パーソナルモビリティを展開するWHILLは6月8日、羽田空港国内線第1ターミナルにて、人を載せた自動運転システムの導入が決定したと発表した。同日より3台が稼働を開始しており、同社によると空港にて自動運転システムを導入したパーソナルモビリティの実用化は世界初としている。
導入する自動運転システムは、同社の車イス型の電動モビリティ「WHILL Model C」をベースにした自動運転車を採用。長距離の歩行に不安を感じるユーザーに対して提供するもので、対象エリアは、第1ターミナルゲートエリア内の保安検査場B近くに設けられた待機場所「WHILL Station」から3〜7番ゲートまで。車体に内蔵されたタブレットで移動を開始でき、自動運転で搭乗口までユーザーを送り届ける。復路は無人運転でWHILL Stationに戻るという。
車体には複数のセンサーが搭載されており、あらかじめ収集した地図情報とセンサーで検知した周囲の状況を照らし合わせながら自動走行する。最高時速は約3km、1〜2mの障害物を検知すると自動で停止する(センサーの特性上、障害物のサイズによって若干の距離が変動)。車体は専用の運用システムによりオンラインで管理しており、空港にWHILLのスタッフは常駐しない。トラブルが発生した場合は、空港スタッフ側で対処するほか、故障などはWHILLからスタッフを派遣するようだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止が叫ばれるなか、通常の車いす介助サービスでは、ユーザーと介助者との間でソーシャルディスタンスを確保することが難しい。自動運転システムにより、密を避けながらも、さまざまな人の移動をサポートできるという。
WHILLは4輪の電動モビリティを中心に、ハードウェアの開発・販売からMaaSとしてのサービス展開までを1社で手掛ける日本のハードウェアスタートアップ。初代モデルの「WHILL Model A」は2014年に発売。2017年にはModel Aの半額を実現した「WHILL Model C」を投入している。また、アメリカをはじめ、カナダ、イギリス、イタリアなど海外展開も積極的だ。
こうしたモビリティの開発と当時に進めてきたのが自動運転システムの開発だ。同社は2017年に羽田空港で実証実験を開始しており、2018年にはCESにて自動運転デモを披露。2019年には、ダラス・フォートワース国際空港(アメリカ)、ジョン・F・ケネディ国際空港(アメリカ)、アブダビ国際空港(アラブ首長国連合)、ウィニペグ国際空港(カナダ)などで11回の実証実験を実施。400人のユーザーが利用したという。
新型コロナウイルスの影響について同社代表取締役兼CEOの杉江理氏は、「基本的に、我々がやろうとしていることは変わらない」としつつ、「この状況で変わることは、今まさに取り組んでいる空港でのMaaS文脈。ソーシャルディスタンスをサポートするロボ、サービスが人の代替として必要になる。これがスタンダードになる」と、新型コロナウイルスの影響で、“人の手からロボットへ”という時代が早く到来すると予測する。
また、移動自体のニーズについても「今後リモートワークで移動自体が減っていく一方で、その反動があると思う。旅行や“FUN”としての移動する機会は増えていく。そういった意味でも、でかけた先で誰もが移動できる仕組みやサービスは今後も需要が増える」と自身の考えを述べた。
WHILLでは今後、世界的な感染拡大防止ニーズに応えるべく、数年間で世界のトップ50空港での導入を目指すほか、美術館など空港以外の施設でも利用できるようにしたいという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス