を考える勉強会を企画するFashionStudies。伊藤忠インタラクティブが共催。パネリストは、MODEFACTORY LAB.のヒラタモトヨシ氏、Apparel Play Officeの大橋めぐみ氏、関真也法律事務所の関真也弁護士。FashionStudiesの篠崎友亮氏がファシリテーターを務めた。

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アバターファッションの未来

 まず、ヒラタ氏が「アバターファッションの未来」と題してアバターファッションの変遷と未来について語った。ステイホームが世界中で強要され、限定された環境でみんなが楽しめることを探す中、オンライン上のカルチャーが見直される兆しとして「あつ森(あつまれどうぶつの森)」ブームと、同ゲーム中で展開される、ファッションブランドの施策が紹介された。実店舗で展開中の商品やショーで発表した服をアバター用に配布するなど、オンラインとオフラインを交差するような施策が展開されているというものだ。

 続けて、あつ森以前のアバターの変遷として、10年程前に世界中で注目されたインターネット仮想空間サービス「セカンドライフ」と、関連する「メタバース」「アバター」についての自身の研究発表として 2011年にSIGGRAPH(アメリカコンピュータ学会における CG国際会議)で行った発表を紹介。

 同発表の中で、世界中のアバターを調査した結果、たとえばテレビゲームに登場するマリオのように、自分に代わって冒険をするという存在から、技術の進歩に沿って、自分自身の内面、趣味嗜好を反映できるような存在に進化していることを報告。「誰もがアバターを持つ未来が来て、そこから発展するカルチャーがあると確信した」という。

 この発表から10年近く時が過ぎ、コロナ禍が到来。再び「メタバース」が注目され始めているという。一部の盛り上がりで終わってしまった、当時のセカンドライフブームとは異なる点として、PC性能の向上や、半ば強制的なステイホームによって消費者がこれまで以上にオンラインに慣れてきた状況などを指摘し、現在のメタバースに関連する注目すべき要素をいくつか紹介した。

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 そして、話題は「アバターとファッションの未来」へと展開。実際、アバターに何を着せたいかと考えると、自分の好きな服と連動したものになっていくのではないかとヒラタ氏は話す。ただし、リアルの買い物とバーチャル世界とのPOS情報が連動するなどしないと、ハードルはまだ高いとの見方も示す。

 また、今後アバターとともに広がっていくメタバースの未来を示唆する例として、オンラインゲーム「フォートナイト」において、1000万人以上の視聴者を集めて話題となったライブ配信の事例をあげ、仮想空間上ではすでに、現実のイベントでは想像できない規模の体験を設計し、人々集めて熱狂させることができると語った。

 最後に、アバターがさらに利用されていくことは間違いないが、課題は多く、さまざまな人々がコミットしないと広がっていかないと指摘。ぜひ多くの人に、コロナ禍のこの機会にオンラインゲームやサービスでメタバースを体験し、アバターとファッションの未来の可能性を感じてほしいと語った。

アバターファッションと「3Dモデリング」の現場

 続いて大橋めぐみ氏から、パタンナーから3Dモデリングソフトを使い始めた経緯やデジタル化の有効性、ビジネスでの使い方、未来像などが語られた。大橋氏は、3D試着サービスを開発したスタートアップ企業の紹介記事からアパレル用モデリングソフトの存在を知り、3DCADソフト「CLO3D」に辿り着いたという。

 アパレルの課題の1つとして、昔に比べて流行の変化が早くなり、素早く大量のサンプルを用意する必要がある一方で、縫製工場のオフショア化が進み、制作に時間がかかるようになっている現状があるという。この多くのサンプル制作にかかる材料と時間コストの課題などは、デジタルに置き換えることで解消できると考えているという。

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 また、コロナにより展示会の中止や店舗の閉鎖などを余儀なくされているが、コロナ前からすでに、業績やコストの観点から店舗を減らし、ECを強化する流れはあったと大橋氏は説明。その中で、完全にリアルなものではなくても、商品の「世界観」を感じてもらう点で、VRによる店舗空間のデジタル化は現実の店舗からの代替として有効だと語る。

 ファッションビジネスでのヴァーチャルファッション・VRの有効活用方法として、ヴァーチャルの服を配布する「販促での活用」、ECなどの「サービス内での活用」、あつ森のようなゲームなど「エンタメでの活用」、コストが原因でデザインの発表ができていない若手デザイナーに向けたデジタル化での製作と発表の両面での「機会創出のための活用」など、アバターを含むヴァーチャルファッション・VRの活用方法を提示した。

 プレゼン後、ファシリテーターの篠崎氏の問いかけについても、3Dクリエイターとパタンナーそれぞれの観点から回答。パタンナーも3DCADの技術が必要になっていくと思うがハードルは高くないかという質問に対して、以前に比べて、使いやすいソフト現れてきているため、アパレル3DCADに関しては、ハードルは意外に低いと話す。

 また、Instagramのいいね数をカウントして方向性を探ってきたアパレル業界も、現在はInstagramの仕様変更にともない、いいね数が非表示となり指標がなくなっている。アバターにサンプルの服を着せ、その反応を集計し、量産を考えていく案や、外見にコンプレックスのある人たちも、アバターをモデルにしてコーディネートを発信していく案など、アバターファッションの未来の価値化に関するビジョンが語られた。

アバターファッションと知的財産権について

 最後は関弁護士より、法律的な観点から、アバターファッションの著作権、意匠権、今後必要になってくる法的な課題について語られた。 まず、「著作物」についての定義として、(1)思想または感情の表現であること、(2)創作的であること、(3)文芸、学術、美術または音楽の範囲に属すること、の3点に関わるものであると説明した。

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 続いて、著作物に関わる権利を保護する「著作権」「意匠権」とその違いについて。 著作権はもともと、文芸、絵画や彫刻を守るためのものだったが、現在では3DCGなどデジタルコンテンツなどにも適用されている。権利者の死後70年ほど保護されるなど、強い効力をもっている。これに対して意匠権は、保護されるまでのハードルが高く、保護期間も25年と著作権に比べて短い。特許庁での登録が必要で、登録されると原則としてだれでも参考にできる形で公開される。新しい製品開発の活性化を目的としているという。

 著作権と意匠権のどちらが適用されるかを見分ける1つのポイントとして、「実用的な機能によって表現が制約」される場合は意匠権、「純粋な表現の保護」に関しては著作権になると説明。ファッション製品のデザインについて著作権による保護がおよぶかが問題となった3つの裁判事例を紹介し、実用的な機能による制約という観点に焦点を絞って、それぞれの判決の理由が解説された。

 この解説を受けて、今後のアバターファッションで想定される課題についても語られた。 アバター用とリアルのファッションを連携させる際は、どちらを先に作るか、同時かで保護されるか否かが変わってくる可能性や、デザインそのものに関しても、実用的な機能による制約をポイントに、さまざまな検討事項の可能性が関弁護士により示された。

 まとめとして、現在の意匠制度でいうと画面デザイン(時計の液晶画面などのUIデザイン) は意匠権で保護されるようになってきたが、アバターのファッションなどは、まだ保護できない状態だという。VRに注目が集まる今、法整備を考えていく機会にしていきたいと語った。

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 その後も、法的な話題から展開したディスカッションが続き、VRの発展に向けた国を超えた取り組みや法整備の必要性など、さまざまな意見交換が活発に行われた。最後に、この話題はすぐに解答を出せるものではなく、オンライントークシリーズを続けて考えていきたいと篠崎氏が語り、第1回を締めくくった。

 VRがもたらすものは単純なコミュニケーションの進化だけではなく、現実の世界で誰もが見て見ぬふりをしてきた矛盾や慣習を飛び越えていく可能性なのではないかと感じさせられたオンライントークセッションとなった。今回の第1回も含め、今後の模様はFashionStudies公式チャンネルにて配信していく。

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