楽天は3月6日、3980円以上の注文で送料を無料にする「共通の送料込みライン」施策について、全面開始を延期すると発表した。ただし、送料込みライン施策自体は3月18日からスタート。対応した出店者から利用可能となる。
共通の送料込みラインについては、2019年8月に発表して以来、賛否さまざまな意見が出ている。楽天市場出店者で構成される楽天ユニオンは、送料分を価格に上乗せする形になることから、「優越的地位の濫用」だと抗議の声を挙げている。また、公正取引委員会も2月10日に立ち入り検査を実施。28日に独占禁止法第19条(同法第2条第9項5号ハ)違反の疑いがあることから、東京地方裁判所への緊急停止命令申し立てに至った。
一方で、3月5日には、楽天ユニオンとは別の楽天出店者で構成する「楽天市場出店者 友の会」が発足されると発表。報道によると、友の会は送料込みライン施策について賛成側の立場で、アマゾンなどの競合に立ち向かうためには送料無料化が必要という認識のようだ。ただし、その友の会も新型コロナウイルスの影響で物流スタッフの確保が難しいなどで、送料込みラインの延期を訴えていた。
楽天広報部によると、今回の決定はこうした出店者団体側の動きを直接受けたものではないとしつつも、「1月ごろから新型コロナウイルスの感染拡大により、出店者からスタッフの確保が難しく、(送料込みラインの)準備が追い付かないなど不安の声を複数頂いていた」と延期の理由を説明する。
店舗側のシステム自体は3月18日にリニューアルされ、送料込みラインの機能自体は全店舗に実装予定。ただし、新型コロナウイルスの影響を考慮し、準備ができた店舗からスタート。送料無料化を無効にするには、専用フォームから申請することで解除可能だ。なお、全面開始のタイミングについては「新型コロナウイルスの収束次第」としつつも、5月に今後の方針を発表するという。
楽天では、今回新たに出店者向け「安心サポートプログラム」を発表。同社広報部によると、「詳細はまだ固まってないが、(送料込みライン施策の)適用商品を販売している出店者の利益額、送料分の差額を対象に支援額を算出する」という。送料込みラインに該当する商品を販売している店舗であれば誰でも申請でき、一定期間支援するという。
「もし、施策終了後も利益率が改善しなかったら…?」という意見も当然出るが、これに対し広報担当者は「送料込みラインを導入する目的として、買い物時の送料表示がわかりやすくなることで新規ユーザーの取り込みにつながる」とし、「店舗の売上パイが大きくなると考えているし、(楽天スーパーロジスティクスなど)物流面でもさまざまなな支援をしている。ユーザーにとって買い物しやすい環境を作ることで、店舗も成長できる」と説明する。
余談だが、友の会については、正式な書面でファーストコンタクトがあったという。それを受けて三木谷浩史氏(同社代表取締役会長兼社長)との電話会議をセッティング。意見交換にいたっている。楽天ユニオン側についても、「店舗にもさまざまな意見があるのは重々理解しており、門戸を閉じているわけではない」としつつも、「弊社に直接コンタクトがない。正直、どの店舗が反対しているかもわかっていない」と、広報担当者は語る。
ひとまず、一部の店舗のみでスタートすることとなった共通の送料込みラインだが、全面開始については先が見えない状態が続きそうだ。
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